芸歴10年のお笑い芸人が教える初めてのコントネタの作り方
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
みなさんこんにちは。
芸歴10年目。Tinderで全くいいねがつかない、吉松ゴリラです。
前回までに漫才の作り方を簡易ながらお話しさせて頂きました。今回からは、初めてコントを作る人向けのお話しさせて頂きます。
※漫才とコントの違いについては「漫才?コント?現役お笑い芸人が教える初めてのネタの作り方」をご参照ください。
目次
コントは漫才に比べて自由度が高い
漫才と違ってコントには『◯◯型コント』と広く認知されている種類はありません。
おそらく漫才に比べて表現する自由度が高すぎるので、分類する程スタイルに偏りがでないからだと思われます。
なんとなく各芸人が勝手に自分の感性で分類分けをしている感じです。
ただ初めてコントを作る場合、ネタがチグハグなものになってしまう事があります。
それはそのネタで、「どこのおもしろさを一番に見て欲しいか」がブレてしまうからです。
事前にある程度どんな種類のコントがあり、どこを強調すべきかを理解しておくことで、そのようなミスが防げます。
なのでなんとなく、ぼくの方で分類してみました。
以下、ご参照ください。
※コントに関しては説明を聞いても分かりにくいので、いくつか動画のリンクを貼っておきます。
※今回のコラムでは必要上先輩芸人様の名前が乱発されていますが、読みづらくなってしまうため、一部敬称略で書かせて頂いております。お会いした事のない先輩方が多いため大変申し訳ございません。お叱りがあれば即行直します。
日常系コント
明けましておめでとうございます!今年も東京03をよろしくお願いいたしします!! pic.twitter.com/fnnrnqDIJG
— 東京03飯塚 (@iizuka03) December 31, 2020
会社や居酒屋、ラーメン屋前の行列など、普段目にする日常をベースとしたコントです。
日常を舞台とするため、かなり演技力が必要なネタが多いのが特徴です。
余談ですが(本当に余談ですw)、先ほど分類分けされていないとお話ししたコントの世界において、この『日常系コント』という呼び名だけは割と定着しています。
なぜなら若手コント職人たちほぼ全てが憧れる存在、東京03さんがこの日常系コントをしているからです。
コント職人たちが共通の話題として「東京03さんのような日常系のコントをしたくて・・」と話す場面が多いため、知らず知らずのうちに定着している気がします。
1組のカリスマが、日常系コントという呼び名を浸透させたのです。すごいことです。
この日常系コントのボケ方として、オーソドックスなものが以下2点。
・日常の中にヘンなヤツが現れる
・日常で見かける関係性にスポットを当てる
日常にヘンなヤツが現れる
普段よく見かける光景にヘンなヤツが現れ、おかしな言動をとるコントです。もしくは普通の人と感性がズレていたりして、周りの人とトラブルを起こします。
日常で見かける関係性にスポットを当てる
普段の何気ない日常にひそむ関係性を切り取り、そこにスポットを当てる事で笑いを生み出すコントです。
直接的なボケではなく、感情の変化やお互いの主張の食い違いを笑いにしているものが多いのが特徴です。
▼日常で見かける関係性にスポットを当てるネタのリンク
◯GAG:芸人の彼女
芸人の彼女を持った公務員の彼氏。彼女が新コンビを組み、その相方の紹介がてらネタをみて欲しいという。
彼女を応援している彼はネタを見るのを楽しみにしていたが、いざ見てみると、ゴリゴリのブスネタをする彼女を見ることになる。
キャラクターコント
設定は日常で変わりはないのですが、ヘンなヤツ過ぎる、強烈なキャラクターが登場します。
キャラクターの評価がネタの評価にダイレクトに直結する、キャラクター重視のコントです。
補足ですがキャラクターコントはキャラが異常な分、その手綱を握る台本は基本を押さえ、しっかりとしている物が多いです。
印象に残るのはキャラですが、そのおもしろさを伝え切るには良質な台本が重要です。
ですので、劇場ではキャラのみに頼った若手が大スベりする現場も多く目撃され、スベった若手は二度とそのキャラを演じないほど心の傷を負います。
▼キャラクターコントのネタのリンク
◯空気階段:取調べ
容疑者と取り調べを行う刑事。
取調べを進めていくうちに、容疑者が多重人格である事が分かる。
◯ななまがり:山口晶
カフェでくつろいでいると、突然『山口晶』と名乗る男が話しかけてきて、支離滅裂な問答をしてくる。
掛け合わせ型コント
2つの設定を掛け合わせたコントです。
例えば「以前駅長をしてた人がコンビニ店員になる」という設定などが挙げられます。
ボケとしては下記のように、コンビニなのに駅長っぽい言動をとるという物が軸となります。
・お客さんが入店する時に「お客様入ります、白線の内側までお下がりください」と言う
・お客さんを見送る時に敬礼をする
ちなみにこのスタイルは一時期流行り(・・た気がする、確かw)、流行りすぎたため最近ではあまり見なくなりました。
漫才型コント
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コントで漫才のように切れ味鋭くツッコむスタイルです。漫才の、漫才コントの導入部分がないだけと言い換えられるくらい、ズバズバツッコみます。
このタイプのネタは、以前サンドウィッチマンさんがキングオブコント決勝でやり、そのネタがおもしろ過ぎたため、ぼくの周りの芸人たちの間で大流行しました。
しかしその後、ことごとく作家さんに「コントとして成立してない」とバチクソ叱られていた記憶があります(笑)。
基本的にコントというものは【日常風景を切り取ったもの】であるため、日常でとらないような行動は起こしてはいけません。
例えばお店でらーめんを頼んでカレーが出てきても、
「カレーじゃねーか!インド人じゃねーんだよ!毎食毎食カレー欲してねぇわ!」
なんて、意気揚々といきなりツッコんではいけないのです。
最初の2〜3回は「・・すいません、ぼくらーめん頼んだんですけど・・」と訂正するけど、まだしつこくカレーが持ってこられて初めてキレて良いのです。
そう、日常の延長だから「流石にこの人怒るよな」と見ているお客さんが納得するだけの理由が必要なのです。
日常と違うレベルでキレだすとお客さんの共感が得られず、キレてるヤツも非常識に映ってしまい、見せたい笑いがブレてしまいます。
サンドウィッチマンさんはそのルールを超えるくらいおもしろかったので許された(のだと思います。コントのルールを教えてきた作家さんには、誰もが怖くて聞けなかった笑)のですが、これは選ばれた人のみができるコントスタイルといえるかもしれません。
その他のコント
その他にはこんなパターンのものがあります。
・擬人化コント
・モノマネ型コント
・バラシ型コント
・分類不能(笑)
擬人化コント
物や動植物を擬人化し、もしそれらが話してたらこんな話をしてるだろうな・・という、ややファンタジーよりなコントです。
モノマネ型コント
モノマネをベースにコントを展開します。
この人がこんな事をしたらどうなるか・・という設定の物が多いです。
コンビではないですが、R-1チャンピオンのじゅんいちダビットソンさんの「もし本田圭佑がコンビニ店員だったら」などが挙げられます。
掛け合わせ方コントのような、「その設定でその人が言いそうな言動」がボケの軸になります。
バラシ型コント
こちらも一瞬流行った記憶があります。
キャラのパーソナルな情報をどんどんバラしていき、バラされた情報がボケとなるコントです。
ちょっと文字だと伝わりづらいので、こちらもコント例を貼っておきます。
▼バラシ型コントのネタのリンク
◯ジャルジャル:幼なじみ
小さいころからめっちゃ仲よかった幼なじみ。しかし昨日取ったという免許を見ると、年下だと分かる。
ていうか覚えてた名前が違う。
てか職業も違う。
どんどん知らない幼なじみの顔が見えてくるコント。
分類不能(笑)
ジャンル分け不能のコントです(笑)。
ただ先述の通り、コントに明確なカテゴリ分けというのが存在しません。
そういう意味では、ほとんどのコントが分類不能に入るともいえるかもしれません。
リンクがなかったのですが、一世を風靡したバンビーノさんのダンソンのネタ、2700さんのキリンスマッシュなどもこちらに分類されます。
▼分類不能のネタのリンク
◯にゃんこスター:時限爆弾
縛られたお金持ちの前に、時限爆弾が設置されている。
それを解除に来たと思われる女の子が、音楽に合わせて縄跳びをしだす。そんで金持ちも縄跳びの技をフリップで説明し出す。
めっちゃおもしろいけど、もう文章で読んだら全く意味がわからないネタw
まとめ
コントは漫才と違い縛りが少ない分、音を使い、道具を使い、ボケ方も多様性を見せます。
ややシュールなネタも、それらを使う事でお客さんに分かりやすく表現できるのもコントの魅力です。
是非自分がおもしろいと思うものを、コントで表現してみてください。
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
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