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ウケるコントは何が違う?お笑い芸人が教えるコントの中身作り講座

連載
公開日:2021年3月24日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

みなさんこんにちは。
芸歴10年目。Apple Watchを買ったその日にiPhoneを落とした吉松ゴリラです。

前々回(前編)、前回(中編)のコラムでコントの種類とその特徴、そして設定についてお話ししました。

▶︎前編:「芸歴10年のお笑い芸人が教える初めてのコントネタの作り方」
▶︎中編:「超重要「あるあるなしなし」とは?お笑い芸人が教えるコント設定の作り方」

今回はいよいよコントの中身作りのお話しになります。

最初にネタを作る時は、自分がおもしろいと思う事をバンバンネタの中に放り込んでもらって大丈夫です。
まずはウケた・スベった関係なく、楽しんでいきましょう。

ただ、コントの場合、いくつか押さえておきたいポイントがあります。

【ポイント】
・コントのルールの理解
・コントの流れの理解

今回はこの辺りについてお話しします。



コントをやるなら、このルールを押さえておこう!

コントは非常に自由度の高いネタ仕様である一方、そこにはコントならではのルールがあります。

このルールを度外視ししてネタを作ってしまうと、見辛くなり、ボケが分かりにくく、結果、ウケなくなります。

「冒頭で」シチュエーションを伝える!

ほぼ何もない空間でコントは始まります。
舞台上で使える道具はイス、机、他にあってホワイトボードくらいではないでしょうか。

お客さんに場面を想像してもらうコントにとって、今からどのシチュエーションを演じるのかの状況説明は非常に重要です。なのでそれを、必ず「冒頭に」伝える必要があります。

【冒頭に状況説明を伝えるメリット】
・お客さんに配役や、場合によってはそのキャラクターの心理状態まで伝えるため、その後のストーリーに共感させやすい
・状況説明部分は尺をとるため、後回しで中盤以降の盛り上がりたい時にねじ込むと、必ず邪魔になるのでその回避…etc

状況説明は下記内容を手短に伝えましょう。

【状況説明】
・いつ
・どこで
・誰が
・何を
・どうしているところなのか…etc

ちなみにあえてこの状況説明の一部をせず、後にそこをボケにするコントの手法もありますが、特殊例のため割愛します。

設定に『会話を続ける理由』がある!


これはお笑い養成所を出たことのある芸人は100回以上は聞いたことある注意点ではないでしょうか。

ちなみにぼくが養成所生の時、最初の頃のネタ見せの授業でほとんどのコント師が、講師にこのダメ出しをされていました。

TVで見るレベルのコントでは、この『会話を続ける理由』を必ずセリフに入れています。必ずです。注意して見てみてください。絶対入れてます。

前編で少しお話ししましたが、基本的にコントというものは【日常風景を切り取ったもの】であるため、日常でとらないような行動は起こしてはいけません。

【設定NG例】
●設定:らーめん屋と客

店員:お待たせ(らーめんを注文されたけどカレーをだす)!
客 :カレーじゃねーか!らーめん頼んだんだよ!
店員:ああすいません!お待たせ(またカレーをだす)!
客 :だからカレーじゃねーか!らーめんだって!
店員:あっそうだ すいません!らーめんですよね!・・お待たせ(またカレーをだす)!
客 :カレーじゃねーか!

これは講師に一言「こんな店員いたらおまえ帰るだろ?」と言われてダメ出し終了です。

このボケの「店員がずっとカレーを出してくる」部分がどうとかではなく「ずっと注文通らないのにその場に居続けて注文し続ける客」という設定に無理があるのです。

現実世界でこの客の感性は、コイツが主人公でコントが1つできるくらい、一般人の感覚とズレています。
サイコです。

なのでこういうコントをしたい時は、「客が帰らない」こんな理由づけを設定に加えるのが普通です。

【設定追加例】
●元の設定
・らーめん屋と客

●追加設定
・店はらーめんの超有名店
・客は仕事が忙しい毎日の中、大好きならーめんを食べる事だけが唯一の楽しみ
・今日は半年ぶりの休日、明日からまた仕事だが、地方から片道6時間かけてらーめん食べるためだけにやってきた
・オーダー取りに来てるのは最近入った新人バイトの外国人
・日本語がまだそこまでうまくないため、オーダーがうまく聞き取れない
・店主は仕事忙しくて厨房から出てこられず、オーダーするには外国人を通さなければならない

設定追加しすぎてTVの時間尺のサイズを超えているような気もしますが、逆に、時間のある単独ライブではみんなこのレベルまでキッチリと設定を練り込みます。

こうすることで
・「ずっと注文通らないのにその場に居続けて注文し続ける」事への理由づけ
・イライラするけどどうしても注文を通したい客への共感
を作るのです。

自分にあった役柄をしよう!

コントはお芝居の側面もあるので、ただ「やりたい配役をやる」ではなく、自分の見た目や性格にあった配役をしましょう。

例えば、「お金借りてる人と怖い借金取り」という設定で、借金取りに追い詰められた、債務者の言い訳をボケにしようとします。

しかし極端な話、「怖い借金取り」を可愛い子どもが「おめ〜こらぁ〜!」と演じてしまうと、役柄に無理がでてきます。
もう可愛い借金取りが、どう考えてもボケです。

こうなると最初の自分の魅せたい笑いがブレてしまうので、自分たちにあった配役を考える必要があります。

キャラクターをブラさない(無理やりなボケをしない)

初めてネタを作る方でありがちなものが、色んな種類のボケを入れまてしまい、キャラクターがどういう人間なのかブレてしまうというものです。

ボケはなんでもかんでもブチ込めばいいというものでもありません。

特にコントは、
「このキャラクターだから、こういうボケをする」
というのが大事です。

魅せたい笑いの軸に沿ったボケが必要です。例えば先ほどの例でいうと、こんな感じです。

【らーめん屋と客での例】
ボケ :店員
ツッコミ:客
魅せたい笑い:どんなオーダーでも、店員がずっとカレーを出してくる

●邪魔なボケ例1
客 :自動ドア)ウィーン!
店員:こっちもウィーン!
客 :扉何枚あんだよ!

●邪魔なボケ例2
客 :らーめん1つ
店員:・・からの〜??

なんとなくお分かりになると思うんですが、上に挙げた邪魔なボケは、話のスジに全く関係ありません。ボケの種類も違いますよね。

そうすると、この店員がただの「ヘンなヤツ」という事になってしまい、「どんなオーダーでも、ずっとカレーを出してくる店員」という、本来魅せたいキャラクターからブレてきてしまいます。

ボケ役なので当然「ヘンな事」をするキャラクターなのは当然なんですが、「ヘンな事の中でも、どういうヘンな事をするキャラクターなのか」とよりフォーカスを絞ることで、ネタに深みがでます。

逆に、邪魔なボケ例のようなボケをたくさんいれたいんであれば「いちいち小ボケを仕掛けてくる店員」とか、設定を変えてそういうボケにスポットを当てたコントを作るべきです。

コントの流れの理解


ここで大まかなコントの流れと各所の役割のお話をします。
繰り返しになりますがコントは自由度が高いので「こうしなきゃいけない」というものではありません。

あくまで基本的なコントの流れになってますので、逆にこれを踏み台にして、より良いコントを作っていただければと思います。

コントの流れとその役割

一般的にコントはこのような流れで行われます。

【コントの流れ】
・起:状況設定を伝える
・承:コントのテーマとなるボケ
・転:展開
・結:オチ

起:状況設定を伝える

先ほどお話しした通り、状況設定を冒頭に伝えます。
伝え方のパターンとしては2種類です。

【状況設定の伝え方パターン】
①タイトルとして伝える
②演技・台本で伝える

①タイトルとして伝える
これはシンプルに
「コント!喫茶店!」とか
「コント!集中したい時にめっちゃしゃべりかけてくるヤツ!」
とか、タイトルを言ってそのままコントに入るパターンです。

メリットとしては言葉で状況説明や、コントのキモとなる部分の説明しているので、本来そこに要する演技力をカバーする事ができます。

ただ少し古いスタイルで、やぼったく見えてしまうため、最近ではあまり見なくなったスタイルです。

②演技・台本で伝える
状況説明を演技・台本で伝えます。
先ほどの例だと、ドアを開け、閉め、椅子に座り、メニューを見て、相手に
「すいません店員さん、らーめん1つ」
と、ここまでの動作・セリフで、らーめん店という場面設定と、相手が店員であるという事を伝えます。

また、話のスジとなる部分の説明(さっきの例だと、半年ぶりの休日で6時間かけてきた・・とか)もここで行うのが普通です。

承:コントのテーマとなるボケ

状況説明をした後、このコントのテーマとなるボケがきます。
これがツカミになる場合も多いです。
さっきの例だと、「らーめん頼んだのにカレーがでてくる」のボケ1発目ですね。

ちなみに漫才のツカミは非常に重要で、絶対にウケなければならないんですが、コントのツカミは、ややウケくらいから始まり、その後どんどんその切り口を掘り下げて大爆笑につなげていく場合も多いです。

転:展開

漫才同様、展開は非常に重要です。
同じ状況でボケ続けると、どうしても飽きが出てきます。

「らーめんの代わりにカレーがでてきた」というボケが、もし猛烈にウケたとしても、ずっと同じ事してて都度爆笑が起こるわけがありません。

飽きはお笑いにとって大敵です。
鮮度を常に保つべく、思いもよらない展開を用意します。

ここでの注意点は『奇をてらった展開を用意する』のではなく『話のスジにそった展開を用意する』ことです。

本論からあまりに離れると、見てる側は急に冷めます。
先ほどのらーめん屋の設定だとこんなのです。

【奇をてらって、たぶんスベる展開】
・「隕石が空から降ってきたぞ!地球にブツかるまでに食べきらないと!」
・「宇宙人がらーめん食べにUFOで降りてきたぞ!」…etc

こんなこと言わると今までの世界観ブチ壊しです。

「いやそこまでヤバい展開にするわけないだろ」と思われるかもしれませんが、実際こういう無理ある展開は地下ライブで結構見ます。

芸歴3年未満の芸人は、とにかく他がやってない展開やぶっとんだ展開にしようとする傾向があるため、話のスジや世界観より、優先順位を間違ってしまったりするのです。

なので世界観を守り、話のスジを通した展開となるとこんな感じになります。

【話のスジにそった展開】
・めっちゃ混んできてらーめんの注文がガンガン入ってくるが、店員がバンバンカレー出してる
・客が「もういい、カレーでいい!もうカレー食うから福神漬け持ってきてくれ!」・・とフって、福神漬け頼んだのにそれも違うメニューで出てくる…etc

またこの「転」の部分は超盛り上がりどころです。
超盛り上がるべく、この部分でよく使われる技法が、下記2点です。

①伏線回収
②天丼

特にコントの場合だと、伏線回収が手法として多く使われているイメージがあります。

※各々の詳しいお話しは「【お笑い芸人が教えるネタ講座】プロがやっている漫才を作るときのポイント」の「コント後半」部分をご覧ください。

結:オチ

オチは最後コントの印象を決めるため、重要です。
ここでの注意点は、
①ストーリーを完結させる
②ネガティブなオチにしない
という事です。

①ストーリーを完結させる
お客さんはコントを1つの物語として見るため、物語をキチンと完結させましょう。
でないと、急に「おれたちの闘いは始まったばかりだ!」なんて打ち切られたまんがのように、読後感が悪くなります。

結構賞レース系だと、「物語を完結させる」より「与えられた時間で1つでも多くの爆笑をとる」事を優先させるため、やや終わりが荒いコントもありますが、あれは特別例なので、基本的にはキレイに最後まで愛を持って、コントを仕上げてあげましょう。

②ネガティブなオチにしない
コントに限らず漫才でも、オチは「誰かが死ぬオチ」とかの暗いものよりも、ポップな方がTV的です。

ガチガチにネガティブなオチは、結構な確率でオーディション時に修正されます。
「もしTV出演を依頼する場合、そのオチ変えられますか?」と。

また最近の傾向で、TVではお客さんが過剰にネタに対してリアクションをすることも多いため、「怖い話系のオチ(賃貸物件を紹介してる不動産屋と客。オチで「まあ、そうやって首をくくって死んだのは、実は私なんですけどね・・」で、徐々に照明が暗くなる)」レベルでも悲鳴が上がったりします。

単独ライブなんかでは全然ダークなオチをつけて楽しむ芸人も多いですが、オーディションなんかを意識するなら、ハナからそういうオチを避けてコントを作るのも手だと思います。

まあこれは「物語を完結させる」に比べ、「こうしなければならない」というものではないです。

「覚えといて損はないよね」くらいに思っていてください。

まとめ

コントについて前・中・後編と3回に渡ってお話しをさせていただきました。

ちなみに本編に入れるほどでもない特徴として、こんなのもあげられます(笑)。

【本編に入れるほどでもないコントの特徴】
・道具や衣装の買い出しや作成など、ネタ稽古以外の事前準備が死ぬほどめんどくさい
・事前準備が大変な分、スベった時のダメージが漫才より大きい
・スベった時は、家に帰って即コント道具を捨てる。ってか会場付近のコンビニに捨てて帰る
・立て続けに3回くらいスベったら、どうせ今回もスベるんだろと事前準備に手をぬきだす…etc

このあたりはコント師のあるあるです(笑)。

そんなプチ情報をハサみつつ、是非みなさんもコントを楽しんでいただければ幸いです。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。