不仲?方向性の違い?お笑い芸人が解散する時の理由とその背景を解説
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
芸人の解散には、様々な理由がその背景にある。今回はそんな芸人の解散についてお話しさせて頂く。
今回のコラムを読んで頂ければ、
・どんなコンビが「方向性の違い」で解散するのか?
・どんなコンビが「不仲」で解散するのか?
・どんなコンビが「結果が出ない」で解散するのか?
・どんなコンビが「引退」で解散するのか?
を、ご理解頂ける。
是非、最後までご一読頂きたい。
目次
おれとおまえの道は違う!方向性の違いで解散する人々!
芸歴3年を超える頃、全芸人がこの解散理由に「おまえらバンドか!」のツッコミを、完璧な精度と間で言えるようになる。
それほどメジャーで一般的な解散理由。
彼らは互いが啓蒙する笑いと感性の違いから、「おれが本当にやりたい事はこれじゃねぇんだ・・!」と、ビジネス漫画第一話の主人公のように苦悩する。
そのフラストレーションが最高潮に高まった時、やはり第一話の主人公のように相手に辞表を叩きつける。
しかし、その後の芸人人生で、漫画のように物語が全く動き出さないのが特徴。
このタイプは、一見したお互いの能力に惹かれあってコンビを組んだケースに多い。
いわば恋愛においての一目惚れに近く、熱するのも早いが、イメージと違うと冷めるのも早い。
逆に古くからの友人・幼馴染のコンビにはあまり見掛けられない。
ちなみにコンビを目指す芸人にとって、解散後のピンとしての活動時間は、あまり芸人として積み立てられるものがない。
やや専門的な話になるが、コンビとピンのネタ・トークの作り方は全く別物。
ボクシングにおいての利き腕を変える程度には違い、結構な訓練が必要な上、変にクセがついてしまうとコンビに戻った時にちょっと苦労する。
なのでコンビ解散後ピンになった時、「いやおれがやりたい事はこれでもねぇ!」となり、相方探しに劇場をウロつく。
その彷徨う期間が長ければ長いほど一目惚れに陥りやすくなり、コンビを組んで解散を繰り返す。
ちなみに最近はそんな一目惚れ解散を防ぐ為、お試しでユニット期間を置くのが通例。
おまえとはやってられんわ!不仲で解散をする人々!
このタイプは「芸人」を「ビジネス」と捉え、「相方」を「ビジネスパートナー」として捉えているタイプに多い。
なのでやはり、古くからの友人・幼馴染のコンビには、ほとんど見掛けられない。
彼らは相方を「ビジネスパートナー」として見る為、その芸人の「能力」が欲しくてコンビを組む。
一見正しいジャッジにも聞こえるが、人間部分にさほど注目せずコンビを組む事が多い。
そしてそこが、不仲につながる。
お互いの時間感覚やバイトの優先度というプライベートな事から、笑いへの熱量、それこそ方向性が揃っていないケースも多い。
結果が出れば不仲でも継続をしていくが、結果すら出なければ「なぜおれはあいつと一緒にいるんだ??」と、毎晩寝る前に自己問答を繰り返すのが通例。
コンビ組み立ての最初1ヶ月はお互いの事を褒め合い妙にベタベタするが、3ヶ月目に差し掛かる頃には楽屋でしゃべっている所を見なくなる。
そして飲みながら相方の愚痴が止まらなくなった頃、ささいな事で喧嘩をし、結果解散に至る。
以下では、このケースで不仲となる原因のほんの一例を紹介する。
芸人トラブルNo.1!遅刻
芸人トラブルの中で、最多を誇るモメ理由。
遅刻常習犯は、「遅刻 = クズ」「クズ = 芸人」と脆弱な三段論法から自身の遅刻を許容している場合が多い。
その為、表面上は謝罪しながらも同期との飲み会で「芸人だから遅刻くらいするだろ」「あいつは芸人のクセに細か過ぎる」と見事な開き直りを見せる。
当然、こんなおもしろい事を芸人が放っておく事はなく、その開き直り情報を光の速さで相方に届け、楽屋でモメさせて楽しむのが楽屋あるある。
また、芸人間には「遅刻した場合、遅刻理由でおもしろくボケれば不問にされる」という、なぜ不問にされるか分からない特殊ルールが存在する。
しかし通常、彼らは相方相手にボケる事もしない。
ただひたすらに遅刻だけするという社会不適合者を地で行き、相方がキれ、解散に至る原因を量産する。
ちなみに芸歴10年を超える芸人は、バイトという社会の矯正により遅刻癖が治っている場合が多い。
社会とは、偉大なのである。
この掛け合わせは絶対失敗する!ストイックタイプとバイトジャンキータイプ
以前こちらの記事【芸人の収入と支出を大解剖!若手お笑い芸人のお金事情とは】で少しご紹介したが、お笑いストイックタイプとバイトジャンキーの掛け合わせは非常に悪い。
お笑いストイックタイプは寝食を惜しんでネタを書き、祟りにあってんのかというくらい目の下にクマを作りながら、最後の力を振り絞りネタを相方にLINEで送る。
しかし、バイトジャンキーの優先順位、不動の一位は当然バイトの為、台本確認は後回し。
結果ネタ合わせの日に、相方の前で初めて台本を読み出す事も多い。
これをされたストイックタイプは、やっぱおまえ祟られてんだろいうくらい暴れ出す事が通例。
ここの温度差は非常に大きく、ストイックタイプ的にはブチギレレベルだがバイトジャンキー的には「そこまで怒らなくても」という程度。
そうしてモメにモメた後、次のライブでネタがスベるまでがワンセット。
そうして彼らは全人類納得の解散をする。
結果が出ずに解散する人々!
「結果が出ない」とは、裏返すと「結果が全て」というお笑い界の残酷なルールが垣間見える。
毎年賞レースの後に解散情報が多発し、その中には、かつて自分が「この人たちはいつかスターになる・・!」と感じ見ていた先輩芸人たちが含まれる。
超若手芸人の頃からその実力が認められ、華があり、ネタもトークも抜群におもしろい。
舞台ではガヤからMCから何でもこなし、コンビ間の掛け合いも良く、彼らを中心とした企画コーナーも作られる。
若手時代の自分に「いつか努力して、ああいう芸人になりたい!」と思わせた先輩芸人の解散報告を知る時は、嘔吐するような思いと共にSNSに躍る文字を見る。
芸人とは儚いからこそ美しく、儚いからこそ芸人を続けている人間は、それだけで全て尊いのだ。
ちなみにこの解散理由は、猿並みの努力しかしていないコンビも多く含まれる。
こいつらも、とりあえず芸人を続けているから尊い。
たぶん。
引退を理由に解散する人々!
引退の理由は芸人によって様々。
限られた席を争う殺し合いの螺旋に疲れたという芸人もいれば、家庭の事情でやむなしという芸人もいる。
売れない期間が長いと当然その身辺状況も変化する訳で、引退の数だけ様々な理由がそこにある。
ちなみにメジャーな引退理由の一つに、「芸人を始める前から、辞める時期を決めていた」というものがある。
夢追い人の芸人といえど、いつまでも夢を見てはいられない。
そいういう至極真っ当な考えで、夢を見る時期を決めている芸人は多い。
この線引きは年齢によってなされる事が多く、その線引きとなる年齢は大体「30才」か「35才」が多い。
芸人のほとんどは、20才前後で芸人の世界に飛び込んでくる。
そうすると芸人を10年やって、大体30才。
この「30才」という年齢は、芸歴と人生の節目となる年でもある。
なので、そのタイミングは人生の舵を切る年齢になりやすい。
ちなみに「35才」もほぼ同様。
最近は25才前後で芸人の世界に飛び込んでくる人間も多く、たった5年で売れるのは流石に厳しいと考えた人が、ギリギリ人生の軌道修正をできる年齢「35才」を指名する。
ちなみに40才を超えた芸人のほとんどは、辞め時を失いゾンビのように劇場を彷徨う。
これらの芸人は「これから就職したとしても、そこまで出世は見込めない・・というより、年齢的に就職先自体がない・・」という非常にネガティブなタイプと、マジで何も考えていない超ポジティブなタイプに分かれる。
恐らく双方共に、出ている結論は同じ。売れるか死ぬかの、デッドオアアライブ。
そしてそれが芸人だ。
まとめ
今回は芸人の解散理由についてお話しさせて頂いた。
一般的にネガティブに聞こえる「解散」だが、新しいコンビを組み直し、再度頂点を目指すというポジティブなものでもある。
コンビ解散の本質は「その”ボケ”とその”ツッコミ”の、”掛け合わせ”が悪かった」というものであり、互いの歯車があう相方を見つければ、再度頂点を目指す事は可能なのである。
このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。
ご一読、ありがとうございました。
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
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