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芸人のネタ作り!「お客さんにウケるネタを中心に作るタイプ」と「自分のやりたい事を中心に作るタイプ」!

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公開日:2024年2月5日 更新日:2024年2月9日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

ネタを作るタイプの芸人は、ざっくりと二種類存在する。それが「お客さんにウケるネタを中心に作るタイプ」と、「自分のやりたい事を中心に作るタイプ」。

これらのタイプをどこで見分ければ良いかというと、彼らの客層を見ると分かりやすい。「お客さんにウケるネタを中心に作るタイプ」の客層は、若い女性客が多く、何となく華やかで見目麗しい。

逆に「自分のやりたい事を中心に作るタイプ」は男性客が多く、ライブ中野太い笑い声を発し、隣の女性客をおののかす。芸人界の憲法でこうと決まっているが如く、何故かこの客層は逆転しない。芸人界の七不思議。

今回は、上述した2タイプについてお話させて頂く。

是非、最後までご一読頂きたい。



おれたちはウケる!客に寄せにいく人々!

「お客さんにウケるネタを中心に作る」事は、芸人間で「客に寄せる」と言われる。軸を自分ではなく、お客さん側に寄せる事が由来と思われる。

とにかく彼らは「ネタはウケてなんぼだろ」という至極真っ当な理念から、「ネタを客に寄せにいく」。新ネタを作る際、そのボケの多くは「おもしろそう」よりも「ウケそう」が中心となり選出される。

彼らの多くは、なんとなくの肌感覚で「こうすればウケる」というボケ方が分かっており、しかもその肌感覚の精度が高いイメージ。他芸人がやってもそんなにウケないライトなボケも、彼らがボケると不思議と爆笑に繋がる。

そのため彼らが行う単独ライブは、ほぼ全ネタのアベレージが高い。基本、大スベりというものは存在せず、お客さんを大満足で返してあげる芸人の鏡。

彼らの多くは、以下2パターンに分類されるイメージ。

知略によって、天下を獲る!戦略家タイプ!

彼らはその明晰なお笑い頭脳をもって、天下を狙う。

彼らの多くは地頭も良く、今日の晩飯にまでしか頭の及ばない他の芸人に比べ、千里の先を見通している。

そんな彼らは、勤勉であり、努力家。お笑いをパターン化し、それらを勉強する。設定からボケの作り方、キャラクターの出し方、拍手笑いの取り方までこと細かく勉強し、スキルを高めていく。

天才タイプというより秀才タイプに多く、破天荒な芸人は少ないイメージ。性格は明るかったり暗かったりするが、基本は真面目。以外と、誰よりもお笑いに熱かったりする。

彼らの多くは、若手芸人時代から数年先まで見越しているケースが多い。特に大手事務所に所属している場合、彼らの最初の壁は、目も眩むほどのピラミッドライブ。

ネタで評価され、ピラミッドの上に登っていかなければ、オーディションすら振られない。そうなってくるとピラミッドを上がらないと話にならないので、まずはピラミッドを上がる事が第一目標となり、ピラミッドを上がるのであれば、しっかりと「ウケる」事が大事と判断。結果、「客に寄せる」という選択肢を取る。

そのため、向こう3年間を費やしお笑いの構造を理解しながら、ウケるネタを作成する事を決意。そしてピラミッドを上がった後、自分達のやりたい事をすれば良い。戦略家タイプの判断は何一つ間違っておらず、至極真っ当な考え方。

そんな彼らがぶつかる壁は、「個性」となる場合が多い。不断の努力により学習したお笑い方程式も、ある意味お笑い教科書から借りたもの。そして彼らを審査するレジェンド芸人達は、そのお笑い方程式を知り尽くしている。彼らが求めているのは、自分達が見た事のない「何か」であり、ここでしか見れない一点物。それを作り出す事の難しさも知っているが、彼らもまたイチお笑い芸人だからこそ、審査の際には妥協しない。戦略家芸人が学んだ方程式も、自分達の「個性」を載せて初めてこの世で一つの一点物になる。

そのような理由で、このような戦略家タイプは、「学習できる内容以外」の部分が壁になるケースが多い。しかしそれすらも、彼らは乗り越えていく。

戦略家と言いながらその実誰よりお笑いに熱い彼らは、泥臭い根性もまた、座っているのだ。

女子ウケ必須!アイドル芸人!

成りたくてなる芸人もいれば、成りたくなくてなる芸人もいる、「アイドル芸人」。この「アイドル芸人」という言葉、芸人間では何となく差別的な意味合いで使われる事が多い。一応言葉にしておくと、彼らは全く悪くない。人気を支える性別に男性も女性も関係無く、彼らは等しく同じお笑いファン。鬱屈とした世の中の不平不満を煮詰めたような下層芸人にとって、「女子人気がある」というだけで批判の対象になってしまっているだけなのだ。

そして「客に寄せにいく芸人」は、この「アイドル芸人」の中でも、「 “アイドル芸人” で有り続けたい」と思っている芸人たち。

アイドル芸人は、その名の通り劇場のアイドル。登場すれば「ワー!キャー!」と、地下芸人が一生浴びる事の無い黄色い歓声を全身に浴びる。バレンタインには、地下芸人の一生分を超えるチョコレートを貰い、単独ライブをすれば満員御礼。お客さんが呼べる事から他のライブへのゲスト出演も決まる。舞台とは興行であり、この「お客さんが呼べる」という事は非常に大きな武器。そのため、多くのライブに出演する事ができ、その多くの舞台を通してウデを付ける事が出来る。

極稀に赤字が続き、血反吐を吐きながら単独ライブを続けている猛者もいるが、それはかなりの特殊例。通常は赤字になってまでライブは打たず、ライブを打たないから舞台での応用力が付きづらく、舞台での応用力が付きづらいから実力が上がらないという、負の三段論法に多くの芸人が生息する。

とにもかくにも、彼らのライブ出演依頼の多くは、彼らが「アイドル芸人」であり、応援するファンが沢山来場するという事実があっての事。そうすると彼らの多くの舞台出演を支えているのは、言葉の比喩で無く、本当に「ファンのおかげ」となる。そうすると、ネタがどうしてもファンが喜ぶ内容に寄ってしまう。

「いや自分達のファンなんだから、寄せずに自分達が好きな事をして喜んでもらえればいいんじゃないの?」と思われるかもしれないが、そこは芸人界、そんなに甘くは無い。

彼らにワーキャーいって付いて行ってるファン、ビックリするほど離れやすいのだ。彼女達は基本的に若手芸人が大好きで、可愛い男の子の若手芸人が出てくると即、鞍替えする。その変わり身の速さはルパンを凌ぎ、飛び跳ねるようにファンを脱却する。そう、アイドル芸人界もまた、実際のアイドルグループと同じように過酷な競争なのだ。

おれはこういう人間だ!やりたい事を中心に作るタイプ!

彼らは「芸人になったんだから、自分達が好きな事をするに決まってるだろ」という、やはり至極真っ当な理念から、やりたい事を中心にネタを作る。

「寄せにいくタイプ」と違い、彼らの単独ライブは、割と波があるものが多い。なぜなら「このネタでここがおもしろい」というカラーのアクが強い場合が多く、ネタによってウケ方がまばらだから。もちろん単独ライブに来るお客さんは、彼らの作るカラーが好きな人が集まるので基本大ウケなのだが、連れてこられた友達が結構ポカンとする。また、極稀に連れてきた本人もポカンとしてたりする。しかし、それ自体が彼らのカラーであり、「分かる人には分かる」と、特定の個人を差し抜くカッコ良さがある。

彼らは極々若手時代から頭角を表す者と、数年潜って頭角を表す者に分かれる。その違いは、まさに「お客さんに寄っているか」どうか。

彼らもバカではない。毎月繰り広げられる事務所ライブのピラミッドを上がらなければならない事など承知の上。そんな彼らは、「自分がやりたい事」と「お客さんにウケる事」が重なる部分で勝負する。これが最初から出来る芸人が早めに頭角を表し、少し苦手な芸人が数年の時を経て、大化けして舞台へ登場する。

この「やりたい事を中心に作るタイプ」の壁になる部分が、まさにここ。若手時代は「自分がやりたい事」と「お客さんに寄せる事」は相反する事のように感じるが、実はそんな事は無い。これらは二つとも大きな円であり、そこが重なる部分を見つけるのが「ネタ作り」。

そして重なった部分を救い上げ、「自分のやりたい事」はそのままに、お客さんに伝わりやすく構成する事が「芸人のウデ」。この場合の「ウデ」とは、「オチに対する丁寧な “フリ” 」であったり、「三段落ち」・「天丼」に代表されるネタの構成技術だったりする。

そう、艱難辛苦を乗り越え芸人が大きく成長した時、結局この二種類のタイプが辿り着く先はほぼ一緒なのだ。そして種類の違った、客層だけが彼らに残る。

まとめ

今回は、芸人のネタ作りのタイプについてお話させて頂いた。

今後ライブ会場で芸人のネタを見るとき、どちらのタイプか考えてみるとまた、違った楽しみ方が出来るかもしれない。

このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。

ご一読、ありがとうございました。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。