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【お笑い芸人が教えるネタ講座】漫才の作り方!漫才の種類と特徴を解説

連載
公開日:2020年9月16日 更新日:2021年1月5日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

みなさんこんにちは。
芸歴10年目。健康保険は親の扶養、吉松ゴリラです。

前回のコラムで初めてネタを作る時の漫才、コントの選び方をお話しました。
漫才?コント?現役お笑い芸人が教える初めてのネタの作り方

今回はもう一歩踏み込み、より具体的なネタの作り方【漫才編】を3回に分けてお話しします。

【今回の抑えておきたいポイント】
・漫才の種類とその特徴
・芸人が漫才を作る時の特徴の出し方

こちらを押さえておけば、知らない人より漫才への理解が深まり、少し踏み込んだネタを作る事ができます。



コンテストで披露されるネタはもはや芸術品

ちなみに漫才の歴史が始まったエンタツ・アチャコ師匠(※しゃべくり漫才の開祖とも言われる伝説的師匠)の時代から100年以上経っています。

現在ネットの普及にともない良質なネタが全ての芸人の目にさらされるようになり、分析され、踏み台にされ、ブラッシュアップの礎となり、更に良質なネタが生産され・・と、ネタの革新がお笑いの歴史上、一番進んでいる時代に突入しています。

そんな現在、漫才・コントの台本は凄まじく洗練されており、繊細かつ緻密に構成がなされ、M-1・キングオブコントにでてくるネタの台本は芸術品といっても過言ではありません。これほんとに。(笑)

お笑いを学んで、お笑いで遊ぶには最高の時代だと思います。
是非その芸術の一端を感じて頂き、楽しんでネタ作りをして頂ければと思います。

※今回のコラムでは必要上先輩芸人様の名前が乱発されていますが、読みづらくなってしまうため、全て敬称略で書かせて頂いております。お会いした事のない先輩方が多いため大変申し訳ございません。お叱りがあれば即行直します。

漫才の種類とその特徴

一言で漫才といっても種類があります。

ただ「おもしろい漫才」をしているだけで売れる時代はとうの昔に過ぎてます。漫才がこの世に産声を上げてはや100年、おもしろい漫才師なんて、本当に吐いて捨てるほどいるのです。

「オリジナリティがあり、おもしろい」

それが売れる漫才の最低条件です。

以下、簡単に漫才の種類と特徴をまとめてみました。

漫才の種類

大きく分けて次の2つです。

・しゃべくり漫才
・漫才コント(※コント漫才とも呼ばれます。日本語的には「コント漫才」の方が正しい気がしますが、芸人界隈では普通「漫才コント」と呼ばれています)

しゃべくり漫才

いわゆる正統派と言われる漫才です。

特徴は下記の通り。
・コントに入らず、キャラクターを演じたりはしない
・『自分自身の』キャラクターや人間性をベースとしたボケを軸とする

芸人の中で、カッコいいと言われるネタスタイルNO.1です。

ちなみに漫才の理想系は『人(にん)』が出る漫才と言われています。

『人(にん)』が出る漫才とは「台本に書いてある文字情報だけだとおもしろくないんだけど、あいつが言うと途端に笑えるんだよなぁ・・」という、「その人が言うからおもしろい」「その人が言わなかったらおもしろくない」といった、いわゆる『人柄』が出る漫才です。

理由を簡単に述べるなら、「その人がやるからこそおもしろい漫才」というのは、他の代えが効かない『OnlyOneの漫才』であるからです。

そして『自分自身の』キャラクターや人間性をベースとしたボケを軸とする事から、その『人(にん)』が最もでるのがこのしゃべくり漫才です。

また、現在は「M-1」→「TV」という流れもできていますが、漫才中のキャラクターのまま、TVで活躍する人が多いのもこのしゃべくり漫才の特徴です。

【主なしゃべくり漫才のM-1・THE MANZAIチャンピオン】
・ブラックマヨネーズ
・チュートリアル
・ハマカーン
・ウーマンラッシュアワー
・銀シャリ
・ミルクボーイ..etc

漫才コント

しゃべくりから、コントに入る漫才です。
最初、導入の部分は自分自身として話しますが、コントに入ってからは何かしらのキャラクターを演じます。

演じるキャラクターは自分自身(※例えば大学入試に落ちた友達をなぐさめる自分とか)や実際にいそうな人、また濃い味付けをされたキャラまで、多岐に渡ります。

ただしあくまで漫才、小道具・音響などは使わず、ネタはセンターマイク1本で行います。

この漫才コントは、以前はコント部分のボケを、人柄関係なく誰がやってもウケるようなボケにする事が多かったです。

<漫才コントの例>
客:「こんにちはー!ウィーン(自動ドア開ける)」
店員:「いらっしゃいませー!ウィーン(こっちも自動ドア開ける)」
客:「ドア何枚あんだよ」

いや現在も多いしそれが大多数なのですが、少しずつ、コント部分でも自分の人柄を出す漫才師も増えてきているように思います。

普段の自分がクズキャラであれば『クズがコンビニ店員だったら』でコント部分のボケを作ったり、チャラいキャラであれば『チャラいヤツが医者だったら』で作ったり・・。

キャラ漫才とまではいかなくとも、自分の素の部分を盛り込んだ漫才コントといった感じです。

『漫才は、自分たちコンビの事を知ってもらうための自己紹介であり、名刺である』

芸人なら必ずこの言葉を聞いたことはあると思います。

そしてTVを見据えているのならば、漫才中と平場のキャラが一緒というのは非常に強いメリットとなります。
自己紹介と、TVでの自分の取扱説明書を、漫才を通して解説できるからです。

よりTVを意識した漫才の進化が、現在進行形で行われています。

【主な漫才コントのM-1・THE MANZAIチャンピオン】
・フットボールアワー
・アンタッチャブル
・サンドウィッチマン
・NONSTYLE
・パンクブーブー..etc

芸人が漫才を作る時の特徴の出し方

先ほど挙げたしゃべくり漫才・漫才コントをベースにしながら、売れてる芸人は、ありとあらゆる方法で特徴を出しています。
こちらではざっくりとその特徴の出し方についてご紹介します。

あくまでざっくりと。おまえら何なんだ??って分類不能の芸人もいるので。(笑)

キャラ漫才

ネタをするどちらか片方、もしくは両方にキャラクターをつけて漫才を行うスタイルです。

以前はボケに強烈なキャラクターをつけて、

ボケ:「(相方を指して)ヘンなヤツ連れてきてすいません」
ツッコミ:「いやおまえだよ!」

というツカミから入るキャラ漫才師がよくいました。

しかし。最近ではぺこぱのようにツッコミの方にキャラをつけたり、EXITやすゑひろがりずなどのようにボケ・ツッコミ両方にキャラをつけたりと、更なる進化を遂げているスタイルです。

また、迷走しだした芸人が手を出すのもこのスタイルです。
何年かに1度、しばらく会っていない芸人が猛烈なキャラ変をしている・・これは結構あるあるです。(笑)

ちなみにキャラ漫才は当たり外れが激しいイメージがあり、キャラ変した同期が、見るも無残にスベり倒している姿もあるあるです。

【主なキャラ漫才師】
・オードリー
・マヂカルラブリー
・EXIT
・すゑひろがりず…etc

システム型漫才

テーマこそ変わるものの、漫才のスタイルが決まっている漫才です。

例えばナイツの「ヤホー漫才」は
【ボケが何かを説明してくるんだけど、ずっと言い間違えをする】
というシステムが全てのネタに反映されます。

『ハード(パッケージ)は変えず、ソフト(テーマ)を変える』というスタイルをとる漫才師です。

このようなシステム型漫才をする漫才師は、ネタ中何かしらお決まりのフレーズを入れ込み、全漫才の形を一律に整える事が多いのも特徴です。(※「ヤホーで調べてきました」など)

またこのスタイルは、ボケをキャラクターや人間性に頼る必要が少ないため、特筆すべきものをもっていない若手芸人の多くは、何らかのシステムを編み出すべくネタ帳に向かっています。

【主なシステム型漫才師】
・ナイツ
・笑い飯
・ミルクボーイ
・ブラックマヨネーズ…etc

シュール系漫才

独特の世界観を作り出し、コアなファンを獲得するのがシュール系漫才です。

養成所入学時代に憧れる芸人も多いシュール系ですが、実際TVレベルで見かける事はほとんどありません。

ほとんど生き残りが出ないほど、この漫才は非常に作る事が困難で、センス・才能・世界観を実現できるキャラクターが必要になります。

形だけシュール系漫才を作ろうと思ったら簡単です。
通常の漫才がボケの後、ツッコミでそのボケを否定をする事に対し、シュール系漫才は肯定をしてあげれば良いのです。

ネタをシュールにするしないはボケ側ではなく、ツッコミ側のスタンスによって決まるといっていいでしょう。

<通常の漫才>
「うちのお父さんラクダなんだ」
「なんでだよ!」

ボケとしてのクオリティは置いといて、通常の漫才は非常識なボケに対し、ツッコミが常識的立場からそれを否定します。

これがシュール系漫才だとこうなります。

<シュール系漫才>
「うちのお父さんラクダなんだ」
「えっ、おまえのお父さんラクダなの。飼育が大変じゃない?」

本来常識的な立場であるツッコミが「お父さんがラクダである」という非常識を受け入れ肯定します。

その後、ボケ側が

「そうそう、だから飼育するには注意点が3つあるんだ。
まず1つ目が・・」

とボケを展開していきます。

そうする事で双方非常識な世界観でしゃべりを展開することになり、他の漫才師と一味違うシュールな漫才を作れます。

(※ちなみにかなり余談ですが、最近はそこまで露骨な肯定ではなく

「うちのお父さんラクダなんだ」
「えっ、お父さんラクダ??嘘でしょ??ほんとに??」

という「ボケを肯定しないが、否定もしない、けど相手の言ってる事を信じる気持ちが強い」くらいの

・非常識なボケを言われた時のお客さんと同じリアクションをとり、お客さんの共感を得る
・しかし、非常識も受け入れている

というツッコミのスタンスが新勢力として出てきてます。

シュール系漫才は、ツッコミ側が非常識を否定せず肯定した瞬間、共感が得られず、お客さんが離れる事も多いので、結構いいとこ取りのスタンスですね。)

シュール系漫才の難しさ

では、なぜシュール系漫才を作るのが難しいかというと、その世界観を笑いに変えるのが非常に難しいからです。

野球で例えると分かりやすいと思います。
みなさんご存知の通り、野球で飛距離がでる理屈は以下の通りです。

・ピッチャーが投げた球を(球の速度は早ければ早い方がいい)
・バッターがバットで打って(バットのスイングスピードは早ければ早い方がいい)
・その強い反発力で飛ばす

このピッチャーの投げる球がボケで、バッターの振るバットがツッコミです。
先ほどの例えでいうと通常の漫才はこんな感じです。
・ボケ側が言ったものすごい非常識なボケを
・ツッコミが凄まじい強さで否定し
・その強い反発力で笑いにする

「ボケに対しての否定」というのは、野球でいうと飛んできた球を打ち返すように反発力を生みます。

しかしシュール系漫才のように肯定していしまうと反発力が生まれません。結果、ほぼほぼボケの力や、ツッコミのワードセンスの力のみで笑いを取り続けなければならないのです。

そしてその上で「ガンガンボケてガンガンツッコむ」のスタイルの漫才師に、笑いで上をいかなければならないのです。
このスタイルを貫くというのは、並大抵の事ではないのです。

【主なシュール系漫才師】
・ボイズンガールバンド…etc

ギャグ漫才

文字通りギャグが中心となる漫才です。
主にボケがギャグとなり、ツッコミがそれをさばく形をとっています。

【主なギャグ漫才師】
・流れ星
・トレンディエンジェル…etc

その他特徴のつけ方

・セリフの分配を偏らせて片方が圧倒的にしゃべる
・声が妙に高い
・逆に異常に低い
・めっちゃ叩く
・超早口でしゃべる
・逆にしゃべりが鬼遅い
・兄弟で漫才をやってる
・◯◯県出身の2人で方言をベースに漫才をやってる..etc

もっともっとありますが、割愛します。(笑)

まとめ

今回は漫才の種類をざっくりとお話ししました。
何となくぼくが勝手にカテゴライズしているものですが、漫才の種類やその特徴をつかむ手助けになれば幸いです。

ただ漫才というのはコンビ双方の相性が非常に重要です。

コンビ解散して、新コンビに結成した時、スタイルが全然違うという事も十分にある世界です。

実際どの漫才をするか考える時、最も重要なのは、相方への理解を深める事だと思います。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。