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養成所に行かずお笑い芸人になれる?芸人になる方法を現役芸人が解説

連載
公開日:2021年7月13日

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。

もし、あなたが芸人になりたいとしたら、まず何をしますか?

養成所に行くものだと思い込んでいませんか?もちろん1つの正解ですが、そうでない選択肢もあります。

考えてみれば、現在の第一線で活躍されている中堅~ベテラン芸人さんは、養成所がまだマイナーだった時期に通われていたわけで。つまり、養成所が一般的になった今は、逆に他のところに金脈が隠れているかもしれません。

新たな可能性を模索していきましょう。決して、僕が養成所時代に成績が悪かったから言うわけではありませんよ。

そもそも事務所には入るべき?

「養成所に行くかどうか」と「事務所に所属するかどうか」は、似ている別の話です。単純に以下4通りあるわけですが、

①養成所に行って、事務所に所属する
②養成所に行って、フリーで活動する
③養成所に行かず、事務所に所属する
④養成所に行かず、フリーで活動する

今の芸人で、圧倒的に多いのは①です。②や④も多くは所属を目指していますし、極論すれば養成所に行くのは「事務所に所属するため」です。では、事務所には何のために所属するかと言うと、「TVに出るため」です。

つまり、以下の人は、養成所も事務所も必須ではありません。
  ★人脈や実力で、既にTVに出られる
  ★TVでなく、YouTubeなどがやりたい

また、養成所では仲間と出会えたり芸人のマナーを叩き込まれたりしますが、お笑いの能力は身につきません(※個人の感想です)。養成所出身だと卒業後も努力しやすい環境なのは間違いないですが、実力さえつけば外部から所属することも可能です。

つまり、以下の人は、養成所に行かずに事務所を目指せるかもしれません。
  ★事務所に所属できる実力がある
  ★情報交換や切磋琢磨できる仲間がいる
  ★芸能界のマナーや勝手が分かる

次からは、具体的にどんな方法があるかを見ていきましょう。

エントリーライブから経験を積んで芸人なる

王道は、ライブで舞台経験を積むことです。新宿・下北沢・池袋・中野あたりで、エントリー料を払えば誰でも出られるライブが多数開かれています。ここで実力とファンをつけ、所属オーディション等での事務所所属や、あわよくば賞レースで結果を残すことを目指します。

デメリットとして、ライブによっては質が悪かったり、その日限りのメンバーで噛み合わなかったりすることはあります。その代わり、出るライブの趣旨や出演ペースは自由に選べます。同じ主催者さんが複数のライブを開いていることもよくあるので、気に入ったライブの主催者さんと仲良くなるといいかもしれません。

また、こうしたライブには場数を踏みたい所属芸人や、養成所出身のフリー芸人も集まります。彼らを間近で見ることで、自分の目指すべき先が具体化できます(そう、多くは反面教師です)。
養成所や事務所に一旦入ると評価や人間関係が固定化する面もあるので、未所属のうちだからこそできることもあります。

学生芸人から芸人を目指す

多いパターンです。といっても、大半は養成所を経て芸人になるのですが、実力や活躍次第でいきなり事務所所属もあります。

芸人を輩出したお笑いサークルで有名なのは、早稲田大学のWAGE(すでに解散)やLUDO、明治大学の木曜会Zなど。多くはインカレサークルで、複数大学の合同ライブもあり、他大学からも接点を持つことができます。
なお、僕の母校・東京大学にもお笑いサークルがありますが、彼らがみな芸人を避けて吉本社員になるのはなぜでしょう。

学生芸人は、当然ほとんどはプロ志望ではありません。その分、できるできないではなく純粋にやりたいようにやるので、「好きこそものの上手なれ」です。
たとえば、プロは自分のキャラに合うことに特化しがちですが、学生芸人出身者は総じて基礎がまんべんなくできる印象があります。また、学生芸人出身者の繋がりは密で、事務所の垣根を超えた人脈は宝です。

役者やアイドルから芸人になる

同じ芸能の道で身につけた表現力や舞台度胸、上下関係のルールは芸人にも通じます。人脈や入れる事務所の宛があるなら、養成所に行く必要はないでしょう。

たとえば漫才でも、人前で台本通り話すには演技力が必要です。面白さには、第一印象の清潔感なども関係しています。こうした点に優れた役者やアイドル出身者は、しばしば他の芸人より見映えがします。撮れ高やオチのタイミングといった、制作側の視点が身についている人はさらに強いです。

同様に、AD出身の芸人さんも上に行く印象があります。やはり、ポイントを押さえているのでしょう。僕は、ADからは養成所を経た人しか知りませんが、養成所に通わずとも通用する素地はあると感じます。

YouTubeなどを活用して芸人を目指す

「芸人」の定義は何でしょう?ずばり、自己申告です。特に、現在はSNSや配信で簡単に活動ができ、そこで「芸人」と名乗れば芸人なのです。舞台より自由に多くの人に見てもらえ、むしろ、養成所や事務所と無縁な方が小回りの利く活動ができます。

ただし、下手に芸人を名乗るとハードルが上がるので、「だったら単にYouTuberとして活動しては?」というのが僕の見解です。それに、もしネタをやりたいのなら、生のお客さんの反応は知っている必要があります。簡単にできるからと言って安易に選ぶべきではありませんが、やり方次第では最も可能性に満ちています。

まとめ

いかがでしょう?道は他にもあるのではないでしょうか?たとえば弟子入りとか付き人とか、色んな選択肢を考えて、それでも必要なら養成所へ行ってください。大丈夫、願書の期限さえ守れば養成所は逃げません(だって、学費を払ってくれる人は多い方がいいから)。

僕は、養成所で一生の仲間と何人も出会えました。けれど、彼らが芸人を辞めていく姿も何人も見ました。人は自分だけは違うと思いがちですが、養成所が生むのは敗者の方が多いのです。

みんなが右を向けば自分は左を向くのが芸人。ならば、左を向くタイミングに早すぎることはないはずです。

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。