powered by 賃料6万円以下専門店「部屋まる」

現役ピン芸人が語る!ピン芸人のメリット・デメリット、コンビとの違い

連載
公開日:2021年4月26日 更新日:2021年5月27日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

なさんこんにちは。
芸歴10年目。王様ゲームの命令で合コン途中で帰宅させられた、吉松ゴリラです。

今回は、ピン芸人のメリット・デメリットについてお話しします。

冒頭で言う事でもないですが、ピン芸人にほとんどメリットはないと思いますw

特にネタという部分にフォーカスを当てると、ほとんどデメリットしかないと言ってもいいでしょう。

しかし当然世の中には、「おれはバチバチにピン芸人の方が向いてる!」という人もいるので、今回のコラムで、自分がどちら向きか参考にしていただければと思います。



ピン芸人のメリット

ピン芸人のメリットは、なんと言っても「やりたい事が全部、すぐにできる」の一言につきます。

一般の方がなんとなく「芸人みたいに、ネタをしてみたい!」と思っても、漫才なんかをしようと思ったら、台本を書くよりも先に、相方探しをしなくてはなりません。

またネタとは全く関係なく、相方との人間関係で悩みを抱える事も多いでしょう。

その点、全てを自分一人でこなす事のできるピン芸人であればこのようなメリットがあります。

【コンビと比較したピン芸人のメリット】
・自分の好きなネタができる
・人間関係でのわずらわしさがない
・ネタに対してフットワークが軽い
・言い訳の排除 …etc

自分の好きなネタができる

コンビの場合、ツッコミのワードやボケ方1つとってもお互いの意見がブツかります。

世の中に「全く同じ感性」という人間は存在しないので、お互いにおもしろいと思っているものが違うと、ネタの展開やお互いのキャラクター設定に対しても、意見がまとまらなかったりします。

特にコンビ組みたての時期は、コンビとしての方向も定まっていないため、結構こんがらがったりします。

またせっかく新ネタを書いても、相方の「おもしろいと思えない、やりたくない」の一言でボツになる場合もあります。

人間関係でのわずらわしさがない

「幼なじみで組んでます」パターンのコンビ以外だと、人間関係ができあがっていない、ほぼ初対面の状態でネタのケンカからスタートします。

それこそ先程の「このボケがいい」「いや、こうボケた方がいい」なんかでは何度もブツかります。

台本を真ん中にハサんで、1つのボケに対し1時間経ってもお互い譲らないなんて事もしばしばです。

お互い真剣だからこそですが、この積み重ねで仲悪くなる場合が多いです。

ネタに対してフットワークが軽い

新ネタができた時やネタの修正を行なった時、コンビが一度ネタ合わせの日取りを決めて集まらなければならないのに対して、即その場で稽古ができます。

即レベルアップしたいストイックな人にとっては、結構なメリットです。

言い訳の排除

コンビ芸人あるあるで、うまくいかなかった場合、それを相方のせいにしがちです(笑)。

ピン芸人は良くも悪くも全て自分の責任のため、言い訳をせずにお笑いに対して真剣に向き合えます。

ピン芸人のデメリット

ピン芸人のデメリットの多くは、ネタに反映されます。

お笑い好きな方でも、「普段めっちゃピン芸人にスポットを当てて見てるんだ!」なんて方は稀でしょう。

パッと見るとピンネタとコンビネタはやってる事はほぼ一緒に見えますが、ここには大きな違いがあります。

【ピン芸人:ネタのデメリット】
・舞台上にボケ、ツッコミのどちらかしかいない
・お笑いのパターンが制限される
・自分にあったネタ選びが重要

舞台上にボケ、ツッコミのどちらかしかいない


当たり前ですが舞台上に1人で立つのがピン芸人、基本ボケ・もしくはツッコミのどちらか一方しかできません。

ボケ・ツッコミしかいない場合の弊害は、笑いどころが非常に伝わりにくい事です。

笑いどころが非常に伝わりにくい

これが、ピン芸人がネタを作る時にぶち当たる最初の壁です。
力のないコンビは舞台で鬼スベりしますが、スベる事すらできないのがピン芸人です。

ツッコミがないという事はボケっぱなしなので、ボケた瞬間にお客さんが、「それはおかしいだろ!」と心でツッコむ事ができないと笑いどころになりません。

それがお笑いライブに初めてくるようなJKであれ、時代背景が全く違うご年配の方であれ、物心つきはじめの子供であれです。

ウケないコンビの場合、ツッコミが「なんでだよ!」とツッコむのでその瞬間、「あっ、ここ笑いどころなんだ・・いやおもしろくなっ!」とスベる事ができますが、ウケないピンがボケた時は「・・??・・あっ今のボケだった??」という理解までのタイムラグが発生します。

そのタイムラグは1秒に満たない時間ですが、笑いどころを逃すには十分な時間で、スベってもない、ウケてもない、ただただ舞台の上の独り言を聞いているかのような、カラ寒い空気が流れ続けます。

ちなみにツッコミ系のピン芸人は、最低限スベる事ができます。これはツッコんだとき、「ここが笑いどころですよ!」と提示できるからですね。

お笑いのパターンが制限される

相方がいないので自分でフって、自分でオトさなければなりません。これによりかなりのお笑いパターンが制限されます。

おもしろいネタのアイディアはあるけど、ピンでできないからやれない・・なんて話はザラです。
ってかピン芸人は、全員そんなボツネタを持っているでしょう。

ピンができない一例をあげると、コンビ芸人の場合、企業イベントに呼ばれるとなんとなくサービスでその企業用の漫才を作っていったりする事があります。

そういう場合のパッケージとしてこんなのがあります。

【企業用漫才パッケージ】
ボケ:今日は呼んでもらってありがとうございます!ぼく普段から御社の栄養ドリンクはよく飲ませてもらってるんですよ!
味もいいし、すぐ元気になるし・・おまえ知ってる?漢方エキスが108つも入ってるんだよ!みんなも飲みましょうね、◯◯(類似他社商品)!
ツッコミ:△△(自社商品)だよ!

パッケージとして、自社製品の情報をフり、ピンポイントで肝心な所をボケが間違い、ツッコミが正すというシンプルなものです。
このまま効能やターゲット層など、製品のパンフレットに沿って比較的簡単にネタを作る事ができます。

しかし、ピンの場合ツッコミがいないので、こういう「自分が間違って、他の人に訂正してもらう」というパターンは使う事ができません。

自分にあったネタ選びが重要

めっちゃ簡単にいうと、自分がブサイクならずっと舞台にはブサイクしかいないって事ですw。

これで「かっこいい男」が前提となってるネタをやっても、全く入ってきません。

どれほどそのネタがやりたくても、どれほど良い台本を作っても、かっこいい男がやったらR-1チャンピオンになれる位おもしろいネタでも、自分がやったらウケません。

ちょっとこの例は極端でしたが、コンビだと横に相方がいるので、自分の雰囲気を緩和できたりします。

ブサイクの隣にイケメンの相方がいて視聴に耐えるビジュアルに収まったり、トガってる奴の隣にほんわかした相方がいてコンビの雰囲気を丸くして見やすくしたり・・

逆にこういう真反対な相方を置く事で、ネタになると互いを引き立てあう事も可能です。

しかし、ピンの場合はやはり素材となる自分しか舞台の上にはいません。コンビ以上に、「自分に何ができるか」が重要になります。

ここで強調したいのは「何かができる」という事です。演技なり特技なり、「何か」ができなければなりません。

平場だと「何もできない」が武器になる事もあります。一瞬流行った、ポンコツキャラとかもそのたぐいですね。

しかしあれは、自分の周りにいる人間が相方となり、ポンコツを引き立てる動きをするから成立しているものです。

「何もできない」ヤツが1人で舞台に上がりネタをすると、本当に何もできないまま終わります。

もし「何もできない」を武器にしたいのであれば、コンビを組んだ方が無難だと思います。相方がイジれるので。

ピン芸人のメリット・デメリットまとめ

ピン芸人は文字通りピン、1人で勝負をする芸人です。

ネタでは1人でどれだけコンビ以上におもしろいネタを作れるか、平場では1人でどれだけ周りを巻き込めるか。

コンビが分担している役割も全て自分でこなさなければなりません。

しかし逆にいえばおしりを叩いてくる相方がいない分、サボろうと思えばどれだけでもサボれます。

ピンで売れてる芸人はストイックな人が多く、お笑いに向き合いすぎるくらい向き合っている人が多いため、もし自分に甘い人であれば、あまりおすすめはできません。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。