【お笑い芸人が教えるネタ講座】プロがやっている漫才を作るときのポイント
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
みなさんこんにちは。
芸歴10年目。最近妹に尊敬されなくなった、吉松ゴリラです。
前回までのコラムで、漫才の種類や初めて作る時、おすすめの漫才をご紹介しました。
▼<前編>【お笑い芸人が教えるネタ講座】漫才の作り方!漫才の種類と特徴を解説
▼<中編>【お笑い芸人が教えるネタ講座】初めて漫才を作る時におすすめの漫才スタイル
今回は、実際にどのように漫才を作るのかについてお話しします。
こちらを押さえておけば、知らない人より手軽にスタイリッシュなネタを作る事ができると思います。
目次
漫才を作ろう!
今日はエンタの神様に出さしていただいてました!
エンタで「おじ」はおもろいですね!
僕にもこの漫才を見ている「おじ」がいてると思いながら見てもらえると、さらに楽しんでいただけます! pic.twitter.com/iemVKrOdI7— ミルクボーイ内海 (@uttakaga) August 10, 2020
最初はルールなんて関係なく、思いついたおもしろい事を全部台本に書き込んでいけばいいと思います。
楽しんでバンバン書きましょう。
ただぼくは何回か一般の方に漫才の作り方を教えた事があるんですが、その時作ってもらった漫才を見て気づいた事があります。
・ボケはみんなめっちゃおもしろい
・けどそれに比べて漫才の構成は、基本を外している
一般の方も結構ネタ番組を目にする事も多いので「ボケってこんな感じでしょ?」と作るボケに関しては的を得ている人が多いのだと思います。
逆に漫才の構成まで見てる温度の高すぎる視聴者は、そうそういないんでしょう(笑)。
漫才にはこういうところを押さえていると、プロっぽく見えるよというポイントがいくつかあります。
是非、以下参考にしてみてください。
漫才の構成とその各所役割
四コママンガにも「起・承・転・結」と、1コマづつ意味と構成があるように、漫才にも大まかな流れと各所に役割が存在します。
その流れに沿って、自分の思いついたボケをバンバン入れていきましょう。
ただただボケを乱発する漫才に比べ、一気に「見れる」漫才になると思います。
今回はオーソドックスな漫才コントを例にとってみて、流れをご紹介します。
【漫才コントの流れ】
あいさつ:はい、どーもー!
・自己紹介
・枕
・コント入り
・コント前半
・展開
・コント後半
・漫才戻る
・オチ
あいさつ:どうも、ありがとうございました!
自己紹介
三拍子
『自己紹介漫才』更新しました。三拍子の漫才前の自己紹介ネタのみの漫才‼️至極の33連発。https://t.co/0wzSlLIuhC pic.twitter.com/z9r6XUiVXC
— 三拍子高倉陵 (@takakuraRyo) February 23, 2020
基本的にお客さんは、今から漫才をする自分たちのことを知りません。そのため、自分たちが何者かの自己紹介をします。
自己紹介の役割は下記3つです。
①役割分担・キャラの説明
②本ネタに入る前のハードルが低い状態で笑いを取り、お客さんをあたためる
③お客さんに親近感を持ってもらう
①役割分担・キャラの説明
お客さん的に初めて見る漫才師、どちらがボケかも分かりません。役割分担の説明をしましょう。
初めて漫才する方はストレートに
「ぼくがボケの◯◯で、こいつがツッコミの◯◯です」
なんて紹介をしても大丈夫です。
また「もう少しプロっぽくしたいな」と思う方は、自己紹介がてら簡単なボケとツッコミを行うことにより、「ああ、あっちの人がボケなんだ」と分かってもらえます。
【具体例】
「顔と名前だけでも覚えて帰ってください。
いまお客さんから見て右に立ってる方が吉松で、話してる方が吉松です」
「どっちもおまえじゃねーか!」
わりとよくあるパターンですが、この1くだりで、どっちがボケかツッコミかが分かりますよね。
キャラの紹介も同様、笑いを取りながら紹介します。
【具体例】
※例えばデブキャラだとして
「今日は真冬だっていうのにーー・・暑いですねぇー」
「おまえだけだよ!」
キャラクターに沿ったボケをする事で、どんなキャラで笑いをとる人かを理解してもらえます。
②本ネタに入る前のハードルが低い状態で笑いを取りあたためる
お笑い好きの人はたくさんネタを見ています。
そのため本ネタに入ると
「さあここからネタだ」
と腰を据えて見にくる人もいます。
もう少しいうと
「TVに出てない芸人のネタなんて、どうせおもしろくないんだろ??おれは笑いにはうるさいから、笑わないぜ??」
という目線で見てくる人もいます。
それだけお笑い好きでいてくれるのはありがたいんですが、ネタに入るとハードルが上がり、笑いを取りにくくなるのも事実です。
しかし自己紹介から腰をすえて見るお客さんはほとんどいません。ハードルが低いうちに笑いをたくさんとり、あっためた所で本ネタに入りましょう。
③お客さんに親近感を持ってもらう
ちゃんと自己紹介をしてどういう人かを知ってもらうと、いきなりネタに入るより親近感を持って聞いてもらえます。
すると笑いの量が変わります。
ちなみに自己紹介に関しては
「漫才って本ネタの勝負でしょ?自己紹介ってどうでも良くない?いらないだろ??」
そう思う方も多いと思います。事実自己紹介は、賞レースなどではカットされる事も多い部分です。
しかしぼく自身舞台を踏んだ統計として、自己紹介をしたかしないかで、お客さんのあたたかさが変わってくるデータがあるのも事実です。
賞レースではカットされがちですが、営業など時間に余裕がある舞台では、どんなベテラン漫才師でも必ず自己紹介を入れます。
それこそ名前から出身地、年齢、結婚の有無などパーソナル情報をバンバンしゃべり、自己紹介をしていきます。
5分くらいは自己紹介ネタする人もいるんじゃないでしょうか。
初めて漫才をやる方は、しっかりと自己紹介をした方がスムーズにネタに入れると思います。
枕
ここから本ネタです。賞レースではここからが評価の対象となります。
枕の役割は以下の2つです。
①今から何をするかの説明
②ツカミ
①今から何をするかの説明
漫才コントの場合は、何をするか、どうしてそれをしたいかの説明をここで行います。
例えば医者のコントをするなら下記のような説明になります。
「ドラマで手術のシーンを見て医者ってカッコいいなって思った。1回やってみたい」
「子供のころ夢だったから、ここで叶えたい」
いきなりコントに入るのではなく、【その理由を明確にしてあげる事】が重要です。なぜならそこでお客さんの共感を得るからです。
この理由づけはお笑い養成所でも習うレベルで基本なので、押さえておきましょう。
ここで「医者をやりたい!」という思いをしっかり伝え共感を得ていると、憧れた医者をやってる人間を邪魔するようなボケをする事で、ウケやすくなります。
②ツカミ
漫才コントの場合は、基本的に枕の部分で1笑い入れます。そしてこれが本ネタの最初の笑い「ツカミ」となります。
ツカミは漫才のボケの中で一番大事とも言われています。
ツカミのボケでめっちゃウケればそのまま流れに乗って爆発しやすくなりますし、ツカミがスベればその後の挽回は非常に難しくなります。
コント入る
爆笑問題が自身を絡めた新作漫才、霜降り明星がコント「ネタジェネバトル」第2弾(コメントあり)https://t.co/Z3YS3Ko7dG
#ネタジェネ pic.twitter.com/SrlAc5LGdD
— お笑いナタリー (@owarai_natalie) October 9, 2020
いよいよコントに入りました。
ここでやっておきたいことは、コント内のツカミです。
漫才コントは、コントに入った時に仕切り直し感がでます。
なのでコントに入った後の1つ目のボケも、このネタがウケるかどうかを左右する重要な役割を担っています。
ちなみに上級者の漫才師はこの仕切り直し感を消すため、いろいろ工夫をしています。
コントに入る前にテンポよくボケて、スピーディにコント内のツカミまでいく事でつなぎ目を目立たなくしたり、コントに入った時の演技の仕方を工夫したり・・漫才を見る時、その辺りに注目してみてもおもしろいと思います。
コント前半
この部分では枕で話していた、「やりたい事」を軸にボケていきます。
後に展開がありますが、ここで「やりたい事」をきっちり消化しておかないと、結局言ってることとやってる事がチグハグな漫才が出来上がります。
枕で
「ドラマで手術のシーンを見て医者ってカッコいいなって思った」
と言っているのであれば、医者になり手術シーンを再現しつつ、ボケを入れていきましょう。
ちなみにこの医者の例だと、養成所生くらいの中には、手術のシーンにたどりつかないまま漫才が終わる場合があります。
(例えば「先生、救急車で患者が運ばれてきました、今から手術が必要です」のやりとりでボケ続けて漫才終了とか)
コント前半でやりたい事をきっちり消化させておくからこそ、この後の展開も活きてきます。
軸が何かを考えて、コント前半のボケを作りましょう。
展開
展開は非常に重要です。
同じシーンでボケ続けると、どうしても飽きが出てきます。
1シーンで逃げ切れるのは、大体90秒が限界です(60秒かも・・)。
TVオーディションだと90秒ネタは普通ですが、舞台は通常持ち時間2〜4分です。
お客さんを飽きさせず最後まで興味を持って見てもらうには、より良い展開が必要不可欠です。
また、ここでどういう展開を持ってくるかもセンスの見せ所と言ってもよいでしょう。
あまり設定に無理がある展開を入れ込んでしまうと、急に見てる側は冷めます。
設定に無理のない範囲で、しかしコント部分の味が変わる・・そんな展開を考えましょう。
ちなみに手術の設定で多いのが
「患者の心拍数が下がってきました!!」
なんかです。
ちょっとありきたりですが、設定に無理なく、緊張感が加わり、少しだけ味が変わりますね。
コント後半
アメブロを投稿しました。
11月6日に『単独ライブすることにしました』#アメブロ https://t.co/QBn0k3UNNt— NON STYLE 石田 明 (@gakuishida) September 23, 2020
この部分が「漫才の印象」を決めます。
前半スベってても後半ウケれば「盛り返した漫才」と言われますし、前半ウケてても後半がスベれば「失速した漫才」と言われます。
漫才は
「最初はゆっくり始まり、最後は爆笑で終わるのが良い漫才」
とも言われます。
つまり何が言いたいかというと、ここの役割は爆笑です。
ほとんどの漫才師はここで爆笑をとるため、畳みかけをします。
畳みかけは、とにかく強いボケの連打です。
この部分でよく使われる技法が、下記2点です。
①伏線回収
②天丼
①伏線回収
事前に伏線を張り、この勝負所で回収します。
通常は連打するボケの中に紛れ込ませるパターンが多いですが、漫才中あちこちに伏線を張っておき、最後全てのボケを、伏線回収ボケにするという構成もあります。
②天丼
一度出したボケを再度利用する「天丼」。
芸人用語としてはメジャーなものなので、この言葉を聞いた事ある人も多いのではないでしょうか。
天丼は基本的に同じボケをします。
漫才の台本を書いた時
「ここは確実にウケるだろ」
と思ったくだりを、再度登場させるのです。
1度ウケたボケは、上手く登場させることで更にウケます。
理由としては
・1回笑ったボケだから、安心して笑える
・1回目でよく分からなかった人も、2回目で理解しやすい
など挙げられますが、あまり長々と説明しなくても、感覚的にある程度お分かりいただけるのではないでしょうか。
ただこの「ここは確実にウケるだろ」の読みを外すと、スベったボケを2度3度やる事になり、舞台上で地獄を見る事があります(笑)。
漫才戻る
コント部分が終了したら、再びしゃべくり部分に戻ります。
「おまえ医者全然できてねぇじゃねぇか!」
などのセリフで、コントから離れた、元の二人の関係性に戻るのが一般的です。
漫才コントは、コント部分を終わらせてた後、改めてしゃべくり部分に戻る事が基本です。
「漫才とは『舞台の上でたまたま出会った2人がする立ち話』である」
という考え方があり、コントのまま終わったら立ち話じゃなくなるからです。
コントと漫才コントの役柄の演じ方の違いは「本物の医者(コントや芝居)」と「お医者さんごっこ(漫才)」の違いと言えます。
「コント」や「芝居」は最初からお互いに医者という役柄を演じているものですが、「漫才コント」は、「立ち話をしてたら一方が『こういう役柄をやってみたい』と言ってきたから『しょうがないからもう一方がそれに付き合ってあげている』」という関係性なのです。
ただここの部分に関しては色んな考えがあり、コント部分が終了したら、そのまましゃべくり部分に戻らず終わる漫才師もいます。
ただ作家さんやベテラン勢の中にはそのような考えをガンとして受け付けない方もいらっしゃるため、賞レースなどを視野に入れている方は、どうせならしゃべくり部分に戻って終わらせた方がいいでしょう。
オチ
オチとは最後のボケです。
ここは「爆笑をとる」というよりは「この漫才を締める」という役割の方が大きいです。
なんとなくオチっぽい事をいってオトしましょう。
ちなみにこの部分に関しても色んな考えがあり「そこまでオチにはこだわらない派」と「オチにはこだわる派」が存在します。
そしてやはり、作家さんやベテラン勢の中には「オチにこだわらない」というような考えをガンとして受け付けない方がいるため、賞レースなどを視野に入れている方は、しっかりとしたオチを考えた方がいいでしょう。
まとめ
ざっくりと漫才の構成と、その各部分の役割をお話しさせて頂きました。
ここにあげていることは結構漫才の基本的部分であり、恐らくほとんどの漫才に当てはまるものだと思います。
とはいえ「ここで知った内容の通りに漫才作ろうとしたけど全然うまくできなくて、結局1本も作らなかったよ」となるのが一番もったいないです。
どんどん作ってどんどん楽しんでいきましょう。
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
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