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芸人が使う小道具紹介!フリップ大特集【前編】

連載
公開日:2023年11月19日 更新日:2023年11月24日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

芸人とは切っても切り離せない関係、小道具。ある者は一枚の紙から笑いを作り、またある者は1笑いのために巨大建造物を製作する。

今回は、小道具の中でも「フリップ」についてご紹介させて頂く。本コラムでは、恐らく日本で一番詳しく、フリップの種類と、使用する小道具を紹介している。

是非、ご一読頂きたい。

ちなみに、世界で一番詳しくフリップ芸についてご紹介しているのは、堀川ランプ氏のこちらの記事。ご興味あれば、是非。

↓↓
【フリップ芸入門】



ピン芸人御用達!「フリップ」とは!?

「フリップ」とはどこにでもあるただの紙であり、「フリップ芸」は、そこに書かれた文字や描かれた絵でボケていく芸の事である。簡単にボケが作れるため、ピン芸人が最初に作るネタとも言われ、ほとんどのピン芸人が、1度はこの「フリップ芸」を通ったのではないだろうか。

そしてこのフリップを使いネタをする人々は、当然フリップを小道具として使用する。しかしひとえに「フリップ」と言っても、実は舞台で使う場合、いくつか種類がある。以下、ご紹介させて頂く。

簡単!お手軽!スケッチブック!

100均ショップで販売されている、スケッチブック。20〜50枚ほどの紙がリングで留めてある。これは、フリップ芸人のために発明された商品といっても過言では無い。極々手軽に描き始める事ができ、間違ったら破って捨てれば良いお手軽商品。またスケッチブックに描かれる絵や文字は、雑でも何となくネタに馴染むため「取り敢えずネタを思いついたから、手間をかけずにやってみたい」というモノグサ芸人達に愛用される。

デメリットとしては、紙のサイズが小さい所。小さいが故に、小さい会場でないと使えない。大体会場キャパ30人が限界のイメージ。大きなスケッチブックもあるにはあるが、上述した100均ショップには置いていない。大型文房具店にわざわざ出向いていかなければならず、価格も数千円とべらぼうに高い。なのでもっと大きなフリップを使いたい場合、費用対効果を考えれば、次にご紹介する画用紙をお勧めする。

こちらもお手軽!画用紙!

同じく100均ショップで販売されている、画用紙。基本的にフリップ芸人はこの100均ショップの画用紙を使用してネタを描く。10枚100円で販売されており、貧困にあえぐ芸人は、5枚書き損じると発狂する。大きさは「四つ切り」といわれるもので、会場キャパ50人位までならこのフリップで賄える。

そしてこのフリップで試し、賞レースなどを意識したネタは、下記の画用紙2枚貼りフリップへ移行する。

自作!画用紙2枚貼り!

賞レースでネタを披露する会場は、200〜500人キャパ。大きな会場はそれだけ舞台と客席が離れ、四つ切りサイズでは見えずらい。フリップ芸で言われる事は、「フリップはとにかく大きく、綺麗に描け」。先述したスケッチブック芸人の矜持の見事逆をいく教えだが、とにかく会場で目を凝らさなければ見えないレベルの大きさでは、例えボケがおもしろくても笑いに繋がりずらい。

そうした理由から、賞レースや事務所ライブなど、ここぞという時に披露する「本ネタ」は、大きなフリップを用意する。そうして出来上がるのが、この画用紙2枚貼り。

この画用紙2枚貼りは、読んで字の如く、上述した画用紙を2枚貼り合わせる事により作成される。この1枚の紙と1枚の紙を合わせて、1枚の紙を作るという無価値な作業、「え?そんな面倒くさい作業って誰がやるの?」と思われる方もいるかもしれないが、当然無価値な芸人本人がやる。100均ショップから大量の画用紙を購入し、その2枚を重ねてノリで貼り合わせる。1ネタ20〜30枚使用するフリップ芸人にとって、地味に時間がかかる作業で、この時間芸人は自分が生まれてきた意味について考える。

そうして出来上がったフリップに絵を描き文字を書き、書き損じるまでがワンセット。時間が無駄になる他にも1枚20円という財政が傾く損害が出るこの作業、今日もどこかの自宅でひっそりと行われている。

フリップの持ち運びはこれ!デカブリーフケース!

上述したフリップを運ぶ、デカいブリーフケース。Amazonで販売しているので、サイズに気をつけて購入されたし。大体価格は2000〜3000円前後。ちなみに中に入れるフリップが紙のため、ナイロン製のものだと、段ボールなどで補強しないとベロベロになってフリップにヘンな型が付く。また雨の心配もあるため、個人的にはプラスチック製の物がお勧め。

これも必要!イーゼル!

上述したスケッチブック以外、基本的にフリップはイーゼルにのせて使用する。こちらもAmazonで販売しているので、サイズに気をつけて購入されたし。大体価格は2000〜5000円前後。

ちなみに極稀にあるミスが、イーゼルの高さが足りないというミス。自分の手元の高さを測り、間違えなく程よい高さのイーゼルを購入する。

あともう一つあるのが、イーゼルではなく、音楽などで使う譜面台的な三脚を購入してしまい、使い物にならないというミス。微妙に形や用途が似ているため、間違って購入するド素人芸人も多い。主にぼく。どう違うのかというと、その強度とフリップを乗せる事ができる量。乗せるフリップが数枚レベルであれば問題ないが、20枚ほど乗せると譜面台だと強度が足りない。ガタガタしていて支えながらでないと、ネタができなくなってしまう。

個人的なおすすめは「Talens(ターレンス)」というブランドのイーゼル。全くガタつかず、極めて丈夫。愛用しているフリップ芸人も多い。ただ、価格が5000円前後とやや高額。なのでフリップを頻繁にやる予定の方には、おすすめ。

これは外せない!指サック!

これが無いと話にならない、指サック。フリップは紙がぎゅうぎゅうに重なりあった状態のため、素手ではスッとめくりずらい。めくりずらいならいざ知らず、ボケのタイミングで全くめくれずモタつくといったケースも多発する。なのでフリップ芸人はフリップをめくるために工夫を凝らす。この指サックもその一つ。

ちなみに他の工夫としては、「フリップにめくりやすいように付箋をつける」「フリップの角を小さく折る」などの行為がある。しかし付箋は微妙に見栄えが悪く、角を小さく折って20枚程重ねると、折っている側が少しもっこりするという異変が起きる。そういった見栄えの悪い事態を嫌うフリップ芸人が、指サックをはめる。

デメリットとしては、指サックの色次第で「指サックをつけている」事がお客さんに丸わかりになる事。設定によっては、指サックがとても邪魔に感じられる。小さな事だが、割とかしこまった賞レースなどの場合、結構なマイナスになる。

しかし、ぼくはそんな全フリップ芸人の悩みを解決するアイテムを発見した。それが「ペララ サークル」という商品。簡単にいうと「ピップエレキバン」の磁石を外した丸い肌色のシールだけが売られているような商品。そのカラーは指の先につけても分かりづらく、目立ちにくい。しかしフリップを掴むと、しっかりグリップし離さない。

まだ芸人達にあまり知られていないが、今後フリップ芸人達の間で爆売れするであろう、この一品。このコラムをご覧の全てのフリップ芸人の皆様、是非ご購入をご検討頂きたい。そしてぼくを讃えて欲しい、ペララと共に。

別添!PCアプリ!

フリップに直接絵や文字を書く旧石器時代は終わったとばかりに、PCで原画を作成し、カラーコピーしてフリップに貼り付ける芸人が誕生した。彼らは上述したフリップのデメリットを、最新機器によって乗り越えた。

上述の通り、フリップの最大のデメリットは書き損じ。貧困芸人にとって一枚10円のマイナスは、一枚10本頭にクギを打ち付けられる痛みに等しい。またこの書き損じ、文字の場合だったらまだ許せる。しかし丁寧に筆を取り絵を描き、そして墨をこぼすとケタ外れの時間が無為に消える。

しかしこのデジタル機器の場合、いくら書き損じても問題がない。そもそも文字はPCで打ち込むため、自分で書くより見やすく綺麗。絵も下書き、ペン入れとレイヤーを重ねていけば、より綺麗な絵が描けるし、配置変えやサイズ変更までお手のもの。

使い古したフリップが汚れて再度絵を描き直していた無意味な時間も、PCアプリであれば保存していたデータを再度印刷し、フリップに貼り直すだけで良い。兎にも角にも、上位互換。IT進化の恩恵を、存分に芸人も受けているのだ。

しかしこのジャンル、まだそこまで多くの芸人は登場していない。そのため「フリップ芸人にとって使いやすいアプリ」の情報が芸人間でも回っておらず、個人個人がWebで調べて、評判の良いアプリを使っている状況。なので、ぼくが使っているのが「MediBang Paint」という情報だけ、ご紹介しておく。

まとめ

今回は、芸人の小道具として「フリップ」についてお話させて頂いた。

こちらは小道具紹介の前編であり、芸人が使うその他の小道具は、次回ご紹介させて頂く。

このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。
ご一読、ありがとうございました。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。