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現役お笑い芸人が今オススメする相方の探し方ベスト5

連載
公開日:2021年9月29日

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。

あなたが芸人になるなら、ピン・コンビ・トリオのどれがいいですか?

おそらく、最も多くの人がコンビと答えるでしょう。味方が1人いるだけで、できることの幅も安心感も格段に違います。それはトリオ(やそれ以上)でも同じです。

じゃあ、相方を見つけなければいけませんね?これがなかなか難しいのです。

今回は現役芸人である私が、実際に相方を探した経験や、コンビ活動をして感じたことを元に、相方の探し方ベスト5をランク付けしました。5位から発表していきましょう。

相方の探し方5位: 地元の友達同士で


今の中堅以上の方に多いパターン。元から相手のキャラクターを知っているので、コンビバランスが出来上がっていたり、ネタが書きやすかったりするのは他にない強みです。

反対にデメリットは、妥協した選択になりやすいこと。だって、全国区で通用する相方が身近にいるなんて、ゲームなら完全に確率バグです。お笑いの能力もそうですが、プロを目指すうえでコンビ間の温度差が生まれることも多く、意外と解散も早いのが友達コンビの特徴です。

ただ、これからの時代、友達コンビが再評価されるかもしれません。それは、「コンビ仲が良い芸人」が求められているから。

昔よりプライベートが筒抜けなのと、配信など100%自分たち主体の活動が増えたことで、大衆イメージ&継続性の両面で「仲の良さ」が大切になっています。また、コンビ仲が険悪になったときに「友達に戻れる」ことは、持ち直せるかどうかの分岐点になります。失敗例も多いので5位としましたが、うまくいけば一番の理想形です。

相方の探し方4位: ライブや賞レースで声をかけて

ライブや賞レースのネタを見て、気になったピン(やコンビ)の方に声を掛ける方法です。利点は相手の芸風・個性を知った状態から始められること、欠点はちょっと引かれることです。

なので、お客さんとして声を掛けるよりは、自分もピンで出演してください。そうすれば向こうも抵抗が減るし、自分のネタを知ってくれたうえで判断できます。ピンでライブに出る方がハードルが高いというクレームは受け付けません。

なお、事務所所属の人と組むとややこしいので、フリーやアマチュアの人中心に探すことになります。その意味でも難しさはありますが、舞台度胸やネタを書く力がなく相方に依存して失敗するコンビも多いので、ピンで活動できるような人を選ぶべきというのは常々思っています。

相方の探し方3位: ネット掲示板で


ネット掲示板で結成した東京ホテイソンさんが、2020年にM-1ファイナリストになりました。時代に合ったやり方で、個人的には大賛成です。

それは、本気の人が集まりやすいと思うからです。掲示板は大勢の目にさらされ、身内のように甘い目では見てくれません。また、会える範囲という制約はあるにしろ、広い範囲から相方を選ぶことができます。一定の覚悟や目標があるから選ぶ手段です。

もちろん、全くの他人同士が会うリスクやミスマッチもあるでしょうが、お笑いに限らずバンドメンバー募集の掲示板やマッチングアプリもある時代なので、ここでは気にしません。まあ、最悪「ちょっとやべぇ奴」が来た方が、お笑い的には当たりです。

相方の探し方2位: 大学のお笑いサークルで

お笑いをやりたい人ばかりが集まるサークル。いい意味で「プロじゃない」うちに色々試して、純粋に楽しんで実力を磨けます。

サークルならではなのが、コンビの掛け持ちができること。特に、みんなボケをやりたがるらしく、以前僕が観た文化祭の舞台では3組連続ツッコミが同じ人でした。掛け持ちができると組みやすいだけでなく、比較や客観的評価がしやすいので上達に繋がります。

ただし、多くの人はプロ志望ではありません。将来のために大学に入った彼らを、無理やり底なし沼に引きずり込んではいけません。

また、学生とプロでは笑いの取り方が少し違います。それは、プロは客層が他人ばかりで、ハードルもグッと上がるのと、TVでの使い勝手を考えなければならないからです。学生芸人はセンスで、プロ芸人はキャラで勝負する印象です。順応できなければ失敗しますが、うまくいけばどちらも身につけた完全体になれます。

相方の探し方1位: 養成所で

間違いがないという意味で、最もオススメできるのが養成所です。本気でプロになろうという人ばかりで経験者も多く、また、養成所以外では出会うことがない人種も集まります。

1人で入学して孤立しないか不安な人もいるでしょうが、大半は1人で入学しますし、コンビで入ってくる人も割とすぐ解散するので安心してください(?)。吉本のNSCの場合、「相方探しの会」なるイベントもあり、大喜利や物ボケをして組みたい相手を探します。

ただし、自分にも魅力がないと相方に選んでもらえませんから、そこはシビアです。また、最近は入学前にSNSで入学者のコミュニティができるので、参加していないと情報に乗り遅れることはあります。

もう1点。養成所では、普段友達にならない人種を相方に選びがちです。自分と違うタイプだからこそコンビとして面白いので正解なのですが、何か亀裂が入ったとき、隣にいるのは友達でない人間になります。東大卒の僕も、養成所ではホストや体重140kgの巨漢とコンビを組み、感覚のズレが積もって解散しました。コンビ間のギャップも大切ですが、「続く」というのも1つの才能です。

最後に

吉本に所属してすぐ耳にした噂が、「5回解散したらクビ」というもの。個人のプロフィール用紙のコンビ歴の欄に、枠が5つしかないのでこう言われるようです(厳密には、ピンで活動しても1枠使います)。この噂の真偽は知りませんが、「相方をとっかえひっかえすると信用を失う」という戒めなのでしょう。

そう、デビュー後は簡単に解散できないのです。そして、解散癖は一度つくとなかなか治りません。色んな人とコンビを組むことで見えるものもありますが、あくまで1人1人を大切にする姿勢は忘れないようにしましょう。

正式に組む前に、必ず誰かにネタを見てもらうのがオススメです。バランスを見てもらうのもそうですが、ネタを1本作り上げて披露することで、お互いの長所も短所も見えてきます。そして、短所はお笑いにおいては武器でもあります。上手くいけば一生の付き合いになるのですから、短所も好きになれるような相方を選びたいものです。

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。