お笑い芸人の家事情!「一人暮らしvsルームシェアvs実家」ベストはどれ?
執筆:東大卒芸人 山口おべん
1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。
あなたは、何人の芸人の自宅を見たことがありますか?
コロナ禍で公共の場での撮影が減ったせいか、芸人の自宅紹介が増えた気がします。ついつい、「自分もここ住んでみたいな」「自分ならここは無理」と想像を膨らませた経験、一度はあるのではないでしょうか。
とはいえ、芸人特有の事情は、実際に住んだ経験がないと分からないものです。
今回は、僕や周囲の経験をもとに、「一人暮らしvsルームシェアvs実家」という、さながらM-1の最終決戦のようなマッチアップを実現させてみました。皆さんも、自分が住むならと想像して読んでみてください。
目次
お笑い芸人が家を決める際に考えるポイント
芸人が家を選ぶなら、以下3つのポイントを考えるのがオススメです。
作業環境
ネタ作りやネタ合わせをどこでやりましょう?ファミレスや公園もありますが、自宅も集中できるに越したことはありません。コロナ禍ではなおさらです。最低でも、小道具作りやリモート出演は自宅でできないと困るでしょう。
立地
先輩やスタッフさんとの付き合いにフットワーク軽く参加できると、勉強にもなり仕事にも繋がります。仕事自体も、どこに何時に行くこともありうるので、まんべんなくアクセスが良い家だと重宝。特に、道具類をたくさん使う芸人は負担が全く違います。
家賃
芸人としての収入は不安定です(もしくは、ほぼ0や赤字で安定しています)。アルバイト等で生計を立てているお金を無駄にはできません。
売れるためには、衣装・小道具・フリップなどにもお金を回してこだわる部分が必要です。
お笑い芸人の一人暮らしのメリット・デメリット
「僕が考えていたのはこれじゃない」30歳にして一人暮らしを始めたハライチ岩井が気づいた違和感https://t.co/ZRpusJoZkD
お笑い芸人・ハライチの岩井勇気(@iwaiyu_ki)による連載エッセイ
今回のテーマは「想像の一人暮らし」です#ハライチ #岩井勇気 #エッセイ #小説新潮 @shoushineditor pic.twitter.com/QUqK6NgJ4H
— Book Bang -ブックバン- (@BookBang_jp) February 26, 2021
メリット
◎とにかく自由。邪魔されにくい
〇完全オフの時間が必要な性格なら
デメリット
△家賃・立地・設備、どれかは諦めが必要
△家電なども1人で負担して買うことに
△配信や撮影が騒音になるかも
最も集中でき、最もストレスがないのが一人暮らしです。他人に気遣いが必要ないので、人を呼んだり深夜に出かけたりするのも自由。また、プライベートでも周囲に「芸人」として評価される僕らにとって、オンになれる環境だけでなく、完全にオフになれる場所も大切です。
反面、家賃が高かったり、場所が不便だったり、風呂・トイレが共用だったり。まあ、ネタになる家に住むのも手なので、自分がどの条件は気にならないか見極めましょう。
なお、僕が一人暮らしで反省していることは、TV出演が目標なのにずっと録画機器を買わなかったことです。クイズ芸能人の勉強会に参加するようになったとき、皆さんクイズ番組を録画で欠かさずチェックしていてびっくりしました。一人暮らしで家電を揃えるのは負担ですが、考えが甘かったなと(でも、そういえば勉強会メンバーは既婚者や実家が多いです)。
また、リモート撮影や個人での配信・撮影が多いご時世ですが、単身向けの部屋は防音や電波・ネット環境が弱いことがあります。僕はYouTube撮影を台所で行いますが、理由は、少しでも騒音にならないようにです。家が木造で、隣家のおならもいびきも聞こえるのです。
お笑い芸人のルームシェアのメリット・デメリット
ぼる塾あんりが男性芸人とルームシェア開始、かまいたち濱家から際どい質問https://t.co/epGHRuLd4u pic.twitter.com/VaqtnW1xBy
— お笑いナタリー (@owarai_natalie) March 8, 2021
メリット
〇家賃が抑えられる
〇立地や設備がいい家に住める
◎(特に芸人同士は)刺激やエピソードになる
デメリット
△プライバシーが少ない
△部屋や物を勝手に使われるかも
✕同居人の引越しや家賃滞納のおそれ
ルームシェアは、少ない家賃でちゃんとした設備の家に住めます。一人暮らしで手が届かない好立地の部屋も、ルームシェアなら住めます。
一番のメリットは、芸人同士で24時間切磋琢磨できることでしょう。同居人の努力は刺激になり、意見交換や情報交換ができ、エピソードも生まれます。また、生活の中で自然に生まれた笑いはその人に合った笑いであり、お客さんにとっても直感的な分かりやすい笑いです。
ただ、性格の向き不向きや、同居人によるようです。プライバシーはいくらでもなくせるので、それが自分が「おいしい」と思えるラインかどうか。ある芸人は、外出中に同居人がデリヘルを呼んで布団を使われ、気づくと布団に血がついていたそうです。
また、トータルの家賃は高いので、誰かが抜けると途端に火の車になります。他のことが手につかず、急いで芸人に声を掛けて入居者を探しますが、誘ってくる顔が強ばっているのでちょっと怖いです。
お笑い芸人の実家暮らしのメリット・デメリット
爆笑問題太田「さんま御殿」登場、芸人の実家暮らしについて語るhttps://t.co/lzecrOn1kf pic.twitter.com/M2Zuj8J3Bj
— お笑いナタリー (@owarai_natalie) February 15, 2021
メリット
◎とにかくお金が浮く
〇家事の手間が省ける
〇物が何でも揃っている
デメリット
✕親はペースを乱してくる天才
△家に人を上げにくい
△実家を出た経験はあっていいのでは
場所次第では、実家暮らしも有力な選択肢です。金銭的理由が一番ですが、ご飯や洗濯のことを考えなくて済み、バイトの時間も減らせます。時間的・精神的な余裕ができれば、その分お笑いに専念できます。
また、僕は実家を出てからも、ちょこちょこ行ってプリンタでフリップや名刺を印刷していました。番組で自分の昔の写真が必要になったときも実家に行きました。物の揃いだけなら、一人暮らしよりルームシェアより実家だと思います。
ただ、どうも親にはペースを乱されませんか?少なくとも、自信のないネタのときに限ってライブを見に来たがったり、定期的に安定した職業や資格取得を勧めてきたりするのが芸人の親というもの。また、家に人を上げたり不規則に外出・帰宅したりすることに気兼ねし、不自由を感じるなら、環境面トータルではマイナスかもしれません。
あと、芸人は一般的な感覚を知らなければ笑いを取れませんから、実家を出るという経験はしておいていいのかなと。余ったお弁当をもらうためにTV局の楽屋に最後まで残る気持ちは、実家にいるうちは分からないでしょう。異性関係も疎くなりがちです。この辺り気にすべきかは、その芸人のキャラにもよるでしょうが。
お笑い芸人の家事情まとめ
いかがでしたか?M-1審査員になったつもりで、自分の中の優勝者を決めてみてください。
おそらく、性格によっても、やりたいことによっても、どれがベストかの結論は変わってくるでしょう。裏を返せば、選択次第では自分のやりたいことができないかもしれません。
僕は、芸歴4年目になる頃に実家を出て、一人暮らしを始めました。良かったこと・悪かったこと、どちらもありますが、とにかく芸人としての振る舞いが変わりました。
家や住み方には、それくらいの力があります。もしかすると、引越しを機に、来年にはあなたの自宅がTVで紹介されているかもしれません。
執筆:東大卒芸人 山口おべん
1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。