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東大卒芸人が語る、最先端「クイズ芸人」の生態とは?

連載
公開日:2021年1月25日 更新日:2021年2月9日

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。

世は空前のクイズブーム。新たなクイズ番組が続々と始まり、各地の学校のクイズ研究会が人気だと聞きます。

言葉を選ばず言えば、これまでの「意味のないバラエティー番組」が衰え、お役立ち知識や社会貢献が求められる風潮と、クイズは相性が良いのでしょう。前者を主戦場としてきた芸人には寂しさもあります。

そういう意味では、今増えている「クイズ芸人」は、これまでの芸人と真逆の存在かもしれません。その生態を、お笑いよりクイズが得意な僕、山口おべんが紐解きます。



インテリ芸人増加中


芸人の多様化で、高学歴や知性派の芸人が増えました。彼らにとって、クイズ番組での活躍は現実的なブレイクのチャンスであり、レベルが急激に底上げされました。

同時に、一時低迷していた「高校生クイズ」が超難化して視聴率が回復したように、番組側も難易度が上がりました。きちんと対策を講じる必要があるため、「クイズ芸人」が生まれました。

高学歴芸人については、過去の記事に詳しく書いているのでご一読ください。
「お笑い芸人を目指す高学歴へ!東大卒芸人が教える高学歴芸人あるある」を読む

クイズ芸人あるある① 勉強会がある

クイズは実戦形式が習得が早いです。最近では芸人や芸能人によるクイズ勉強会が存在します。

僕が参加しているのは、カズレーザーさんが主宰されている勉強会。約半数が芸人ですが、アイドルさんや大御所の方も参加され、番組の1つや2つ作れる豪華メンバーです。コロナ以前は毎週集まり、4時間クイズ漬け+有志でご飯に行った先でもクイズという、まさに天国でした。知る限りでは、関西にも同様の芸人クイズサークルがあります。

基本の活動は、持ち寄った問題を出し合うというもの。知識が増えるだけでなく、早押しのタイミングも鍛えられます(どういう判断でここで押しているかというのは本当に勉強になります)。また、特にカズさんは様々なところでクイズを出題されるため、作った問題や新しい形式を試されることがあり、僕が芸人でなければ命を狙われるくらいのおいしい思いはしているでしょう。

クイズ芸人あるある② ボケない

芸人は、クイズでたとえ正解が分かってもボケるのが常道です。第七世代やYouTuberが自然体で振舞うようになりましたが、今でも“ボケない=死”という芸人が多数派です。

それで言うなら、クイズ芸人は一万回は死んでいます。なぜなら、クイズ番組ではボケより正解が採用されるのです(バラエティー度合いによりますが)。結局、視聴者が見たいのは本気の勝負であり、水を差すものは要らないようです。

それ以上に、ボケない理由は練習にあります。何時間もクイズを解く勉強会で、分からない度ボケていたら集中できず、何より周りが答えづらくて仕方ありません。おかげで、普段の舞台でもお笑い要素0のことを堂々と言うメンタルは鍛えられました。

(ごく一部の猛者は、「詳しすぎる」「補足がマニアック」「そこ広げなくていいよ」というのがボケの域に達していますが)

クイズ芸人あるある③ ハイテク

芸人には化石のような人も多く、先日もzoomが上手く映らないというので聞いたら、ど真ん中の「OK」ボタンを押していないだけでした(※この方は20代です)。それに比べればですが、クイズ芸人はハイテクというか、一定のデジタルスキルが求められます。

浸透率100%なのは「みんはや」。「みんなで早押しクイズ」というスマホアプリで、簡単にオンライン対戦や自作問題が出題できたりもする代物です。僕もよく、クイズ界隈の方に鍛えていただいています。芸名そのままでやっている人が多いため、フリー対戦で遭遇したらご本人かもしれません。

他に、スマホにはクイズの問題集や、面白かった問題のスクショ。問題共有もスマホアプリが便利です。解いたことのない問題集は、専門サイトでネット注文。クイズの作問もパソコンでやるので、画像クイズ・動画クイズも作れます。

さらに、コロナ禍でzoomで勉強会を開くことも増え、ネット環境が早押しに影響するようになりました。芸人勢が苦戦するかと思いきや、環境がいいのか押しがいいのか、皆さんお強くて感服です。それでも、住んでいる家の差が出るため、タレントさんやアイドルさんと比べて、芸人だけ部屋の明るさが1トーン暗いのですが。

ただし、TVに出るには別の活躍も必要


クイズ番組で、「あの人になら勝てそう」って思うことありませんか?僕はしょっちゅう思います。そして、いざ自分にチャンスが来ると、抜群の安定感で不正解を叩き出します。

TVで正解を連発する方々の勝負度胸と、それを支える影の努力には感服です。ただ、彼らが純粋にクイズ力で呼ばれているかというと、それは違います。単純な強さなら、全国のクイズ猛者たちに芸能人が入り込む余地はほとんどありません。番組に求められるのは「クイズの引き立て力」であり、好プレーと同等かそれ以上に、その人に「引きがある」ことは大切です。

芸人の場合、紹介できるネタがあるのが理想。また、よく求められるのが「問題が作れる」ことで、独自性のある問題を発信していると武器になります。要は、「○○で話題の~」と紹介できなければ、いくらクイズを鍛えても呼ばれません。そう、これらが一番グサグサと刺さるのは僕の心です。

クイズにはチャンスが潜んでいます。ただし、クイズの答えも売れるための答えも、候補を複数考えておくことが大切かもしれません。

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。