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若手お笑い芸人必見!芸歴10年が語る売れる芸人に共通する3つの特徴

連載
公開日:2020年11月5日 更新日:2021年1月5日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

みなさんこんにちは。
芸歴10年目。月間生活費は7000円、吉松ゴリラです。

今回は売れる芸人の特徴についてお話しします。
ここではざっくりと、「売れる」の定義を「無名の若手がTVに出だし、番組レギュラーを獲得するまで」として考えてみます。

割と現実的な内容になるので、一般の人というよりは、これからお笑い芸人になろうかなと考えている人向けになってます。

売れていないお前が語るなという内容ではあるんですが、芸歴5年目を超える頃には、ほぼ全ての芸人がこの内容と現実を把握しています。

あとはそれを実行できるか、できないか・・そしてこの差は皆さんが思っている以上に、残酷なほどデカいです。



売れるお笑い芸人に共通している特徴

【売れる芸人の特徴】
・「No.1」である
・「Worst.1」である
・「Only.1」である

みなさんが思いうかべるほとんどの芸人は、このどれかの特徴を必ず満たします。

ちなみに他コラムで時々見かける売れる芸人の特徴、「人柄がいい」とか「気配りができる」とか書いてあるものは、全て無視してください。
それは「芸人が売れ続けるために必要な特徴」です。

芸人が売れるために必要なものと、売れ続けるために必要なものは違います。

TV製作者は何十何百といる無名のゴミ芸人の人柄なんていちいち見ていませんし、もし見てくれる人がいたとしても「人柄がいいから、今度TVにキャスティングしといたよ」なんて言ってくる極甘なTV製作者に出会う事は一生無いと思っていた方がいいでしょう。

もし出会えたらスーパーラッキーです。一生ついていってください。

TVの世界が求めてるものは「No.1」「Worst.1」「Only.1」

先ほど少し触れましたが、「売れる」という定義は色々あると思います。
ラーメンズさんのようにTVの露出は少なくとも、舞台でカリスマ性を発揮されている方もいらっしゃいます。

しかし、このコラムを読んでいる人の多くは「売れる=TVにバンバン出てる」という感覚だと思うため、そこに焦点をしぼってお話ししていきます。

結論から言うと「No.1」か「Worst.1」か「Only.1」になる事です。

TVは王様、何かの1番がでるメディア


TVがネットに押されているなんて言葉も聞きますが、それでも現在メディアの王様はTVです。

YouTubeで「チャンネル登録者数が100万人」というとトップ中のトップYouTuberですが、TV視聴率に直すと1%を切るのです。これは当然打ち切られるレベルです。

そのため、TVに出るためには、大手企業の採用面接並のふるいを乗り越えなければなりません。
番組によっては倍率100倍を超えます。

実際に、皆さんが劇場に足を運んでもらうと分かると思います。「この芸人、TVに出てる芸人よりはるかにおもしろいよな??なんでこの人たち売れてないの??」という声をよく聞きます。
そしてそんな芸人が地下にバンバンいます。売れていません。恐ろしい現実です。

その理由は単純です。何かの1番でないからです。

売れてない芸人は「呼ぶ理由」があって、初めてキャスティングされる

芸人が「TVに出る」という事は、皆さんが思っている以上に大変な事です。

ちょっと前にニューヨークさんが自身のYouTubeちゃんねるで、作家さん(以前ニューヨークさんの事をキャスティング会議で推してくれた、けど中々キャスティングされなかったと語る作家さん)にその理由をこう言ってました。

「TV制作会社的に、作家さんがおもしろいと思ってるのはいいけど、『呼ぶ理由は?』って事よね」

TV制作の人はアホじゃありません。何人もの大人が、睡眠時間削って、ともすると芸人以上に「おもしろい」を「仕事として」「手をぬかず」考えてる人たちです。

視聴率が取れなければ打ち切られてしまうTV番組にとって、ダイレクトに視聴率に響くキャスティングは台本同様、番組の生命線といってもいい部分です。

そしてこの世におもしろい芸人はたくさんいるので、キャスティング候補を書いてある黒板には、たくさんのおもしろい芸人の名前があげられています。

当然、「そりゃここに書いてる芸人はみんなおもしろいよ。で、他の芸人を押さえて彼らを呼ぶ理由は?」となります。

その時、呼ぶに値する理由がある人たちが呼ばれるのです。
その理由となるのが、次にお話しする「No.1」か「Worst.1」か「Only.1」です。

「No.1」「Worst.1」「Only.1」の各ジャンルと、メリットデメリット

ここではそれぞれのジャンルの紹介と、メリットデメリットについてお話しさせてもらいます。

「No.1」のお笑い芸人

基本的に賞レースのチャンピオンが立ち並びます。チャンピオンです。当然キャスティングに値します。
ここらへんは芸人の名前を省略します。このコラムには何となくの文字数制限があるので、調べれば出てくる内容には文字数はさきません。詳しく知りたい方はググってください。すいません。

・M-1チャンピオン
・キングオブコントチャンピオン
・R-1チャンピオン
・THE Wチャンピオン
・歌ネタ王チャンピオン
・SNS系のNO.1(YouTubeやTikTokで現在No.1レベルでバズってる芸人。フワちゃん、エグスプロージョン(『本能寺の変』を歌って踊ってた方)など)

賞レース系はその他にもABCお笑いグランプリやNHKお笑い新人王など挙げられますが、全国ネットレベルのTV番組に呼ばれる「No.1」という事でいうと、上にあげたラインナップではないでしょうか。

「No.1」芸人のメリット

賞レースチャンピオンとなるメリットは「今の旬」ではなく、「賞レースのタイトルを保持している」というラベルがつく事につきます。

旬の芸人は旬が過ぎれば用済みですが、タイトルを保持している芸人は、そのタイトル自体に価値があり、旬がすぎても企画によってキャスティングする価値があります。

そしてそのタイトルは、永続的になくなる事はないのです。

「No.1」芸人のデメリット

デメリットは全くありません。
強いていえばチャンピオンという事で、ややネタのハードルが上がるくらいでしょうか。

別添「SNS系No.1」芸人のメリットデメリット


SNS系No.1は最近出始めたジャンルのため、ぼくには今後どうなるかは分かりません。

ただ当然現在SNSでNo.1を誇る芸人も、1年2年と時間がたつにしたがって、第二、第三の同ジャンルのNo.1芸人に世代交代していくと予想されます。

そうするとTV的には、「今が旬」な芸人と同じ扱いを受ける可能性が高く、旬が過ぎれば「あの人は今」的な扱いを受ける可能性が高いです。

しかし、SNS系はそれ自体がTV的な側面も持っているため「TVに出ないから露出が減った」と認識されにくい、今までになかったジャンルです。

別にNo.1じゃなくても、SNS上位に君臨し続ければまた今までと違った、新しい扱われ方をされる可能性もあると思います。

「Worst.1」のお笑い芸人

何かの最下位であるジャンルです。独自の価値観や聞いた事ないエピソードを持っているので、そこ目的でキャスティングされます。

運動音痴や極貧、人間性的なキャラで「最低」「クズ」と言われるジャンルの人です。

ちなみにあくまでキャラですね。「クズキャラで売ってるあの人が、実は裏ではめっちゃいい人」なんて話は、みなさんも聞いた事あるんじゃないでしょうか。

「Worst.1」芸人のジャンルまとめ

【人間性「Worst.1」芸人】
・とろサーモン:久保田さん
・南海キャンディーズ:山里さん(今は違うのか・・??とりあえず昔はクズキャラでした。以下にあげる鈴木さん村本さんと共に、「クズ三銃士」と名乗っていた時期もあります。)
・ドランクドラゴン:鈴木拓さん
・ウーマンラッシュアワー:村本さん

【借金系「Worst.1」芸人】
・空気階段:鈴木もぐらさん
・岡野陽一さん

「Worst.1」芸人のメリット

メリットとしては、賞レースなどで結果を残さなくとも、番組企画によってピンポイントでTV出演が可能です。

賞レースで結果を出すには、ほぼ全ての芸人を敵とし、その全てに勝利しなければなりません。

しかしこのジャンルは競争相手が少ない分、自分のWorstに磨きをかけていけばキャスティングされる確率が高まります。

「Worst.1」芸人のデメリット

Worst.1の枠は人数が決まっているため(1時代に3人いれば十分)、移り変わりが激しい事が挙げられます。
ハーフタレントみたいなもんですね。

このジャンルは競合相手が少ないとはいえ、血の滲むような努力などはそれほど必要がないため、定期的に新人がでてきます。

TVは目新しさを求めるため、新人が多いほど移り変わりは早く、もしこの「Worst.1」一本で出続けたいのであれば、毎回TVに出る事に「どこにも話していない新鮮な」「そのジャンルの」「死ぬほどウケる鉄板エピソード」が10本以上は必要でしょう。

当然創作ではないので、おもしろいエピソードになるような事件が短期間にバンバン起きる訳はなく、どんどんエピソードは消耗されていきます。

実際例に挙がっているメンバーを見ていただくとお分かりの通り、今残っているメンバーは全員が「賞レースで結果を残している芸人」で、「そのラベルがある+Worst.1」として出ています。

このように賞レースで結果を出してるメンバーが同ジャンルにいた場合、そのポジションを奪いとる事は至難の技です。

「Only.1」のお笑い芸人

他の誰にも代えが効かない、知識や特技を持っている芸人です。代えが効かないので、当然キャスティングに値します。

・BBQに異常に詳しい:たけだバーベキューさん
・iPhoneの知識でアメトークにも出演:かじがや卓哉さん
・筋肉を鍛えるためアメリカ留学もしている:なかやまきんに君
・その他:家事がめっちゃ得意芸人、料理めっちゃうまい芸人…etc

上に記載している芸人は、それぞれそのジャンルで本も出版しているほど、各ジャンルに精通した知識と技術を保持しています。

「Only.1」芸人のメリット

メリットとしては「Worst.1」芸人同様、賞レースなどで結果を残さなくともピンポイントで呼んでもらえます。

TVで何かを解説してもらう時、「そのジャンルに詳しい一般の人を呼ぶよりしゃべりは上手だろうし、段取りとかも最低限の説明で分かってくれるし、何より事故る心配が無いよな」と考えられ、キャスティングされます。

またメディアで注目が集まれば、本の出版やコラムの執筆、セミナーなど、そのジャンルの仕事が舞い込んでくるのも特徴です。

「Only.1」芸人のデメリット

「その芸人が欲しい」というより「その芸人の持っている知識が欲しい」という事でキャスティングされるため、そのテーマを扱う企画がでてこなければ基本的にTVに呼ばれません。

またこちらも「Worst.1」同様、同ジャンルの競合相手が出てきたら弱いです。

特別枠:ものまね、年末の特技披露

こちらも結構熱いジャンルです。ライバルは多いですが、切り口・努力次第で1ブレイクあるジャンルです。

ものまね

ピン芸人に多く、現在の時短時代(MCにフラれたら3秒以内に笑いで返す)のニーズにあったものまね芸人。
そのものまねキャラがハネれば、即売れます。

年末の特技披露

年末年始はネタと同様、特技披露の特番が多く組まれます。
ここで鉄板でウケる特技がハネた場合、数ヶ月間のプチバブルが訪れます。

各ジャンルの売れる芸人の特徴

各ジャンル総じて言えるのは、売れる芸人は上記結果を出すため、「泥臭いほど、お笑いに向き合う」という特徴が共通しています。

それではぼくが見聞きしてきた、各ジャンルのお笑いへの向き合い方を具体的にお話しします。

「No.1」のお笑い芸人になるために必要なこと

賞レースでトップを取る必要があるので、死ぬほどネタ作り、ライブにかけ、修正をして珠玉の1ネタを作ります。

賞レースで結果を残すことを目標にしている芸人が作る新ネタ本数は、週1本ペースで、年間平均50本前後ではないでしょうか。
ぼくの同期では1年間で100本作ったやつもいます。
これは全てを捨てて、ネタに狂わなければならない量です。

またSNS系でいくのであれば、バカほどバズる必要があります。
ここでの売れ方はある意味芸人としてではなく、「YouTuberやTikTokerとして売れて、実はそいつが芸人だった」というレベル
なので、まずSNSでそこまで売れ切らなければなりません。

日夜本職のYouTuber・TikTokerと同じレベルのネタだし会議をし、動画を撮影、再生回数を見て反省会を繰り返します。

「Worst.1」のお笑い芸人になるために必要なこと

Worst.1に求められるのは、そのジャンルにおいての鉄板エピソードです。なので普段から新しいエピソードを作るために意識して動きます。

鉄板エピソードの多くは、何かしらの事件が起きなければ生まれません。その事件に出会うには運の要素が大きく「◯時間で◯本エピソードができる」といった目安は存在しません。

なのでその事件が起きるまで、日常生活を注ぎ込みます。
毎日毎日注ぎ込みます。

そして出来たエピソードトークをライブにかけて、どこに何度出してもその日一番ウケるくらいの鉄板エピソードを量産していきます。

またTVレベルでは無名の若手芸人のトークに割ける時間は30秒前後のため、最長でも60秒以内の尺に収められるようエピソードを調整します。

「Only.1」のお笑い芸人になるために必要なこと

鬼ほど勉強します。目安はそのジャンルの本を書けるくらい。
資格があると強いので、資格もとります。

また新しく勉強をはじめるとするとき、どの知識・技術を培っていくかは、時流を読んで論理的に決定します。
ぶっちゃけ何が流行るかは運によるところもあるので、キャンプ芸人・釣り芸人のように、自分の好きな趣味から始めるパターンもあり、それも良いと思います。

ただ世間が注目してくれないと本当に趣味で終わってしまいます。
なるべく「みんなが興味があって」「そのうち流行りそうで」「ライバルが少ない」ジャンルを探す必要があります。

この読みを外すと「知識はあるけどTVには呼ばれない」という悲惨な状況になります。

ものまねが強みのお笑い芸人になるために必要なこと

自分本来の人間性を忘れるくらい他人のものまねします。
個人的イメージですが、ものまね芸人・ギャグ芸人には特にストイックな芸人が多いです。

ものまね専門でやってる芸人は、芸歴にもよりますが、演じるキャラストック20人以上、各キャラでのネタ10本くらいは平気で持ってます。
そして常に新キャラと新ネタのリサーチをしています。

もしくはその熱量で1人のものまねを掘り下げます。その代わり「本人以上に本人に詳しい」くらい、その人を掘り下げます。

年末の特技披露に呼ばれるお笑い芸人になるために必要なこと

ここ専門でやってる芸人はほとんどいないので、お笑いへの向き合い方というより、どんなものが必要かのお話をします。

現在は芸人が増え、ネタ以外にも活路を見出した芸人が増加した事により、特技のレベルがどんどん上がってきています。
しかしあくまで芸人が行う特技なので「笑いをとりつつ、すごい」という不思議なジャンルの習得が必要です。

↓↓例
・鼻の穴に1円玉を10枚詰めて、相方にビンタをされる勢いで1円玉を飛ばすが、必ず1枚だけ鼻の中に残す…etc

また「笑いなくガチ系の技術」として特技を習得するんであれば「プロほどではないんだろうけど、素人目にはプロとの差がわからない」レベルの技術習得が必要です。

まとめ

売れてない芸人が売れるまでには、まず「最初にTVに呼ばれる」というプロセスがあります。

ちなみにTVの企画はたくさんあり、パッと思いつくだけでもこんな募集があります。

【TV企画で求められる、こんな事ができる芸人が欲しいという募集】
・おもしろいネタ
・鬼嫁がいる
・売れてないのに子だくさん
・知り合いに超有名人がいる
・女性にモテモテ
・売れてる先輩芸人について超詳しい…etc

売れてる芸人は、このような様々なニーズに対応するため、普段から貪欲にそういうストックをたくさん作っています。

TVで「◯◯でブレイク!」と紹介されますが、その裏にはたくさん日の目を見なかったストックが隠れています。

『お笑いに向き合う事』
これがどのジャンルにも共通する、売れてる芸人の特徴です。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。