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現役お笑い芸人が暴露!出待ちに対する思いや嬉しい差し入れ、裏事情

連載
公開日:2020年12月14日 更新日:2020年12月17日

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。

お笑いライブに行ったことのある人でも、「出待ち」はもう一段先のハードルだと思います。芸人と直接話したい気持ちはあるけれど、誰が教えてくれるでもなく、「よく分からない」と感じている人もいることでしょう。

そんな、ただでさえ少しミステリアスな出待ちについて、現役芸人である山口おべんが、芸人目線で裏側から書いていきます。



芸人はいつ出てくるか分からない

出待ち対応は、あくまで「サービス」です。小劇場の役者さんなら終演直後に客席やロビーに出てきますが、芸人にその気概はありません。着替えて、荷物をまとめて、何なら他の芸人と雑談してから出てきます。売れっ子だと、楽屋口を避けて正面入口から出入りする芸人さんもいます。

もちろん、芸人とて出待ちしていただけるのはありがたく、なるべく対応するのですが、そもそも対応できない場合もあります。すぐ次の仕事がある場合や、すぐバイトがある場合(もちろん後者が多い)。あと、次のような場合です。

吉本のライブには、終演後に作家さんのダメ出しがもらえるものがあります。これが時間がかかり、一時期は22時過ぎ終演のライブで終電を逃す芸人が続出しました。昼でも、作家さんが次のライブも担当で、ダメ出し中にそちらが開演して後回し、なんてこともあります。ダメ出しは進みも読めず、並んだ順のことも多いため、終わるまで出待ち対応できないこともしばしばです。

ところが、常連のお客さんは、1~2時間して出てきても涼しい顔で待っています。むしろ、そんなにお人好しで世間の荒波を越えていけるのか心配になるくらいです。もし出待ちされる方は、事前に本人に時間を確認するか、もしくはかなりしっかりめの暇つぶしアイテムをご持参ください。

なお、出待ちの反対の入り待ちもありますが、芸人は時間ギリギリに行動する生き物なので、あまりオススメできません。

場所には気をつけて

出待ちで難しいのは、「どこで待つか」ということです。基本的には楽屋口付近ですが、劇場ごとに作りも違うので、ベテランさんを見つけてマネするのが無難でしょう。どうしても近隣から苦情が来やすいため、向かいのお店の前などは避けていただけると嬉しいです。

芸人からしても、楽屋口を出る瞬間はちょっとした勝負。出待ちがいてくれるか分からないからです。特に、初対面のお客さんが来てくださったときなど、声をかけやすいようにゆっくり歩いたりしますが、あまりキョロキョロして「あの人、出待ちがいないか必死で探している」と思われても恥ずかしいので、ほどほどに退散します。出てきた芸人を見落とさない位置取りもカギです。

そんな諸々の事情を知ってか知らずか、吉本では2018年に渋谷の劇場ロビーにカフェを作りました。時間もつぶせて、近隣に迷惑もかけず、店員の芸人とも話せるという、お手本のような商売です(問題は、多分そんなに儲からないこと)。コロナ禍では大声で推奨はできませんが、いずれこの形が広まればいいなと思っています。

もらって嬉しい差し入れ

差し入れは、ないのが普通であって、頂ける分には何でも嬉しいです。ただ、渡す方も悩むポイントだと思うので、芸人目線の意見を書きます。

間違いなく嬉しいのは飲み物です。ライブで喉からからだし、冬場なんて暖かい缶コーヒーでイチコロです。ただし、出てくるタイミングは分からないので、冷めた缶コーヒーを後で自分で飲むハメになっても保証はしません。

お菓子をくださる方も多いです。結婚式の引き出物と同じで、いわゆる“消え物”だと気まずくないですね。小道具や衣装で大荷物な芸人も多いので、安くてもかさばらない方が嬉しいです。大袋のお菓子を持ち歩くようになったら、立派なベテランです。

あと、芸人は日々“ツイネタ”を探しています。「カワイイ」でも「面白い」でもとにかく目を引くもので、しかも「お客様から頂きました」と書くと人気があるように見えるので、周りと差を付けたければ(?)オススメです。ただ、中途半端なものだと芸人がスベってしまうおそれがあり、難易度高めです。

先輩付き合いとの天秤

序盤に書いたように、芸人は雑談してから外に出てきたりします。ただ、これが全くの遊びかと言うと、そうでもありません。周りの芸人、特に先輩との付き合いが、ライブでのコンビネーションや仕事に繋がります。その最大のチャンスこそ「このあとメシ行こう」なのです。

ここで難しいのが、出待ち対応をどうするか。対応が終わるタイミングを揃えるのは難しいので、芸人は気持ち早めに切り上げようとします。しかし、お客さんは話したくて待っているので、なるべく引き延ばそうとします。見えない攻防戦の幕開けです。

一番気まずいのは、先輩にだけ出待ちがいなかったとき。一方的に待たせますし、先輩の方が人気がないと言っているかのようです。その意味では、むしろ誘う先輩にこそ勇気が要ります。

芸人は感想を聞きたい

出待ちのお客さんにネタの感想を聞いたときほど、分かりやすく目が泳ぐことはありません。その芸人目当てで来て、その芸人に嫌われたくなくて、その芸人と面と向かって話せば、無難な「面白かった」しか出ないのは当然です。

芸人にもよるでしょうが、僕は素直に詳しく言ってほしいタイプです。周りの芸人の意見や作家さんの意見を聞くことはあっても、それはお客さんの目線ではありません。良い点も悪い点も、言ってもらえなくて売れないことが、芸人最大の不幸です。

一部のお客さんは「ここが面白かった」「ここは意味不明だった」と率直に教えてくれ、理解があってとても感謝しています。もっとも、彼らが性格の悪いお客さんなだけかもしれませんが。

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。