芸人を続けるには”営業”に強くなれ!現役芸人が教える営業活動のポイント
執筆:東大卒芸人 山口おべん
1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。
東大卒芸人の山口おべんです。
僕は芸人になったことは後悔していませんが、芸人活動で1つだけ後悔していることがあります。何だと思いますか?
それは、早いうちから営業を意識した活動をしなかったことです。
もっとたくさん後悔することあるだろという正論はさておき、今の芸人界って営業が過小評価されていると思うのです。
養成所でも、賞レースやTVを意識した指導ばかりで、営業を意識した指導はありませんでした。
今回は、実は大切な「営業」にスポットライトを当てます。
目次
芸人を続けるには営業に強くなれ
芸人にとって、最も花形はTVで、最もカッコイイのは劇場の舞台でしょう。
しかし、TVに出続けることは至難の業で、流行に左右されます。
舞台に出続けることはできますが、大多数の芸人はノルマや経費で赤字だし、コアな層だけの反応を見るので迷走しがちです。
「芸人を続ける」という点でいえば、一番安定するのは「営業に強くなる」ことです。
営業はTVより仕事の裾野が広く、舞台より収入が安定します。
「一発当てれば、営業で一生食っていける」とよく言われるのは、現在では極端ですが間違いではありません。
賞レースで勝てるネタやTV向けの芸に徹するのは、もちろん素敵です。
一方で、営業の経験は広くお笑いの土台になります。
それに、営業先の担当者の方がめちゃ丁寧に接してくださるのも、芸人として地味にモチベーションになります(笑)
TVネタと劇場ネタと営業ネタ
TVと劇場と営業で、正解はまるで違います。
ネタ一つとっても、意識して使い分ける必要があります。
TVネタ
・短時間で興味を持たせるインパクト
・愛嬌があってイジりやすい(とにかくやりきる)
・マネしたい。言葉を変えてマネできるパッケージ
劇場ネタ
・個性的な着眼点
・ネタの完成度(構成、言葉選び、掛け合い)
・笑いの量が尻上がり
営業ネタ
・普段お笑いを見ない人にも伝わるベタ
・気楽にor途中から見られるシンプルな作り
・お客さんをいかに巻き込むか
・営業の趣旨に沿っているか
色々な営業
営業にも色々な形があります。
シンプルなネタライブ形式ほど知名度が物をいうので、企画色の強いものや大人数が必要なものほど若手にはチャンスです。
その点、一芸があると営業に繋がります。
一芸のネタや、商品などの紹介、一芸を使った企画など活かし方は様々です。
・バルーンアート
・大道芸
・占い
・家電に詳しい
・アニメに詳しい
etc.
時代なのか、体を張る営業は少なく感じますが、世の中にはまだまだ未知の営業があるはずです。
僕の相方は前のコンビのとき、表参道ヒルズに設けられた透明なショーケースで「東大芸人がひたすら一発ギャグをやる」営業をやったそうです。
静岡大成高校1年生さんに講演させていただきました!
zoomだと、クラスごとの特色が見えておもしろいですね。
黙々と聞いてくれた人も、楽しんで聞いてくれた人も、今日を受験のための"きっかけ"にしてくれると嬉しいです! pic.twitter.com/jO7EBHdmM2
— 東大卒芸人 山口おべん(あかもん) (@YamaguchiOBEN) February 12, 2021
営業の流れ
主な営業の流れをご紹介します。
営業前日
やることはあまりありません。
個々でネタを練習したり、定期的な企画だと最初に打合せや稽古をしたりすることはありますが、出演者同士が当日が初対面ということもよくあります。
当日の集合
現地や現地の最寄り駅が多いです。
遠方だと事前に切符を渡されます。
入り時間が開演1~2時間前くらいなのはライブ同様です。
控室
入ると台本が置いてあります。
お弁当があれば食べるタイミングは自由ですが、衣装を汚せないので来てすぐ食べるか持ち帰る人が多いです。
全員が集まった頃合いで、先方の担当者と打合せや、必要なら軽めのリハをおこないます。
出番
自分の出番の少し前に袖にスタンバイし、出番を務めます。
ただ経験上、いざ舞台に出てから立ち位置や使うマイクで戸惑うことがちょこちょこありました。
演者目線かつ、やることを細部まで把握している自分たちしか気づけないので、気になったことは事前に確認しましょう。
終演後
たいてい現地解散です。
営業に時間の前後はつきものですし、先輩にご飯に誘っていただける場合もあるので、キツキツの予定は入れないことをオススメします。
どうすれば営業に行けるか
まず、事務所によって営業のもらいやすさが違います。
大手ほど案件の数も多様性もありますが、枠を競う芸人も増えます。
また、劇場を持っていない事務所の方が、営業に力を入れる相対的なウエイトは大きいです。
「どんな営業ができるか」は事務所選びの判断基準になります。
既に書いたように、営業に繋がりやすい個性や一芸は有利です。
ただ、それだけでは不十分で、営業の担当社員さんと仲良くなることがカギです。
だって、営業に行かせる芸人を毎回社内隈なく探すなんて不可能ですよね。
人柄も信頼され、常に頭に浮かぶ存在になれば、営業を回してくれるだけでなく自分に合った営業を取ってきてくれるかもしれません。
また、知人が仕事をくれることもあります。
闇堕ちしないよう事務所を通して受けることになりますが、事務所も芸人を守るために様々な基準があり、ともすると話がこじれやすいです。
うまく間を取り持てるかどうかで明暗が分かれます。
芸歴が上の人ほど、売れるために事務所に頼りすぎず自分でも動いている印象です。
お笑いの基本がわかるのが営業
色々書きましたが、ここまでの話をギュッとまとめて一部すり変える(?)と、言いたいのは以下の3つです。
営業に行くと
①初めて自分たちを見た一般の方がどう感じるかがわかる
②お客さんとのちょうどいい距離の詰め方がわかる
③お金の流れがわかる。自分の何にお金を払ってもらっているかが意識できる
折しも、お笑いに限らず、ローカルに密着した活動や個々にカスタマイズしたサービスは存在価値が高まっています。
営業にはまだまだ伸びしろがありますし、営業を経験することで芸人としても伸びしろが生まれます。
執筆:東大卒芸人 山口おべん
1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。