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トーク力を磨く!平場で笑いを取るために必要な能力と練習方法

連載
公開日:2021年2月5日 更新日:2021年2月9日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

みなさんこんにちは。
芸歴10年目。バイト代がヤバい事に気づいたときは自らガスを止めにいく、吉松ゴリラです。

今回は前々回に引き続き「お笑いの勉強法〜平場編〜」についてお話しさせていただきます。前々回同様、少し実践的な努力の仕方、財産になるようなお話しをできればと思います。
▼【フリートーク・MC力アップ!お笑い芸人直伝の平場で笑いをとる方法】

※「平場ってなんなの?」「ネタと平場の笑いの取り方に違いってあるの?」という方は、【現役お笑い芸人が実践している面白いネタを作るための勉強方法】にまとめてありますので、気になった方はお読みください。



面白いトークを話すための勉強方法とは

【今回のポイント】
・超短時間で笑いを取る!要約力!
・盛り上げ上手になれる!ディスカッション能力!

これは笑いの・・というよりは、トークの基礎力を引きあげます。
基礎という意味では、格闘技における筋トレに近い部分があるため、努力内容としては地味で、かなりマニアック度が高いです(笑)。

正直今回ご紹介する内容はやはり筋トレ同様「この通り練習したから1、2ヶ月でグンと目に見えてトーク力が伸びた!」というものではありません。
かなり「芸人目指している人がコツコツやるぜ!」という内容になってますが、一般の方は「おもしろいトークは、なにゆえおもしろいのか」ということにも少し触れまていますので、そちらに興味を持って読んでもらえると幸いです。

お笑い芸人が言われてる『トークが上手いから頭がいい』はウソ


【今回のポイント】に入る前に、筋トレの必要性と理解を深めてもらうために、やや泥臭い話をしたいと思います。

タイトルの通り、少なくともぼくは『トークがおもしろい=頭がいい』とは思ってません。一般の方と比較した、トークのおもしろさの違いは、ただ会話の練習量が違うだけです。
しかし芸人やってると、この「芸人って頭がいいよね」というセリフはとときどき言われます。

確かに芸人は
『相手の話を聞いた瞬間、おもしろい返しを即座に考えて、絶妙の間を測って返す』

という作業を1秒も満たない間に行い、そんでまたそれを会話の間中バンバンくり返しています。
そのため『そんな短時間で、あんなおもしろい事をバンバン繰り返し言えるなんて、頭の回転が速い』と見えるそうです。

結構TVでも芸人が褒められるとき、挙げられる理由です。
みなさんの中にも、そう思われてる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

けど格闘技に置き換えて考えてみてください。
格闘技は『相手のパンチを見て、その軌道を予測し、それに応じた身体のかわし方をすると同時に、相手の攻撃に応じた攻撃を仕掛ける』と、これだけの動作をそれこそ0.1秒の間に、バンバン行っています。

じゃああの人たちがめっちゃ頭いいからこれだけの処理を瞬時に行えているかというとそうではなく、「こうきたらこう!」がすべて反射で行えるくらい日々練習を積んでいるだけです。
※格闘技詳しくないんで間違ってたらごめんなさい。けど言いたいことは伝わると思います。

芸人は「笑いをとる事を目的とした話し方」を1日の大半していますし、人生でしゃべっている量も一般の人とはケタが違うはずです。

「この流れだとこういう事をいえばウケる」という思考が、ほぼ反射でできるまで頭のトレーニングを積んでいるので、会話の中で笑いを取り続けることができるだけです。

また空手の型みたいな、笑いをとるための型をアホほど知っていて身につけているので、やや複雑な会話中でも『考えなくてもできる』部分が多いため、頭のキャパを別のところに回せるのです。

トークを華麗に回してるMCは一見スマートに見えますが、実は泥臭い毎日の上になりたっています。

・・と、ちょっと重く書きましたが、とはいえやってることはお笑いなので、みんなで楽しく爆笑しながら遊んでたら、結果それが練習になってたという感じです(笑)。

そんなわけで、以下、こういう事ができたら会話に役にたつよというトレーニング方法をお話しします。

重ねていいます。めっちゃ地味です(笑)。

超短時間で笑いを取る!要約力!

ここでいう要約力とは、『分かりやすい説明をする力+それを出来る限り短時間で行う力』です。

平場のトークを考える上で、要約力は非常に重要な要素です。
1つの話を、要点をふまえて、超コンパクトにまとめあげる事ができるからです。

エピソードトークでは当然必須ですが、質問に対する笑いの取り方(「いま見たVTRの感想は?」と聞かれた時に笑いで返したり)でも、やはり高確率で必要になります。

お笑い全ての基礎といってもいい能力です。

エピソードトーク中の要約力の必要性

分かりやすいので、ここではエピソードトークを例にとって要約力のお話しをします。

エピソードトークの構成

エピソードトークは基本、起承転結で構成されます。
・起:状況説明(いつ、どこで、だれが)
・承:その状況で何をしてたら
・転:どういう事が起きた
・結:オチ

要約力を身につけた時のメリット

「結:オチ」以外の所は、全てある程度の説明が必要です。そこをコンパクトにできます。
コンパクトにした際のメリットが、以下の通りです。

【話をコンパクト化するメリット】
・話としてまとまりがでる
・オチがぼやけない
・フリを忘れないうちにオチがくるため、ウケやすい
・コンパクトなエピソードは、会話の流れを邪魔する事なくいつでも差し込めるため、使い勝手が良い
・説明の時間は「つまらない時間」に等しい(当たり前ですけど説明の時間って笑い声は起きてないですからねw)ので、そのつまらない時間を短縮できる

エピソードトークは長くても40秒以内にまとめる(芸人目指してる人用)


これから芸人を目指す人は覚えてて損はないと思うのですが、ぼくが養成所時代、トークの授業で唯一覚えてる講師の言葉がこれです。
『エピソードトークは長くても40秒以内にまとめろ』

理由は簡単で、TVで若手芸人のトークに使ってもらえる尺は30秒前後だからです。逆にそれ以上長いと容赦無くカットされます。

その理由も簡単で、若手芸人のトークなんて、誰も興味ないからです(笑)。どんなにおもしろくても、1分聞き続けられないので、オチにたどり着くまでにチャンネルを変えられてしまいす。

一般の方がトークをする場合の相手は、最低限自分に興味をもってくれてる人としゃべることが多いので、そこまで時間の制約は厳しくないと思います。

しかし無意味に話が長いとやはり周りは聞いてられなくなるので、トーク力を意識するなら、要約力は不可欠です。

初対面の人に話す時の注意点

要約力を鍛えようと思ったら、トークを話す時、「初対面の人が聞いてもわかる話し方をする」ということを意識しましょう。

身内同士で話をする場合、無意識に、お互い共通して知っている情報はカットして話します。しかし初対面の人はその情報を知らないため、そのまま話してもうまくおもしろさが伝わりません。

少し専門的な話をすると、カットしてる情報が、おもしろさを伝えるためのフリになっている事が多いからです。

それを意識すると、意外と説明しなければならないことが多いことに気づきます。

【例】
「昨日たかしが出会い系サイトで知り合った女に会ったらしいんだけど、また写真と全然違う女がきたらしいよ」
「あいつ多いなww」

大学生くらいの会話ですかね。

お分かりの通り、この例をそのまま話しても、初対面の人には分からない部分が多く、おもしろさが伝わりません。

【この例で前提となっている情報】
・たかしという人間がどういうヤツか(女好きだけどうまくいかない事が多いヤツとか)
・写真と違う女が来たことが前にもあったみたいだけど、どんな話か(この例だとここキーポイントになります。「オチまでのつなぎの笑い+オチへのフリ」の役割をはたす部分です)

オチの精度うんぬんの前に、この部分をきっちり説明していないと、笑いにはつながりません。

要約力を磨く練習方法

筋トレ部分です。「要約力をつけよう!」といって要約力がついたら苦労はしません。
地道な練習が必要になります。

とはいえ、練習って何すればいいの?という感じだと思うんで、1つ例をあげます。まずは説明力を磨きましょう。

【説明力を磨く練習方法】
・自分が当たり前になっているものの説明をしてみる

【例】
・電信柱って何?
・けいどろって何?
・野球って何?…etc

とにかく日常生活で目に映るもの全てを説明してみてください。お題には困らないと思います。結構言葉にすると説明しずらいものも多いです。

ポイントは、『それを全く知らない人を相手に説明する』という事です。子供に説明するつもりでやってみましょう。
実際は相手はいなくてもよく、あくまでそういう相手を想定して説明の練習をします。

例えば電信柱を説明しようと思ったら、電信柱の他、説明しなければならないものが結構増えることに気づきます。

電信柱を子供に説明するときの例

電信柱っていう丸くて長い、棒を大きくしたようなものが地面からあっちこっちに生えててね。
何をしてるかっていうとね、電信柱と電信柱の間に、電線っていう電気を通す黒い線を、人がつまづかないように、上の方にずーーっと通してるのね。
なんでそんな事してるかっていうと、電気っていうのがあって・・・

子供なんで電信柱を理解させるには、どういうものか、その周辺設備は何か、なぜそんなものがあるのかの理由など、1から教えなければなりません。

最初はバカ長い説明量になりますが、この練習を続けていくうちにどんどん要点を踏まえて端的に説明できるようになり、またどの順番で説明をしていった方がわかりやすいかなど考えながら話せるようになります。

この「いらない情報・必要な情報を、しゃべりながら取捨選択できる力」・「端的にわかる単語のチョイスをしながら短く話す力」が、要約力です。

つまりは説明力の先にある力なので、どんどん説明の練習しましょう。

盛り上げ上手になれる!ディスカッション能力


ディスカッションというと大げさですが、芸人が多く出ている番組などで、意見が分かれて言いあいになるシーンがよくありますよね。
なぜ多いかというと、単純に場が盛り上がるからです。

一般的な飲み会でも2派閥に分かれて話しながら盛り上がったりする場面があると思います。「ショートカットの女の子の方が好き」「いや、絶対ロングだろ」とか。

ディスカッションは肯定・否定派に別れて互いに言い合いをするものですが、ここで磨きたい能力は、『1つの物事を、肯定もできるし、否定もできる』という能力です。

ディスカッション能力がついた時のメリット

肯定・否定両方できるようになるメリットがこちらです。

ディスカッション能力がついた時のメリット

・肯定・否定の片方しかできない人に比べ、笑いをとれるタイミングが倍に増える
・場のマワしをやる時抜群に便利

とくに場のマワしを上手くしたい人は、持っていて損のない能力です。

双方の言いあいのバランスが崩れないように調整することもできますし、話が盛り上がっているようなら、言いあいの時間をのばすために会話の燃料をくべる事もできます。

コンビの役割分担時の必要性

芸人を目指してる人だと、今後役割分担として、結構必要になる能力でもあります。

コンビの1人が、芸人以外の人間を悪く言ったり否定するようなボケをした場合、相方は必ずフォローをし、失礼のないように相手を肯定しなければなりません。

その人と普段からめっちゃ仲良くて関係性が完全にできあがっている場合は別ですが、笑いをとった後、相手の印象がマイナスになって損しないよう、ちゃんと0の状態に戻して返してあげなければならないのです。

なぜなら、「相手に損をさせる笑い」は、ある意味誰にでもできるため、プロのやり方ではないからです(たぶん(笑)。カッコいいからそう思ってますw)。

TVでは悪くいった部分がテロップになり目立ちますが、必ずその後フォローの言葉を誰かが言っています。必ず。見てみてください、必ず言ってます。

そしてその失礼な事をいうボケの対象が、美人のモデルとか肯定しやすいものならともかく、よくわからない伝統工芸品であったり、微妙なご当地名産品だったりします(笑)。

「肯定する」という事と「悪く言われた人が納得するだけの肯定材料を話す」という事を、瞬時にその場でできなければならないのです。

芸人としてディスカッション芸を行う際のポイント


もしこれから芸人を目指してる人は、このディスカッション芸を行う際のポイントは下記の通りです。

【ディスカッション芸のポイント】
・肯定・否定、自分がどちらの立場を割り振られても、「ちゃんした理屈で」相手へ反論できる
・あくまでお笑いなので、その反論で笑いをとる(最悪ポップに見せる)

例えばよくある「きのこたけのこ派論争」や「巨乳派・貧乳派論争」など、テーマはどうでもいいです。

「どちらも肯定もできるし、否定もできる」という事が大切です。

『自分がこうだ!と思ってる事しか言わない』という芸人は稀でしょう。

基本お笑いになれば良いので、舞台のコーナー企画とかだと、こういうテーマでは全体の空気を読みながら双方を移動する事があります。

「賛成派5人 VS 反対派5人」でスタートするけど、最終的に1人を残して全員反対派に行ったりとか(笑)。

その際、移動はするけど、なんの理由も言えないじゃ話にならないので、肯定・否定どちらでもガンガンしゃべれる能力が必要です。
ちなみに、こういう自分の本音を話すという事とは別に、「与えられた役割で話す」という事をポジショントークと言います。マジでちなみにですけど(笑)。

ディスカッション能力を磨く練習方法

筋トレ部分です。練習方法の例をあげます。

【ディスカッション能力を磨く練習方法】
・いつもと逆のポジションで話してみる

自分が肯定するポジションで話すことはある程度容易です。
なのでいつもと違う真逆のポジションで話してみましょう。

これも実際に相手はいなくてもよく、あくまでそういう相手を想定したディスカッションの練習をします。

ただ普段自分が肯定しているものであれば、たぶん心の中の自分が勝手に自分の意見を否定してきます(笑)。
打ち負かせるまでディスカッションしていきましょう。

ちなみにこれも要約力が高まれば、短い言葉で相手へ切り返す事ができるようになります。

まとめ

今回は「お笑いの勉強法〜平場編〜の後編」をお話しさせていただきました。
自分で書いてて想像以上に地味でしたが(笑)、前々回ご紹介したグーチョキパー理論とあわせて使っていただいて、たくさん笑いをとっていただければ幸いです。
フリートーク・MC力アップ!お笑い芸人直伝の平場で笑いをとる方法

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。