powered by 賃料6万円以下専門店「部屋まる」

芸人が使う小道具紹介!【後編】

連載
公開日:2023年11月22日 更新日:2023年11月24日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

芸人とは切っても切り離せない関係、小道具。ある者は段ボールを片手に炎天下の中歩き回り、またある者は最先端機器を駆使して笑いを取る。

今回は前回に引き続き、小道具についてお話をさせて頂く。

是非、最後までご一読頂きたい。



これが王道!段ボールとガムテープを使う人々!

王道であり、正道。段ボールとガムテープで小道具を作る人々。人類と犬の関係性よりも、芸人と段ボールの付き合いの方が深い。彼らの手は全ての物を段ボールと新聞紙から生み出す事ができ、絶対神ゼウス並みに世界を7日で創造する事が可能なのである。

段ボール!

ほぼ全てのスーパーやコンビニで、頭を下げればもらえる段ボール。その状態に慣れ、極稀に断られる店舗があると、親の仇並みにブチ切れる。段ボールは小道具作りの基本であり、基盤。

ちなみにコント職人の中には、自宅が段ボールだらけになっている者が存在する。彼らの自宅はコント衣装と段ボールに、私物が埋もれている状態。決して羨ましくは無いが、それは全て自分がネタをがんばった証でもある。そんな彼らは少し、誇らしげ。

新聞紙!

段ボールに隠れて、人気のアイテム。人間や犬など、段ボールでは表現し得ない丸みを帯びたボディを再現する際は、新聞紙を使う。新聞紙で型を取り、そこにガムテープを巻き、形を作る。

ガムテープ!

上述した「段ボールや新聞紙を貼り合わせる」という意味の他、「色を塗る」という意味もある。ガムテープには様々なカラーが発売されている。そうしたガムテープをたくさん購入し、色に合わせて貼り付けるのだ。

ちなみに芸人が作る小道具を色付けをする際、あまり絵の具などは使わない。なぜなら、絵の具はあんまりしっかり色が載らず、うっすら後ろの段ボールや新聞紙の色が見えてしまう。

結果、スプレーやガムテープを使う頻度が高まる感じ。ある程度綺麗に仕上げたい時はスプレーだが、実はガムテープを好む芸人も多い。なぜならそれは、ガムテープを使うと「小道具感」が出るから。綺麗に作られたドラマのセットが「絵画」なら、このチープに作られたコントの「小道具感」は「マンガ」に近い。そしてこのどこかチープで安っぽい感じは、コントの世界に良く似合う。

そしてこの「小道具感」は、どこか絶妙なバカバカしさをはらんでおり、「いい大人が本気出して何を作ってるんだ」という笑いを内包する。

「大人が本気を出して作って、そして綺麗」な小道具は、それ単体で笑えない。しかし「大人が本気を出して作って、なのにチープ」な小道具は、それだけでどこか愛らしい。そしてこの小道具達は「作り手が不器用だからチープ」なのではない、「丁寧に作れらてるのに、チープ」なのだ。そのアッパーを出しているのにどこか不細工な小道具達は、どこかパグを連想させる。

芸人だけの感覚なのかもしれないが、この「小道具感」を愛する芸人は意外と多い。

コントの定番!音を使う人々!

小道具というと語弊があるかもしれないが、ついでに紹介。ネタによってはBGMや音声などを使用するネタがあり、そういった音は「SE」と呼ばれる。そしてその「SE」は、当然芸人本人が作り、ライブに持ってくる。

「SE」は、PCやiPad、スマートフォンなど最新機器によって作成される。基本的にIQが低く情弱な芸人達も、あったら楽だという怠惰な理由から、一生懸命勉強する。とはいえ、作り方は割りと簡単。

BGMはフリー音源となるWebサイトがあるので、ここから探す。BGMさえあれば、SE問題はほとんど解決したようなもの。なので芸人は理想の音を求めて、フリー音源のサイト巡りで1日を過ごす。ちなみにこういったフリー音源サイトには、BGMのみならずちょっとした音(ドアを開ける音とか、ドラムロールとか)もある。なので「いつか使えそうな音があるな」と、いつの間にかBGM探しを忘れて色んな音を聞き出し陽がくれるのは、音を使う芸人あるある。

次に、音声。これは1人コントなどで、「相手のセリフ」が入る場合などで使う。音声はiPadやスマートフォンなどに自分で直接吹き込んだり、性別が違うセリフが欲しければ、芸人仲間に頼んで送ってもらったりし、それを取りこんで使用する。

あとはこれらの素材となるBGMと音声を、各々の編集ソフトでカスタムすれば完成となる。編集ソフトは、MacのGarageBandやiMovieといったメジャーなものから、「それっておまえ以外誰が使ってんだ?」という謎のソフトまで様々な物が使用されている。とにかくそうやって完成した「SE」を、今度は会場へ持っていかなければならない。その持ち運び方法が、現在の所、以下の2つ。

割とお手軽!データで持っていく!

「SE」が入っているPCやスマートフォンなどを、そのまま会場に持っていく。そして会場の機材に繋いで音を流す。ライブによって、「事前に音を送るパターン」と「当日自分で持参するパターン」がある。基本的には、後者の「当日自分で持参するパターン」。

「当日自分で持参するパターン」の場合、基本みんな自分のスマートフォンに音を入れて持っていく。別にPCとかでもいいのだが、音響卓は狭く、大きなPCはかなり邪魔。鬱陶しがられるのでスマートフォンに入れていく。また、持参パターンでは、自分のスマートフォンと音響機材を繋ぐライトニングケーブルが必要になるケースもあるため、それも準備し会場へ行く。

基本はこっち!CDに焼いて持っていく!

基本的には、CDに焼いて持っていく。なぜならまだ、「データで持っていく」パターンに対応していないライブも多い。ちなみに賞レースも、このCDに焼いていくパターン限定。データで持っていっても受け付けてもらえない。

CDに焼く場合は、PCでデザリングを行い、「音楽用CD」の「CD-R」に焼く。絶対に「データ用CD」、もしくは「音楽用CD」の「CD-RW」に焼いてはいけない。なぜなら、「どの会場の音響機材でも、確実に再生出来る」というのが「音楽用CD」の「CD-R」だけだから。他のCDだと、会場によって使えたり使えなかったりしてしまう。なので例えば「データ用CD」に焼いても、それに対応した音響機材を備えている会場であれば、音は使える。逆にいつも行く会場で使えたから、別会場に持っていったら使えなかったというのは、音使用芸人初心者の、誰もが通る道。

ちなみにぼくは、去年から音を使い出したため、ここらへんの知識は芸歴10年を超して初めて知った。それくらい、SEを使わない芸人からしたら知らない知識。

更にちなみにぼくは、上述したSEの地雷を全て踏み抜いてから知っていったので、劇場について、音が使えなくなったという回数は二桁を超える。皆さんはこちらのコラムを読んで是非、地雷を回避して頂きたい。

これが小道具の最先端!映像関連を使用する人々!

ある意味現在の最先端とも言える、映像関連のネタ。ZAZYさんのデジタルフリップや野田クリスタルさんのゲームのネタ、Aマッソさんのプロジェクターを使ったネタなど、非常に強いインパクトを残す。

最近は若手芸人の中にも楽屋にモニターを持ち込む人間も増えてきており、狭い楽屋で物議を醸している。

彼らの小道具は、やるネタによって異なるが、基本的にはモニター・PC・配線関係。ちなみに2020年度R-1までは全て芸人個人の持ち込みが必須だったため、野田クリスタルさんがR-1決勝で使ったモニターは、自身で機材をレンタルをしたもの。確か価格は50万円ほど。イカつい。ちなみに2021年度以降のR-1がどうなのかは知らない。

話を戻して、例えばZAZYさんのデジタルフリップの場合、PCにフリップを作成する。Macであれば「Keynote」という「PowerPoint」に似たアプリが標準で入っており、ここに作成したフリップをスライドとして入れ、スライドショーにする。あとはPCとモニターをHDMIケーブルという、「映像・音声」を出力するケーブルで繋ぐ。HDMIケーブルは、長さにもよるが大体価格は1000〜2500円。

また、モニターの電源も確保しなければならず、これは「会場の電源ケーブルを借りるパターン」と「自分でポータブルバッテリーを用意し、そこから電源を引くパターン」の2パターンが存在する。ちなみに「会場の電源ケーブルを借りるパターン」では、楽屋をさまよう芸人が電源ケーブルにつまづき引っこ抜き、モニターが途中で切れるアクシンデントが多数見受けられる。逆に「自分でポータブルバッテリーを用意し、そこから電源を引くパターン」では、当然自分でポータブルバッテリーを買わなければならないが、大体価格が3万円前後する。どちらを選ぶも痛しかゆしの状態。

ここまで揃えば、この映像関連のネタは可能。野田クリスタルさんのネタはPCに入れたゲームをプレイするものなので、電源を入れたモニターとPCを、HDMIケーブルで接続すれば可能。

Aマッソさんのネタは、モニターの代わりにPCをプロジェクターに接続すれば良い。

しかしどれも個人で行うには準備が大掛かりになり、HDMIケーブルが一本足りなくなったり、電源タップを持って行き忘れたりと、常に小道具トラブルの恐怖と隣り合わせ。映像ネタとは、几帳面な芸人のみに許されるネタなのだ。


まとめ

今回は、前回に引き続き小道具についてお話をさせて頂いた。

コントを行う芸人の中には、「ネタ作り = 小道具作り」となっている芸人も多い。是非ライブをご覧頂く際は、彼らが作り出した小道具にも、ご注目頂きたい。

このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。
ご一読、ありがとうございました。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。