powered by 賃料6万円以下専門店「部屋まる」

お笑い芸人に特技は必要?メリットや考える時の注意点【現役芸人が解説】

連載
公開日:2021年9月22日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

みなさんこんにちは。
芸歴10年目。外れた差し歯の代わりに前歯に消しゴムをつめているため、「一瞬で前歯を消せる」という特技を持つ、吉松ゴリラです。

今回は、芸人に特技は必要かどうかについてお話しさせていただきます。

結論から言うと、芸人の特技は「なくても良いけど、あった方が100%良い」です。
もう少し詳しく言うと、「特技の練習なんてしてる暇あったら、新ネタ作ってM-1優勝したいんだ!」くらいネタにかけている芸人なら「なくても良いけど・・」という感じです。

事務所に入れば「特技を考えろ!」というのはめっちゃ言われます。
基本的にはほとんどの芸人が、新ネタを作りながら同時並行で新しい特技の事も考えています。

ではなぜ、そんなに特技が重要視されるのでしょうか。

芸人が特技を習得するメリット

なぜ事務所が所属芸人に特技の習得を勧めるかというと、当然大きなメリットがあるからです。

【芸人が特技を習得するメリット】
・TVに露出するキッカケになる
・SNSなどでの応用もきく

TVに露出するキッカケになる

売れていない若手芸人たちが売れるには、1度注目され、スポットライトを浴びる必要があります。

スポットライトを浴びている期間でTV番組を一周し、そこで残した結果でその後ふるいにかけられます。
この期間が、よく芸人がいう「チャンスがきた」という時期ですね。

ただ、そのチャンスの時期は待っていては絶対にこず、そのためにはかなりの努力が必要になります。
運の要素を排除してチャンスを掴みたいのであれば、最低でもM-1決勝に残るレベルまでいかなくてはならないと思います。

下手をすれば15年かかる、かなり険しき道ですね。

特技はTV番組に呼ばれるショートカットルート

特技は、「見た事ない芸」だったり「バカバカしすぎる」という、ある意味大道芸的なジャンルで呼ばれます。
なので、コンビ間の掛け合いや演技力などがほぼ不要のため、芸歴による差がでづらく、実力で劣る若手芸人にもチャンスがあります。

芸人的にはハマれば大きいですし、TV出演が単発で終わったとしても、別でまた特技を考えればよいわけですから、やるだけ得です。
TV番組的にも、特技は短い時間でたくさんの芸人をバンバン出せるので「無名芸人に時間をさかなくていい」というメリットがあります。

要は、売れていない芸人は当然視聴率を稼げる数字を0.001%も持っていないので、TV的にはザッピングに耐えられないこんなヤツらを写す時間は1秒でも削りたいのです(笑)。

そんな中、漫才やコントをしてもらうとなると最低でも1分は必要ですが、特技は1組30秒程度ですみ、最悪スベっても、すぐひな壇に座って笑ってるたくさんの芸能人にスポットを当てられるので、リスクも少ないです。

双方にメリットがある形ですね。

SNSなどでの応用もきく

芸人という職業とYouTube・SNSは非常に親和性が高く、SNSで応用が効く特技を持っていると大変便利です。
また、1日何百円で生活をしている若手芸人にとって、少しでもお金に変わるYouTubeなどはとても魅力的です。

【SNSで応用できる特技をもっている場合のメリット】
・自身の特技を広告する動画を作り続けられる
・収入にもつながる
・バズれば、TVに逆輸入で呼んでもらえる
・そうすればまた、動画再生回数があがる …etc

特技の具体例とTVオーディションでよく求められる特技

それでは具体的に、どんな特技が必要なのでしょうか。
ここでは芸人の特技の具体例と、TVオーディションでよく求められている特技をご紹介します。

【芸人の特技例】
・たけだバーベキューさん:手軽に作れて美味しい、オリジナルBBQ料理を紹介できる
・ラバーガールさん:単語をもらったら、すぐにナゾナゾっぽい事がいえる
・GAGさん:細い単語だけで、しりとりができる
・インポッシブルさん:こち亀の巻数をいってもらえれば、その巻で両津勘吉がとっているポーズをとれる
・タピオさん:おなかでマシュマロを放り上げて、口でキャッチできる
・イノシマ全治6ヶ月さん:南京錠を回して、回っている南京錠に鍵を刺せる
・50音系:50音どの文字を言われても、その文字から始まる◯◯が言える ..etc

芸人の特技例を見てみると、特技には下記2種類に分類できる事が分かります(ぼくが勝手に分類してるだけですけどw)。

【特技の分類】
・知識・技術系
・ネタ系

知識・技術系の特技

以前少し紹介した、ぼくが「Only.1芸人」と呼んでいる芸人がこちらに該当します。
(※ご興味ある方は「若手お笑い芸人必見!芸歴10年が語る売れる芸人に共通する3つの特徴」をご覧ください。)

簡単にいうと、何か1つのジャンルにめっちゃ詳しい芸人です。
その専門的な知識・技術が、TVに呼ばれる商品となります。

目安はそのジャンルについて本を1冊かける位。
プロまでではなくとも、素人をぶっちぎるレベルが必要です。

先程の例だと、たけだバーベキューさんがこちらに該当します。
このジャンルでよく来るオーディションはこちらです。

【よくTVオーディションで必要とされる特技】
・料理がうまい
・めっちゃモテる

料理がうまい

ただ「料理がうまい」だけでも一芸になりますが、実は料理がうまい芸人は結構います。若手芸人のバイト先といえば、飲食が一番多いので。
そして料理がうまい芸人には売れてる先輩芸人も数多くいて、笑い優先であれば、当然そちらが使われます。

なのでポイントは、売れてない芸人が呼ばれる場合、その価値は「笑いを取れる」ではなく「その料理自体」にあるという事です。
「ただ料理がうまい」だけではなく、TV的な魅力のある「特徴のある珍しい料理」や「オリジナル料理」が作れるとなお良いです。

「歴史的王族が食べていた!おもてなし王宮料理」や「家庭でできる!お手軽時短料理」や「安くておいしい!節約料理」・・など、何かしら特徴付けをすると、オーディションの場に集まるライバルに頭1つ差をつける事ができます。

めっちゃモテる

男女問わず、誰もが興味あるジャンルなので、当然引きがあります。

ただこういうテーマは必然ゲス話になる場合が多いので(笑)、呼ばれる番組の時間帯が下がったり、地上波ではなく過激発言に寛容なネット番組になったりするかもしれません。

自身のモテテクニックの紹介や、体験談が求められます。
また、内容が過激になればなるほど、芸人としての好感度は下がりやすいため、ある程度覚悟が必要です。

ネタ系の特技

芸人がTVでやっているほとんどの特技がこちらに当たります。
ネタ系の特技は、「こんなものが求められている」というのはなく、「とにかくおもしろければ良い」です。

ただ、TV的な魅力という事を考えると、地味なものよりは派手なものの方が良いかと思います。

ちなみにネタ系の特技は【「すごい」けど「笑える」】という部分が大事です。
基本的にどちらが欠けても、特技にはなりません。

特技を考える時の注意点

特技を考える時、注意すべき点がいくつかあります。
割と芸歴浅めの時はやりがちなミスなので、ここでポイントをおさえておくと、無駄な時間を費やさずにすみます。

【特技を考える時の注意点】
・芸人がやるべき特技か考える
・「すごいだけ」の特技は避ける
・「できない系」は避ける

芸人がやるべき特技か考える

めっちゃ分かりやすく言うと、アイドルさんや俳優さんがやった方がいい特技は避けようという事です。

基本的に若手芸人がやっても、オーディションに通りません。
例えば変顔オチの特技などは、よっぽどウケた実績のある変顔でない限り避けましょう。

可愛い顔のアイドルさんが鼻フックをして、ブス顔をさらしている時代です。
その美醜のギャップを遥かに超えるレベルでないと、売れてない芸人の変顔は必要ありません。

練習する前に、考えた特技に商品価値があるかどうかの視点で一考してみましょう。

「すごいだけ」の特技は避ける

芸人の特技には、基本的に「笑い」が必要です。

TVで時々「ピアノがめっちゃうまく弾ける!」など、すごいだけ系の特技が紹介されたりするので分かりにくいと思いますが、基本的にこの種類の特技は、売れていない芸人には求められていません。

「すごいだけ」系の特技は、やってる人が売れてる人であればその人の知らない一面が知れるという商品価値が出るのですが、売れてない芸人がやったところで、何の価値もありません。

また、仮に若手芸人がよばれるとしても「若手芸人No.1ピアニストを決める!」など、かなりピンポイントな番組です。

つまり、求められる場合もあるでしょうけど、出られる番組が激減します。
結局、「努力と結果がつりあってねぇぜ!」となる可能性があるので、避けた方がいいと思います。

この例だと「ピアノがうまい」という事自体は立派な特技なので、笑いのエッセンスを加えて、需要のあるTV用特技を作っていきましょう。

▼参考動画
緊張と緩和のハーモニー!?【芸人動画図鑑】【いぬ】

「できない系」は避ける

TVを見ていて時々あるのが、「◯◯できます!」といって、実際はできなくて笑いをとるパターンの特技です。

これも基本的に売れている人であれば商品価値があるのですが、売れてない芸人には求められていません。
売れていない芸人に求められるのは、何かが「できる」特技になります。

ライブなどでめっちゃウケた実績のあるものならイケるかもしれませんが、主軸にはしない方が無難です。

まとめ

戦略的に特技を習得するなら、YouTube・SNSでの応用がきく知識・技術系が良いと思います。

今ではメジャーになりすぎましたし、特技というと少しヘンですが、知識系では、都市伝説や心霊系に詳しいというジャンルもあります。
こちらも根強い固定ファンがいて、YouTubeでも安定した再生回数が見込めるジャンルです。

逆に「これなら何時間でも語れる!」といった、自分の大好きなジャンルを深めていくのも良いと思います。

大好きなジャンルであれば知識のストックはどんどん増えていくと思うので、商品として出せるパッケージさえ考えれば、1ブレイク見込めるかもしれません。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。