【お笑い芸人が教えるネタ講座】初めて漫才を作る時におすすめの漫才スタイル
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
みなさんこんにちは。
芸歴10年目。すべった同期で一番笑う、吉松ゴリラです。
今回は、初めて漫才を作る方におすすめの漫才スタイルをお話ししたいと思います。
個人的に漫才は、自分が好きなスタイルでどんどんやっていく事が良いと思います。
ただ最初に作るんなら、このスタイルは作りやすいよっていう漫才があります。
※漫才スタイルって何があるの??という方は、前編をご覧ください。簡易ながらまとめてお話しをしています。
▼【お笑い芸人が教えるネタ講座】漫才の作り方!漫才の種類と特徴を解説
【最初にやるときおすすめの漫才】
・漫才コント
・キャラ漫才の中でも特殊技能系漫才
今回はそれぞれのメリットについてお話ししていきます。
目次
初めてのネタで作りやすいのは、漫才コントかキャラ漫才
一般の方が初めてネタを作るとすると、個人的には漫才コントかキャラ漫才が作りやすいと思います。
「いやキャラ漫才って・・ヘンな格好したり、気持ち悪い動きしたりするのは恥ずかしいよ・・」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かにキャラ漫才の多くは、ヘンな格好したり、気持ち悪い動きをしています(笑)。
ただ今回おすすめするのは、キャラ漫才の中でも「特殊技能漫才」とぼくが勝手に分類しているものです。
以下で、それぞれのメリットを詳しくお話しします。
漫才コント
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たまたまですが
テーマが近い漫才を披露してます😳
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しゃべりの途中からコントに入る漫才コント。そのメリットがこちらです。
・ボケを作りやすい
・セリフ回しの難易度が下がる
・共感を得やすい
ボケを作りやすい
コントの設定を、日常でよく見かける設定(コンビニの店員と客、美容師と客..etc)にする事で、みんなが知っている流れが増え、ボケを量産しやすくなります。
ここでの注意点は「日常でよく見かける設定」にする事です。
例えばコンビニだと下記流れで接客が進むというのは、説明がなくても誰でも分かります。
<コンビニの流れ>
来客
→店員:バーコード読み込み
→店員:商品を袋に入れる
→店員:金額を伝える
→店員:お金を受け取る
→店員:お釣りを渡す
結果、この当たり前に進む所で店員役がヘンな事をすれば、それがボケになります。作りやすいですね。
しかしこれが「胃のバイパス手術を行う医者と新人」という非日常な設定ではどうでしょうか。
お客さん・・てかぼくも「胃のバイパス手術」が普段どんな流れで行われるのか分かりません。
するとネタの全体的な流れは、どうしても下記のようになります。
<この場合のネタの流れ>
医者:今から何をするかの説明①
→新人:①に対して、ヘンな事をするボケ
→医者:次に何をするかの説明②
→新人:②に対して、ヘンな事をするボケ
→医者:次に何をするかの説明③
→新人:③に対して、ヘンな事をするボケ・・・
いちいちボケの前に、次に何をするかの説明セリフが必要になります。
またみんなが知らない事なので説明を簡略化してしまうと分かりにくくなり、どうしても説明セリフの文章量が増えてしまいます。
説明セリフが増えればそこに時間がかかり、ボケとボケとの間隔が広がります。
この間隔が増えすぎると、笑っている時間よりも静かな時間の方が長いネタになってしまうのです。
セリフ回しの難易度が下がる
先ほどのお話しにも通じますが、コントの設定を「日常でよく見かける設定」にする事で、説明セリフを大幅にカットする事ができます。
そのため効率よくボケる事ができます。
ちなみにしゃべくり漫才だと、状況説明や自分の気持ちなど全てをしゃべりのみで表現しなければならないため、必然、説明に要するセリフ量が増えます。
そうするとボケとボケの間隔を空けないよう、より短く、かつ分かりやすい言葉選びが必要となってきます。また、説明セリフを減らすための漫才全体の構成能力も必要です。
これが意外と難易度が高く、スッキリとまとまったセリフが書けるようになるまでには少し経験がいります。
共感を得やすい
コントの設定を「日常でよく見かける設定」にする事で、お客さんの共感を得やすくなります。
「共感」はみなさんが思っている以上に、漫才を構成する上で重要な要素です。台本を作る上で一番大事と言っても過言ではありません。これがなければ、間違いなく笑いにはつながらないのです。
ぼくの同期がやったチカンのネタなんかが分かりやすい例となります。
「電車でチカンをしたいんだ、手伝ってくれよ」
「わかった」
で始まる漫才コントなんですが、ぶっちゃけ男性客は結構笑ってました。ただ、女性客はほとんど笑ってなかったです。
もしかすると男性目線だとなんでウケないか理解しづらいかもしれませんが、女性目線だとウケなかった理由なんて説明するまでもないでしょう。
男性客は女性のおしりを触りたいという共感があるのでまだ笑いますが(だいぶ品の無い笑いですが)、女性客は「チカンをしたい」という気持ちにそもそも共感ができません。それどころか嫌悪感を抱きます。
結果、そのネタをただただ気持ち悪く感じる人が多いのです
(もちろんその辺りの耐性が強い女性客もいますが)。
ただここに共感を得ることのできる設定を付けたら、事情は変わってきます。
例えば共感を得る設定(ちょっとこの設定は無理やりですが)
「神様からの呪いで、女性のおしりを24時間以内に触る事ができないと死んでしまう」
という設定をつけましょう。
さらに触る人間も
「付き合ってもない女性のおしりを触るのはよくない事だ」
「触った女性の心を傷つけることになったらどうするんだ」
とちゃんと、女性が共感できる倫理道徳を話します。
その上で
「しかし自分には病気の妹がいるから、今死ぬわけにはいかないんだ」
と女性が納得できる理由付けをします。
その上で、倫理道徳と死ぬわけにはいかない事情のはざまでゆれ動きながら、女性のおしりに手を伸ばすか、けど伸ばせないというコントであれば、女性のリアクションも変わってくると思います。
「共感が得られないテーマを選ぶ」という事は「共感を得られないお客さんを切り捨てる」と同義です。
別にやってもいいんですけど、必然笑いの量は切り捨てたお客さんの分、激減します。
キャラ漫才の中の、特殊技能漫才
この衣装でよかったと思うことが最近ありました。
日曜にギックリ腰やりました。
月曜祝日で病院空いておらず、昨日病院行ったら「椎間板ヘルニア」でした。
動けなくはないですが、ただ座ってるだけでも腰にきます。この衣装でよかったこと
コルセット下にしてても全くバレません。 pic.twitter.com/qq2dodFdvX— あかもん 山口おべん (@YamaguchiOBEN) September 18, 2019
キャラ漫才の中で、ぼくが勝手に特殊技能漫才と呼んでいるスタイルがあります。
わかりやすく下記順番でお話ししていきます。
・特殊技能漫才とは
・特殊技能漫才の特徴
・特殊技能漫才のメリット
特殊技能漫才とは
特殊技能漫才はどういうものかと言うと、その名の通り、自身が持っている特殊技能をキャラクター化したものです。
<特殊技能漫才のキャラ例>
・医者や美容師などなんらかの免許を持っている
・税理士やホストなど何らかの職務経験がある
・東京大学卒レベルで超頭がいい..etc
ちなみに上であげた例は、実在する芸人ばかりです。
東京大学卒は、この「笑まる。」でもコラムを書いている、山口おべんもそうですね。
ちょっと特殊技能と大袈裟にいいましたが、何も難しい事はなく、自分が詳しいジャンルや趣味があれば、それをキャラクター化する事で他の人に真似できない漫才を作る事ができます。
【こんなジャンルや趣味でもキャラクターは作れる】
・野球に鬼くわしい
・アイドル大好き
・バイト歴長すぎて、その道に精通している..etc
特殊技能漫才の特徴
特殊技能漫才は、スタンダードな設定に、そのキャラクターならではの一言を加えてボケるタイプが多いです。
構造としてはシンプルなものが多いため、ネタを何本か見ていただけると分かると思います。
↓↓特殊技能漫才のネタリンク
●Gパンパンダ:心の葛藤(現役税理士漫才)
●田畑藤本:ドラえもん(東大卒高学歴漫才)
●カラタチ:アイドルオタクVSアニメオタク(オタク漫才)
特殊技能漫才のメリット
ここでは特殊技能漫才をするメリットをご紹介します。
①話に説得力が出る
話にどれだけ説得力を持たせられるかは、漫才をする上で非常に重要です。
芸歴1〜2年目の漫才師でときどき見かけるのが、「おまえ1回も合コンとかした事ないだろ・・」と思われるダサ坊芸人が、さもモテてきたかの如く、女の子相手に合コンの王様ゲームを取り仕切っているようなネタです。
ハイテンションでやっているのですが、それも「おまえ一生のうちでそんな声出した事ないだろ・・」というのが見え見えなので、痛々しく見えてしまい、ウケる事はありません(舞台袖で芸人が悪い笑いをしてる事はありますが・・)。
「どれだけ自分にあった役柄を演じるか」
これはネタ選びを行う上で、とても重要です。
役柄の説得力という物があるのです。
めっちゃ分かりやすくいうと「怖いヤクザの役を、可愛らしい子どもが見事演じきったところで誰も怯えないよね」という事です。
その視点で考えたとき、先ほどのリンクに挙げている現役税理士にしろ、東大卒にしろ「事実そういう人」というバックボーンがある人はボケに説得力がでます。
「無理やり演じている」のではなく「そういう人」として、スタートから見てもらえます。
これは本来しゃべりの技術や台本でクリアしなければならない「ボケに説得力をもたせる」という部分を、ハナからクリアしている事になるため、初めて漫才をされる方にとってはとても有効なポイントです。
②共感を得やすい
先ほどお話しした通り、「共感」は漫才を構成する上で非常に重要な要素です。
バックボーンのあるキャラクターに沿ったボケは、「事実そういう人」なんだから、「そんな事言うのも仕方ない」となり共感を得やすくなります。
この共感も本来は、前置きやフリ部分のセリフ回しで丁寧に作らなければならないのですが、それをハナからクリアする事ができます。
まとめ
今回お話しした通り、個人的には最初に漫才をつくるのであれば、漫才コント、もしくはキャラ漫才が作りやすいと思います。
しかし養成所でしゃべくりからスタートしてめちゃめちゃおもしろい台本を書くやつもたくさんいました。
そういう人間は、普段の日常生活でそのしゃべくり漫才のような方法で笑いをとってきていたやつです。
普段の自分がとってる笑いを軸に、漫才スタイルを決めるのも良い手だと思います。
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
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