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お笑い芸人がよく言う「同期」の基準や定義とは?同期芸人の見分け方

連載
公開日:2021年3月29日

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。

芸人って、やたら「同期」って口にすると思いませんか?初対面で芸歴を聞き合うのも日常茶飯事で、もはや同期コンプレックスかって感じです。

たぶん、皆さんの「同期」のイメージは9割ぐらい合っていて、でも核心は掴めていないのではないでしょうか。そんな「同期」の世界を掘り下げるのは、心のどこかで相方(3期上)を同期と勘違いしている私、山口おべんです。

今回は芸人がよく言う「同期」について解説していきます。



そもそも同期とは

同期とは、「芸歴が一緒」ということです。簡単なようですが、では、次のうちどれが正しいか分かりますか?

①吉本のNSC東京26期とNSC大阪26期は同期
②吉本のNSC東京26期とナベプロのWCS26期は同期
③養成所入学の時期が一緒なら同期
④春入学・春卒業と秋入学・秋卒業は、デビュー年が一緒なら同期
⑤芸人が養成所に入り直し、そこで自分と同じ期であれば同期
⑥当初フリーで活動をしていた期間は芸歴に含まない

同期の定義は複雑で解釈がわかれることも

①は誤り。東京26期と同期は大阪43期です(どちらも2021年卒業)。東京26期が大阪26期にタメ口を使ったら、17年先輩なのでぶん殴られます。

②も誤り。事務所ごとに期の数字がバラバラのため、調べるか、周りの接し方でしれっと判断します。

③も誤り。養成所によっては2年間の場合もあり、卒業して活躍を始めたタイミングで判断します。

④はどちらの説もあり。別の期と見る方が多数派でしょうか。

⑤の、いわゆる「隠れ芸歴」があっても、同期は同期です。吉本のような上下関係が明確な事務所では完全に同期です。

⑥は露出度にもよりますが、答えがありません。学生芸人やアマチュア芸人の場合はカウントしないことが多いですが、そもそもフリーとアマチュアの違いって何。

このように、実は「同期」って複雑で、最初は戸惑います。また、④⑤⑥に共通なのが、えてして本人は芸歴を短く言いたがるということ。ただ、「実質同期じゃん」と言われたのを鵜呑みにすると、一番後輩の自分だけその人とタメ口…なんてなると印象が悪いので、自分が損をしないようには気をつけましょう。

僕の同期はこんな人たち

僕はNSC東京18期なので、同期はこんなメンツです。「あ、こことここ同期なんだ!」みたいな目で見ると面白いですよね。

NSC東京18期

・ぼる塾(田辺さん、酒寄さん)
・ひょっこりはん
・おばたのお兄さん
・レインボー
・ゴスケ
・ホープマンズ(息子ゆうしくんとの日常がSNSで話題)
・藤原麻里菜(『無駄づくり』で話題)
・コージ・トクダ(元ブリリアン、吉本退社後にナベコメ)

NSC大阪35期

・ゆりやんレトリィバァ
・ガンバレルーヤ
・コウテイ
・熊元プロレス(紅しょうが)
・ラニーノーズ
・濱田祐太郎
・加賀翔(かが屋、NSC中退後にマセキ)

こう見ると、女芸人やピン芸人が強い。また、YouTubeなど、舞台やTV以外で活躍する人もちらほら。いつの間にか『BUSA Hair』という「ブサイクしか載っていないヘアカタログ」を立ち上げ、メディアに取り上げられた同期もいます。

さらに言えば、NSC「作家コース」の同期や、同期芸人が構成作家や裏方に転身する例もあり、同期の絆は表舞台だけではありません。ちなみに、作家の方が企画会議でのトーク力が求められるので、僕より芸人っぽい作家の同期が何人もいます。

同期は「同い年」に近い感覚

皆さんは、初対面の相手が実は同い年だと分かり、盛り上がったことはありませんか?有名人が実は自分と同い年だと知ると、少し嬉しくなりませんか?芸人の「同期」はそれに近い感覚です。

一般の会社でも同期の結びつきはありますが、年齢・役職その他の意味合いも大きいですよね?競合他社のあの人や、中途入社のあの人まで「同期」とは思わないですよね?そこへ行くと芸人界は、芸歴による上下関係が全て。年齢・経歴・面白さ・売れ方など関係なく、芸歴が上なら先輩、下なら後輩です。

それだけに、「同期」は単純な親近感だけでなく、お互いが気を遣わないからこそのノリや相談ができる関係です。その意味でも、「同い年」と通ずる感覚かなぁと。ただし、本当に「同い年」の芸人は、先輩なら先輩。逆に、68歳の美魔女の同期とはタメ口の仲良しですよ。

養成所のときより、卒業後

個人的な感覚ですが、同期と本格的に仲良くなるのは養成所卒業後です。

在学中は大人数が授業にだけ集まり、終われば即退室&近所の寄り道禁止。講師ごとの選抜やイベント、SNSなどが交流の機会ですが、自分たちしかいないので特にありがたみはないし、講師にはバチバチした空気を求められるし。

それが、卒業して劇場デビューすると、最初頼れるのは同期だけ。先輩に迷惑をかけないよう「同期のケツは同期で拭く」文化もあり、そのうちライブなど一緒になることが多かった同期と自然と仲良くなります。思えば、今仲がいい同期のほとんどは在学中あまり話しませんでした。

そして年々、生き残りが減るにつれて絆は増していきます。たぶん、バトルロワイヤルにでも参加している気持ちなんだと思います。同時に、売れる同期も現れて悔しい反面、同じスタートラインからの目安になり、目標になります。きっとほとんどの芸人が、「自分はこの期でよかった」と愛着を持っている、それが「同期」です。

執筆:東大卒芸人 山口おべん

1988年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学文学部言語文化学科言語学専修課程卒業。W東大卒コンビとして「アメトーーク!」など番組出演。 2020年1月から、コンビで自身のみエージェント制を選択。芸人になった動機はいくつかあるが、一番は「モテたかったから」。