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お笑いコンビは不仲って本当?東大卒芸人が不仲になる原因を解説してみた

連載
公開日:2020年6月11日 更新日:2021年1月5日

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。

TVで、京都府立大学の塚本康浩教授が「ダチョウは漫才の相方のようなもの」とおっしゃっていました。塚本教授は、コロナウイルスに有効なダチョウ抗体マスクの開発で注目を浴びる方です。

25年間ダチョウと暮らし続け、5年前には蹴られて骨折し、いまだに顔を覚えられていないという教授の言葉には、敬意と同時に妙な納得を覚えます。その上でですが、発言には「いや、絶対嫌だわ」と内心つっこんでしまいました。

ダチョウの後だと霞みますが、相方が嫌いだというコンビ、ちらほら聞きますよね。むしろ、サンドウィッチマンさんら仲良しコンビが、まだまだ異例という扱いです。「仲悪い」という表現が適切かはともかく、そうなる原因、すっごく分かります。

なので、今回はコンビが不仲になる原因を考察していきます。なお、皆さんは一つ誤解をしていると思いますが、僕のコンビは不仲ではないですよ。



上下関係になりやすい

同じ土俵に上がる以上、何かしらの優劣ははっきりします。ネタが書ける方と書けない方、空気が読める方と読めない方、キャラがある方とない方。あと、多いのが遅刻する方としない方です。

これが、発言権の差や相手への不信感に繋がりやすいのです。

とはいえ、何となく守備範囲が分かれていないと、受け答えやMCのときにごたつきます。ネタ作りも、どちらにも決定権がない状態で話し合って作ると、まるで進みません。なので、上下関係も少しは必要です。

上手いこと相手の弱点を補い合い、トータルで対等になれているコンビは長続きします。「じゃない方」がネタを書いていたり、ネタを書かない方が付き合いが得意だったり。

そんな理想のせいか、芸人は、相方がやっていることはやりたくなくなるという、謎の病気にかかります。

ネタについて激論を戦わせる

これは良いことなのです。コンビは、何よりも仕事上の関係。遠慮して意見が言えないのは最悪です。

が、結果を踏まえて歩み寄らないと、平行線は交わることはありません。ネタは、細かい間の取り方一つでもウケが変わりますから、相手の意見を否定しようと思えばいくらでも言えてしまうんですよね。

Amazonの創業者ジェフ=ベゾス氏は、しばしば社内で対立するそうです。たとえば、発売直後に完売したKindleの広告を、在庫がない状態で数ヶ月もAmazonトップページにでかでかと載せ続けました。社内は非難轟々。しかし、この施策でブランドは確立し、対立した幹部は「彼が正しかった」と認めます。

この話に感銘を受けると同時に、結果が明確な数値に表れているからこそ幹部の方も納得できるのだと思います。どうやら芸人には、そういった裏付けのないベゾスが溢れているようです。

欠点を生かせるのがお笑い、でも

芸人は、失敗や欠点こそ強みになる素晴らしい仕事です。「笑いの根源は優越感」という説が正しいかはともかく、あるべき理想の姿を見ても人は笑いません。その点、「バカ」と「ブス」は世界を救います。

ただ、これは相手に怒りを覚えたときにはタチが悪いです。

相手の欠点に限って、人間的魅力やお笑い的長所だったりするのです。少なくとも、人の心を揺さぶる何かではあると言えます。だって、自分の心が一番動かされているのですから(怒りの方向に)。

ちなみに、著書「笑い」で知られるベルクソンも、その中で「他人事だから笑える」みたいなことを言っています。相方と適度な距離をとるのは、ある意味で理にかなった防衛本能かもしれません。

相方とは、自分と似ていない人間

コンビがピンと大きく違う点は何でしょう?それは、2人の人間の「ズレ」を生かせる点です。別の立場や、そもそもボケとツッコミという別の役割だからこそ、幅が広がります。

よって、相方を探すときは、自然と自分にないものを求めるものです。つまり、相方とは本来的に、「同じクラスならまず友達にならないであろう人種」なのです。

育ってきた環境が違うから、分かり合うには山崎まさよしさんが何人いても足りません。

これに関連して、芸人には「コンビで交友関係を別々にすべき」という教えがあります。
コンビで一緒にいるより別々にいた方が、エピソードは2倍になる。これ自体は正論ですが、共通項が減ることは相方への親近感が減ることでもあります。

まあ、自分にない魅力に惹かれて結ばれるという意味では、結婚と同じで「相方元気で留守がいい」のかもしれません。

僕の過去のコンビは

僕はデビュー当時、僕が東大卒で相方がホストという、一見そそられるコンビでした。
けれど、1年持たずに解散しました。理由は主に、ネタの意見がまとまらなかったことです。

あるとき、ネタで「フィボナッチ数列」と言いたいと僕が言いました。7割の人は言葉くらい知っていると主張した僕も僕ですが、それを否定する元相方は九九が言えないのです。お互い納得するはずもありません。

そして、そんな話を元相方の勤務後の深夜2時にしていました。「ホストに磨きをかける」と言いつつなぜか激太りしていく彼と、すれ違いは増えていきました。成長した今ならもっと上手くできるかなとたまに考えますが、根っこの違いは簡単でないことも事実です。

その点、今の相方とは妙なところまで似ています。2人とも東大卒(なのに売れてない)、公務員家庭(なのに真逆の芸人に)、一人っ子(なのに親を泣かせる選択)など。なので、対立することはありますが、奥底で分かり合える部分もあります。

けれど、大きな問題が生まれました。そう。ズレがないのです。この悩みを解決するには、どうやらハーバード大あたりを出るしかなさそうです。

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。