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現役お笑い芸人が教える無所属芸人のメリット・デメリット、成功するためのポイント

連載
公開日:2021年8月3日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

みなさんこんにちは。
芸歴10年目。おまえは発見待ちだと言われ、発見されないまま芸歴10年経った吉松ゴリラです。

ここ数年前までは無所属(フリー)芸人というと、芸人内では『事務所に所属すらできなかったヤツ』『カス中のカス、芸人の成れの果て』といったイメージがありました。

しかし現在は、無所属時代を経て大活躍している芸人が露出を増やしてきた事により、その見方が少し変わってきたように思います。

【無所属時代を経て活躍している芸人】
・さらば青春の光さん
・ラランドさん
・フワちゃんさん …etc

ここにあげている皆さんは、活躍後すでに個人事務所として独立しており、一国一城の主となっておられます。

「これから芸人を目指す!」という人にとっては、かなり夢があり、カッコいいですよね。

今回のコラムでは、そんな無所属芸人についてお話しします。

無所属芸人で成功をおさめるには

無所属芸人で成功をおさめるには、以下の能力が必須です。

【無所属で成功をおさめるために必要なもの】
・賞レース・もしくはSNSでの活躍
・自己プロデュース能力
・人間関係の構築能力

賞レース・もしくはSNSでの活躍

大手事務所だと売れてる芸人のバーターで仕事をもらえる場合もありますが、無所属はそれがありません。
自身が出した結果のみで仕事が決まる、それが無所属です。

具体的には賞レース系だと、準々決勝からTVのディレクターさんが観に来たりするので、最低でもそこまで残らなければなりません。
先程あげたさらば青春の光さんや、ラランドさんも、世に出るきっかけはM-1グランプリ、キングオブコントの賞レースですね。

自己プロデュース能力

大手事務所だとたくさんの舞台があり、若手は前説などで使ってもらいそこで経験を積んだりしますが、無所属はそれがありません。

自分で、「自分に今必要な能力」を考え、「それを伸ばす方法」を考え、「それを実行に移せるような環境の整理」もしなければなりません。

人間関係の構築能力

多くのTVオーディションは「今こういう芸人を探しています」という番組企画内容と一緒に、欲しいネタ内容や特技内容の詳細が明記された募集要項が、各事務所に送られます。

なので事務所に所属していないと、自分が何もしなければTVオーディションの話自体が一切きません。

無所属がTVオーディションに出ようと思ったら、オーディションを担当している(もしくはそれに近い)人から直接回してもらう必要があり、まずその人たちと繋がりを持ち、そして回してもらえるだけの人間関係を構築する能力が必要になります。

それができないのであば、TV局に「こちらから連絡せざるを得ない」と思わせるほど、賞レース・SNSでブチ抜いた結果を残さなければなりません。

事務所所属芸人と無所属芸人との違い

既に少しお話ししていますが、めっちゃ簡単にいうと、大きな違いは下記の通りです。

【事務所所属芸人と無所属芸人の違い】
・仕事を取ってくるのが事務所か、自分か
・ギャラを一部事務所におさめるか、全部自分でもらえるか

後々詳しく説明しますが、大きな違いは、仕事の取り方とギャラの取り分と思っていいでしょう。
そしてその違いが、そのまま各々のメリット・デメリットになります。

ちなみに本筋から脱線するので今回は詳しくお話ししませんが、このコラムを読んでいる人の中には、最近吉本興業が導入した「エージェント制」という雇用契約をご存知の方も多いかと思います。

日本ではあまり聞かない言葉ですが、アメリカの芸能界では結構メジャーな雇用形態で、ざっくりいうと、事務所所属芸人と無所属芸人の間のような形態です。

【エージェント制の芸人】
・仕事は、事務所も取ってくるし、自分でも取ってくる
・事務所が取ってきた仕事は、事務所所属芸人くらいのギャラをもらえる
・自分で取ってきた仕事は、ギャラのほとんどを自分でもらえる

※ちなみに「事務所所属(専属マネジメント契約)芸人」と「エージェント制」芸人の違いを詳しく知りたい方は、笑まるでコラム執筆中の山口おべんの「お笑い芸人の僕が吉本興業のエージェント制を選んだ本当の理由」をご覧ください。

無所属芸人のメリット・デメリット

事務所所属芸人がお笑いのことだけを考えていればいい反面、無所属芸人はお笑い以外の事務作業や、リスク管理などのマネジメント業務も発生します。

仮に10時間自由に仕事ができる時間があるとしたら、事務所所属芸人が10時間全てをお笑いにつぎ込めるのに対し、無所属芸人はネタ稽古をする時間をケズって、他の仕事をしなければならないイメージですね。

なので無所属芸人は、全てを自分で管理・実行したい人向きかと思います。

逆に事務所所属芸人は、その10時間を全てお笑いにつぎ込みたいから、自分のギャラからお金を払って、その他の業務を所属事務所に委託しているイメージです。
※その浮いた時間で遊ぶ芸人も多いですけどw

仕事に関するメリット・デメリット

爆売れする前の芸人の仕事といったら、ライブと営業です。

ライブについて

事務所所属芸人の場合、事務所ライブがあります。
大手事務所の場合、ある程度評価されれば、所属事務所のライブだけで十分舞台を踏んで、ネタや平場の力をつける事ができます。

しかし無所属の場合、事務所ライブ自体がないため、自分でエントリー制のライブを探し、応募する必要があります。

定期で出ているライブがないうちは、手間暇がかかり非常に面倒です。

しかしその反面、事務所ライブは強制的に日程が決まるため、バイトとの日程調整が非常に大変というデメリットも存在します。

無所属芸人は、ライブに関しては自由に日程調整ができるというメリットがあるでしょう。

営業について

事務所所属芸人だと、例えば「友人の結婚式の余興を頼まれた」という営業を受ける場合でも、事務所を通さなければなりません。

そうすると許可がおりるまでにめっちゃ時間がかかったり、友人への請求金額がハネ上がったり、友達から受けた仕事なのに何もしていない事務所に取り分を持っていかれたりします。

無所属の場合は、そのあたりの融通は効きまくりです。

別に事務所を通す必要はないので、自分が受けたいと思えば受けて良いですし、断りたいと思えば断る事もできます。

ただギャラの交渉など生々しい話も自分でしなければならないので、そのあたりがデメリットに感じる方もいるかもしれません。

SNS・YouTubeに関するメリット・デメリット

基本的に、事務所所属芸人の場合は、YouTubeを開設する場合にも事務所の許可が入ります。

また、SNSでも好き勝手につぶやく事はできず、事務所イメージから逸脱した投稿をした場合、事務所から注意が入る事もしばしばです。
※まあアイドルさんとかと比べ、そのあたりは相当ゆるいですが。

無所属芸人の場合はこのようなわずらわしさがなく、自己責任のもと、自由にSNSの投稿や、YouTube動画をあげる事ができます。

ただ事務所から指摘が入る場合の多くは、事務所の芸能経験から、本人のプラスにならない投稿をした場合が多いです。

そのためこの「自由に好き勝手に投稿できる」というメリットは「リスクチェックをされず、大炎上を巻き起こす可能性もある」というデメリットともなります。

こう聞くと「無名のままより、芸人として炎上した方がいいじゃないか」というイケイケの思想の人もいると思いますが、事務所もバカではないので、多くの場合「この投稿で炎上した後のメリット・デメリット」まで考えた上で、指摘を入れます。

その上で指摘が納得いかなければ事務所と話し合えば良いだけなので、「客観的なチェック機能がなくなる」というのは、デメリットになり得ると思います。

ギャラに関するメリット・デメリット

先ほど触れた通り、事務所所属芸人はどんな仕事・営業でも一定の割合でギャラを事務所に持っていかれます。

その割合は事務所によって違いますが、若手芸人の場合どんなに少なくても、4割以上は持っていかれます。
※4割は相当良心的です。9割以上持っていかれる場合もあります。

逆に無所属の場合は、10割全てが自分の取り分です。

しかし、芸人として使うサイフが同じのため、収入も大きければ支出もデカいです。

例えば単独ライブを行う場合、会場代やチラシ・広告代、セットの美術代も全て自腹になります。

また事務所所属芸人の単独ライブでお客さんが呼べずに赤字になってしまっても、芸人に追加請求がくる事はありませんが(たぶんw)、無所属の場合は全ての赤字を自分がカブります。

笑いを取る力とはまた別の、収入の見込みに対してどこまで支出が可能かを考える会計能力が必要になります。

その他のメリット・デメリット

リスクマネジメントについて

めっちゃ簡単にいうと無所属芸人の場合、「今日行く営業先が反社会勢力かどうか分からない」という事です。

このご時世、事務所は営業先をきちんと調べます。
一歩間違うと、取り返しのつかないほどの大問題になるからです。

しかし無所属芸人は、営業依頼を受けたら、簡単に営業に行きます。相手がどういう人か、どんな集まりなのかを深堀りして調べるなんて事はしません。

というより調べ方を知りません。せいぜい企業HPを見るくらいではないでしょうか。

正直売れてない若手芸人の場合、そういう会合に行ったところで表にでることはないのですが、今はみんながスマホで写真を撮るため、その写真が何年先も記録として残ります。

芸人として売れてからその若手時代の写真が週刊誌にリークされるケースも大いに考えられ、その際「知らなかった」では済まないのが今の時代です。

この営業先の調査ができなかったり、いざというとき、事務所の後ろ盾がないのは無所属芸人のデメリットとなります。

マネジメントについて

売れてないころは関係ないのですが、無所属で売れた場合、自分で自分のスケジュール管理をしなければならなくなります。

ギャラ交渉から当日の集合時間・場所の確認、現場までの交通の手配・・

ただここまで売れればマネージャーを雇ってしまえばいいので、あまり気にしなくても良いと思います。

まとめ

今回は無所属芸人についてお話しさせて頂きました。

今はSNS・YouTubeの普及により、自分を売り込む場所がどんどん増えてきています。

そうすると事務所所属芸人のメリットは減っていき、無所属や、吉本興業のようにエージェント制を選択する芸人の数も増えていくと思います。

どちらにもメリット・デメリットはありますので、自分にあった、自分のやりたい事に適した方を選んでもらえると良いかと思います。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。