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お笑い芸人と名乗る5つのメリットと唯一のデメリット

連載
公開日:2020年6月18日 更新日:2021年1月5日

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。

世の中に素敵な職業はたくさんありますが、芸人が一番かもしれないなと思うことがあります。
ヒントは、「面白さ」ではありませんよ。

ちょっと質問してみましょう。皆さんのお仕事は、名乗るとどういう反応をされますか?
医者や弁護士のように、お金持ちでちやほやされる職業はあります。先生や聖職者のように、模範的行動が求められる職業もあります。

では、お医者さんが、会っていきなり「じゃあ今手術してみてよ」と言われるでしょうか?

答えはNoですよね。ところが不思議なことに、芸人は名乗ったその瞬間から、プライベートの一挙手一投足が「芸人として」評価されるのです。



芸人にとって名乗る意味は大きい

最初に言った「芸人が一番なこと」とは、「職業が日常にまとわりついている度合い」とでも言いましょうか。

芸人にとって名乗ることは大きな意味を持つし、ゆえに躊躇する場面もあります。僕は、セミナー等に参加する際には「自由業」や「クリエイティヴ職」と書いています。バイト先に大学生だと嘘をついていた同期もいましたが、普通の大学だとすぐボロが出るからか「農大生」と言っていました。

こう書くと、魔女狩りにでも遭っているイメージですが、良いことも結構あるんです。なので、今回は芸人と名乗るメリットを挙げていきます。
もっとも僕の場合、東大卒「なのに」芸人という意味不明ツッコミ待ち要素もあるので、サンプルが不適切かもしれませんが。

①話しかけられやすい

都内なら芸人はコンビニより多いのですが、「芸人さんに初めて会いました」という方、案外多いです。

大勢が集まる場で最初に自己紹介があると、そういう方が興味を持って話しかけてくれます。自分で話しかけたとしても、「さっきの芸人さん」と認識されているので一歩リード。

「芸人なら話しかけて大丈夫」と思ってもらえるのも大きいです。何せ話のプロで、好感度が命ですから無下にはしないだろうと。まあ、お気づきかと思いますが、100%のハードルです。

気をつけたいのは、寄ってくる中には胡散臭い人もいます。芸人は世間知らずなことがありますし、一番は「類は友を呼ぶ」の引力でしょう。もっとも、社交の場に出ようと出まいと、付き合う人を選ぶ目は必要ですね。

②話題にできる

やや特殊な職業なので、どんな生活をしているか、初対面から興味を持たれます。「ギャラが安い」のように浸透しているイメージもあり、そこをフックに話すと盛り上がります。

僕は高校時代は目立たない方でしたが、芸人になり、同窓会やクラスの集まりに声が掛かりやすくなりました。ありがたいことに、行くとまず最初に僕の話題になります。そして本当にありがたいことに、ほとんどは辛辣なダメ出しです。

話題で言えば、有名な芸人さんのあのネタが好き、という話をされることも多いです。共通の話題になるし、伝わる人がなかなかいないので熱を入れて話してくれます。おかげで、僕は知ったかぶりが上手くなりました。そう、僕はあまり芸人のネタに詳しくない、いわゆる「ニュータイプ芸人」です。

話のネタに困らない一方、自分の話ばかりだと疲れてしまいますよね。人は誰しも、自分の話も聞いてほしい欲求があるものです。相手の話題も深掘りして、周囲に話を振って参加を促す、そういう「話の勢力図」を読む能力も、芸歴とともに備わりました。

③変なことを言っても許される

笑いは会話のリズムを生み、話を深めます。ただ、笑いを取る発言が突飛だと、理解されなかったり、会話ができない奴と思われたり、笑っていいのか戸惑われたりします。

そんなとき、芸人=「そういうことを言う人」なら、相手は心の準備ができており、すんなり笑えます。

仮にスベっても、芸人としてチャレンジしていると思われ、ただのイタい奴にならずに済むオマケ付きです。もっとも、「ちゃんと面白くない奴」と思われるのですが。

④ちょっとだけモテる

あきらめずに夢を追う姿勢がかっこいい、上記のように話しやすい、興味が湧くという以上に、ちょっとだけ補正がかかってモテる気がします。

理由の1つは、「人の物が欲しくなる」理論です。特に女性は、強い子孫を残すために本能的に強いボス猿に集まります。劇場でファンの方に応援され、TVやSNSで不特定多数の目に触れるのを見ると、実物以上にボス猿に見えるようです。

これは、芸能産業の構造でもあります。

もう1つ思うのは、そもそも芸人側がモテたくてなっているからです。芸能って、突き詰めると自己顕示欲がモチベーションです。要は、相席居酒屋の片側が着座した状態。しかも、役者さんとかよりハードルが低い。オブラートを外せば、「簡単に落とせそう」なんだと思います。

芸人と名乗るデメリットは?

ここまでメリットばかりを挙げてきましたが、デメリットはないのでしょうか?あります。

それは、
①「面白いことやって」と無茶ブリされる

この1つで、メリット全て帳消しです。

他には、
②美容室などで一々説明するのが面倒
③結婚相手として見られにくい

など、まあ①に比べれば微々たるものです。

それでも、不思議なもので、一度笑いをとると芸人をやめられません。メリットで述べた理由で、人間らしい腹を割った付き合いがしやすいことも、芸人の中毒性に繋がっている気がします。

変な言い方ですが、もし、職業としての芸人でなくなることがあっても、一生「芸人」を名乗っていくつもりです。

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。