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何だか怪しい?若手お笑い芸人が近づいてはいけない人々とは【現役芸人が解説】

連載
公開日:2023年6月8日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

今回のコラムでは、若手芸人が近づいてはいけない人々についてご紹介させて頂く。

現在、芸人をやってる人間のほとんどが、一度はこれらの人種の被害に遭い、無駄な時間と無駄な出費を経験している。

もし今後芸人を志される方がいるのであれば、これから紹介する人種には近づかない事をお勧めする。

是非、ご一読頂きたい。



結局誰かは分からない!怪しい放送作家さん!

なんか凄そうで凄くない、得体の知れない放送作家さん。

基本的に正体不明。

彼らは過去仕事をした国民的バラエティ番組や、大芸人の名前を自分の名刺に羅列する。

以下、売れてない芸人のぼくにとって実体験の範疇を超える情報があるため、又聞きの話も多分に含まれ申し訳ないが、この得体の知れない放送作家さんをご紹介する。

スーパーバラエティ番組に関わったからと言って、その放送作家さんが偉いという訳ではない。らしい。

制作現場にプロデューサー、ディレクター、AD、最近入った新人ADなどとランクがあるように、作家さんのランクもピンキリ。らしい。

例えば、使いっ走りで出演タレントのお弁当を買いに行ってる人でもその番組に携わったと言え、実際どれだけその番組の主軸となり活躍したかは、「その番組制作に関わった」というだけでは誰にも分からないという事。

しかし、子供の頃から知ってるスーパーバラエティ番組や超BIGタレントの名前を羅列されると、右も左も分からない若手芸人の目には、この汚いおじさんがどんどんオーラを放って見える。

どこか華がある。カッコいい。

ちなみにぼくも騙されていたその一人。
今ではSNSで、結局どんな人間なのか生態を調べられるが、ぼくらの時代はほとんどの芸人が騙された経験を持つ。

彼らは売れていない若手芸人にさほど愛情を持っておらず、「金」と「労働力」としてしか見ていない場合が多い。

怪しい作家さんの多くは会場を借り、ライブを開く。

そのライブへの出演を若手芸人から募る訳だが、「芸人の成長の為」という気持ちは少なく、単なる小遣い稼ぎと可愛い女性芸人にヨイショしてもらうために芸人を招集する。

物言わぬ若手芸人は非常に便利で、エントリーフィーを支払い、主催となる作家さんにペコペコし、ある程度劣悪な環境下においても不平不満も垂れ流さない。

時に労働力として、ライブの手伝いをさせ長時間拘束しても、それも「勉強」と称して無給で良し。

ちなみに彼らの半分くらいは、本気で悪気はない。
彼らにとってこれは当たり前で、これらの経験は芸人の役に立っていると思い込む。

そして、芸人はある程度芸歴を重ねた頃、「あのときの作家さんが言ってた事って、全部違ったよな」と、この経験をつまみに同期と酒を飲む。


芸人と類似!?超若手放送作家さん!

作家さんが続いてしまい申し訳ないが、ぼく自身は作家さんに何の恨みもない事を先に言っておく。

あくまで若手芸人が痛い目にあうのが、職として関わりの深いこのジャンルの人が多いというだけ。

ひとえに芸人と言ってもその実力はピンキリなように、超若手放送作家さんの中にも、「ただのお笑い好き」の範疇を超えない作家さんも数多く生息する。

誤解しないで欲しいのは、「超若手放送作家さん」が悪いのではない。
「勉強不足で、トガりにトガっている超若手放送作家さん」がヤバいのだ。

彼らは、小劇場で定期的に行われているライブに、企画構成を担当する座付き作家さんとして参加する場合が多い。そしてなぜか、結構上からくる。

芸人は舞台でネタを行った後、何となく作家さんにネタのダメ出しを聞きにいく。

そしてこの時が要注意。
芸人が芸人を志す際と同じように、作家さんが作家さんを志す際の動機は「おれはおもしろい」。

結果、実力は無いがトガりまくってる若手芸人と同様、実力が無い超若手の放送作家さんほどトガりまくっている場合が多い。

そうすると偉そうにされた上にアドバイスを信じてネタを修正したら、完全な改悪になるケースが多数。

しかし、その際も「演じ方が悪い」「おまえたちが◯◯さんだったらウケてた」と、自分の意見は正しい前提で、更にネタのダメ出しが始まる。

結果的に、何度話しても彼のアドバイスは、ネタの方向性をかき乱すだけとなるケースが多い。

彼らのほとんどはネタを作った事はなく、下手したら普段TV番組でしかネタを見ない。

「ネタを見る・作る」といった母数が圧倒的に少ない彼らの意見は「このコンビに合う、ネタのブラッシュアップを目的とした意見」ではなく、「お笑い好きが、ライブアンケートに書く個人の意見」に近い。

別にそれ自体は良いのだが、若手特有のトガりと合わさり、「絶対的に正しい意見」として叱ってくるのがよろしくない。

参考にした上で、ネタに取り入れないと、「こないだ言った事やらないの?」とカラんで来たりするのもあるある。

ちなみにこのような若手作家さんと仲良くなって飲んだ時、なぜそんなに自分の意見に自信があるのか、一度聞いてみた事がある。

その際彼が語ったのは、以前先輩から「自信が無い時もあるだろうけど、不安そうにしてると芸人もアドバイスを信じないから、絶対に自信たっぷりに話せ」とアドバイスをもらったとの事。

いやダメ出しをされる芸人からすると話し方より意見の正誤が重要で、更に言えば間違った情報を自信たっぷりに信じさせちゃダメだろという根本的な問題が発生して、その時の飲み会は幕を閉じた。

何が言いたいかというと、若手の作家さんだとそういうレベルの作家さんも多く存在するから、意見を聞く作家さんは選んだ方が良いという事。

逆にいうと優秀な作家さんは、若手でも超優秀。

その辺りも芸人と似てる気がする。

おれ昔、音楽やってました・・なぜか説教してくるおじさん!

自分の現役時代を振り返り、君らのためにと芸人に的外れな説教を繰り返すおじさん。

口癖は「おれは、お笑いの事は分からなけどー・・」。

前置きしながら本当に分かっておらず、こちらが遠回しにそのアドバイスが芸人には当てはまらない事を伝えても、なぜか自身の意見を曲げずに、含蓄深い自分の意見を強制する。

恐ろしい事に、彼らは本気でこれが芸人のためになると信じている。
アドバイス自体は有り難い事なのだが、押し付けてくる事が問題。

しかし、彼らは頑なに自身のバトンを次の世代に渡そうと、無理矢理手に握らせる。

断ると不機嫌になり、現場の空気もあまり読まない。「大人としての振る舞いをしてますよ」という体裁だけ整えて、不機嫌な自分を演出する神聖かまってちゃん。

ちなみに、こういう人がバイト先の上司だったりするとかなりややこしい。
飲み会の度に捕まり、自分の現役時代に得た経験を大きな声で与えてくれる。

いつの間にかSNSもチェックされており、「あの投稿は君のためにならない」と説教する。

彼らの意見の根拠は、「現役時代、先輩に教えてもらった」というレベルに留まり、多くのファンの心を掴んだ事もない。

そして「おれは、お笑いは分からないけどー・・」という通り、ほとんどお笑い番組を見た事もない。

彼らのアドバイスは一社会人がしたらタブーな事に近かったりし、これが続くと芸人はそのバイト先からの転職を考える。

付き合うかどうかはあなた次第!質の悪い社長!

社長という職業柄、直接会うと非常に丁寧に接してくれるが、その実「売れていない若手芸人」という商品に対して、至極ドライな評価を下す。

ラインの返信は明らかに後回しにされた時間をおいて返ってくるし、時折依頼される営業の条件もかなり厳しい。

結果、「しばらく付き合ってみたけど、上手く使われただけ」というケースが多い。

しかし、この手の社長を避けるかどうかは、個人個人の感覚による。実際こういう扱いをされるのも、売れてない芸人サイドが全て悪い。

それを割り切って、今後の人脈の為に付き合うのも一つの手。実際懐に飛び込み、更なる付き合いまで持っていく芸人も多い。

ただ、そういう芸人も社長の事を「人脈」と呼びながら、その実社長付き合いをかなりドライに見ているケースが多い。

「仕事とギャラをくれるうちは付き合うが、仕事が無くなれば切れば良い」・・真顔でこう言い切る彼らの目は、底の見えない暗さがある。

ある意味彼らも個人事業主という一人の社長であり、一つの営業として社長付き合いを行なっているのだ。

ちなみにこういう芸人は、簡単に営業を受けられる事務所無所属のフリー芸人に多いイメージ。

余談だが、現実には「電車で席を譲ったおばあちゃんが、会社の会長として現れた」というドラマのような展開が無いように、「知り合った社長が良い人で、全力で自分を応援してくれるようになる」という物語はあまり期待しない方が良い。

ちなみに「あまり期待しない方が良い」という、少し濁した表現をしたのは、実はちょっとあるから。そこを掴むかどうかも、芸人としての運と腕。多分。


まとめ

今回は、若手芸人が近づいてはいけない人々についてご紹介させて頂いた。

これは芸人にとってはあるあるであり、ほとんどの芸人が上述したような人種に出会い、痛手を負った経験を持つ。

しかし、その痛手もまた経験で今日も舞台でその話をし、笑いを取っている。

是非みなさんも、地雷は避けつつ、適度な痛手を負って欲しい。

このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。
ご一読、ありがとうございました。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。