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芸人の収入と支出を大解剖!若手お笑い芸人のお金事情とは

連載
公開日:2021年11月29日 更新日:2021年12月17日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

世間一般のイメージだと、「若手芸人=貧乏」のイメージが強いかと思う。しかし、その実情は様々で、結構良い暮らしをしている芸人もいる。

今回のコラムを読んで頂ければ、
・実際、若手芸人は貧乏なのか?
・若手芸人の収入
・若手芸人の支出
・なぜ貧困を極める芸人が多いのか
を、お分かり頂ける。

是非、最後までご一読頂きたい。

実際、若手芸人は貧乏なのか?

少し以前までは、ほとんどの芸人が貧困を極めていた。しかし、最近になって「いや意外と良い暮らししてんな!」という若手芸人も増えてきた。

これは本人の努力というより、周囲の芸人という職業への理解が大きくなったのが要因かと思われる。

とはいえ、ちゃんと貧困を極めに極め尽くした芸人たちもゴロゴロ存在する。ここでは、若手芸人をいくつかのグループに分けて、紹介する。

金をたらふく持っている!バイトジャンキーな人々!


ライブより、バイトのシフトを上位に置いている人々。コンビのネタを書いていない方がなりがち。

ライブの予定を入れようとすると、「この日だけは、おれがいないとバイト先が回らないから!」と、なぜか全日程でNGを出してくる。コンビ間のネタ合わせもバイト前にこなしそのままバイトに行くため、この人のバイト先に近いところがネタ合わせ場所に選ばれがち。

当然コンビ間のケンカの火種になるが、ケンカをした後、バイトに行く。人生のほとんどをバイトに捧げている人種。飲食業をバイト先に選んだ人に多いイメージ。

ちなみに特殊パターンで、コンビ解散直後で直近の目標を失い、さまよいだした芸人もバイトジャンキーになりがち。その場合、周囲は2〜3ヶ月は優しい目で見てあげる。
しかし、4ヶ月目に突入すると、熱い同期が突然キレて説教するのが若手芸人あるある。

死神と同居しているかの如く日々を暮らす!貧困を極めた人々!

バイトをしてる時間があったらお笑いやりたいというストイック・タイプと、働きたくないから芸人になったんだというストイッククズ・タイプがいる。

ストイックタイプは、コンビだとネタを書く方に多い。時に家畜以下の食生活を誇る。ヤセた顔の真ん中にある目がキマっているのが特徴。

相方が遊んでいる間も貧困に耐えながらネタを書き、相方に提出し、相方に「おもしろいと思わない」と言われ、キレるのが通例。
このタイプの相方がバイトジャンキーの場合は、必ずと言ってもいいほどコンビ仲が悪くなり、解散する。

ストイッククズ・タイプは、バイトをする時間はあるがバイトをしないから金がないという、この上なく王道な貧乏道を歩む。
しかし、なぜか芸人仲間からは好かれる場合が多く、先輩や同期からご飯をオゴってもらったりと、貧困ながらも食生活は充実する。

酒とコンパとギャンブルを好み、将来グラドルとパチンコの番組を持つ事が夢。しかし、その多くが、借金が重なり芸人を引退する。基本、その後の行方は追えない。

最も地獄!売れそうで売れない人々!

実働時間と収入が全く合わない、ある意味一番地獄を見ている人々。
弱小事務所にはあまりいないが、劇場が整い仕事が豊富な事務所に多数生息する。特に、2〜3年目の若手芸人でNextブレイクを期待されている芸人に多い。

彼らにはその能力の高さから、経験を積んで伸びて欲しいという理由で多くの仕事がふられる。劇場出番から前説、時に営業の仕事ももらえる。それ自体は芸人として非常に喜ばしい事なのだが、ギャラが戦後の日本かというくらい安い。

結果、365日仕事をしているはずなのに、生きるか死ぬかのデッドライン上の給料明細が毎月手元に送られる。

彼らが行なっているのは「バイト」ではなく、事務所からふられている「仕事」なので、生活がキツいからといって抜け出す事はできない。永遠に続く無限回廊のような負のループだが、才能のある芸人の多くが通ってきた道でもある。

お笑い芸人としての収入


若手芸人の収入源は主にバイトだ。バイト代が10割といっても差し支えない。ただここでは、その他、バイト以外の貴重な芸人としての収入源を紹介する。

TV出演料

なかなか給与明細に記載されることのない、TVに出た時の出演料。最初にこのギャラが入ってきた時、若手芸人はもれなく日記に今日の気持ちを記載する。しかし、若手芸人のギャラはそれほど高くない。

少し前にTVで「いまの若手芸人のギャラは深夜で1本1万、ゴールデンで3〜5万」と発言があったように、みなさんが思ってる以上に安い。

昔は違ったそうだが、今がコレっていうのが現実。

ライブ出演料

ある程度のランクの芸人になれば、ライブ出演料がもらえるようになる。けれど、最初は500円とか。交通費にもならないくらいのレベル。
吉本興業の場合は、色々なお笑いコンテストで結果を残すと舞台ギャラがぽこんと上がるそう。

営業ギャラ

事務所にふられる営業と、自分で取ってくる営業がある。

一般的には無名でも、事務所からふられる営業が定期的に入るような芸人になるとかなり潤う。月収20〜30万クラス。

自分で取ってくる営業のギャラは、その人の交渉次第。数万円クラスから、ギャラなしだが客からおひねりもらえるような現場まで様々。

とってきた営業を、事務所を通すか闇でやるかも、これまた様々。

エキストラ・カメリハなどの出演料

TV出演料より高い時がある。笑う。ほがらかに。

芸人としての支出


芸人としての収入の少なさを嘲笑うかのように、芸人としての支出は非常にデカい。確定申告した時、受付のおばちゃんの顔がくもるほど。そんな受付のおばちゃんを憐れませる、芸人の主な支出をご紹介する。

ライブチケット代

基本的に若手芸人が出るライブは「エントリー料を支払う」もしくは「ライブチケット買取制」。

エントリー料はフリーライブだと、大体コンビ芸人3000円、ピン芸人2000円が相場。「おいおい、1人当たりに直したらピンの方が高くない?間違ってないか?」と思われるかもしれないが、まさにその通りで、ピンの方が高い。謎。

多分「会場を120分借りて1組3分ネタとしたら40組呼べるな・・けど、全組ピン芸人しかこなかったら会場代赤字になるんじゃないか?」って発想なんだろうけど、関係ない。抗議するピン芸人多数。ぼくもその一人。

そんなライブチケット代は、当然ライブに出るほど財布を圧迫する。ネタをがんばろうと思って月20本ライブを入れると、日々のおかずが1品減る。
また、ライブ20本くらいになると、その会場までの交通費も地味にキツい。結果、文明を破棄し、徒歩を選択する芸人が多数生まれる。

衣装代

漫才師はそれほどかからない。普通、「TVの仕事がきた!」など、大きなチャンスが決まった時とキャラに迷走している時以外、漫才師は衣装を変える事はない。

逆にコント師がバカほどかかる。
新ネタを作るたびに新衣装が必要になるため、かなりキツい。一般的なイメージ以上に、衣装のウケへの貢献度は高いので、手を抜けない。

しっかりしているコント師ほどそのあたりは理解しているため、本気のヤツほど妥協はない。激安ショップとドンキをまわり、少しでもイメージにあった安い衣装を探し回る。

ちなみにここまでふり絞ったお金で買った衣装でスベって、家でその衣装をゴミ箱に叩きつけるのがコント師あるある。

打ち上げ代

ライブの後は、芸人は必ず打ち上げに行く。目がキマってるストイックタイプも、基本打ち上げには参加する。
理由は、ここでネタのヒントがつかめたり、笑える話を仕入れたり、トークスキルをあげる練習になったりと良い事が多いため。ちなみにバイトジャンキーは、当然バイトに行く。

打ち上げ会場は激安居酒屋を選択するが、それでもそれなりの金額が飛んでいく。

また、基本的に先輩は後輩の分を支払うため、場合によっては1回で2万近く支払う場合もある。この場合、飲むだけ飲んで一言もボケなかった後輩を誘った時の後悔はひと月続く。

お笑い芸人が貧困を極める理由


お笑い芸人が貧困を極める理由は、下記仕事が不定期に入るため、バイトの固定シフトに入りづらいという事が挙げられる。
そのため、芸人が多く働いているバイト先を選択して、お互いにシフトを助け合うという芸人も多い。

ライブ

毎月固定の決まったライブのほか、先輩に誘われたり、他のライブに武者修行に出たりと、理由は様々だがとにかく不定期にライブが決まる。また、芸歴1〜2年目くらいは先輩のライブの手伝いを頼まれる事も多い。

事務所の手伝い

各事務所によって内容は様々だが、やはり不定期で手伝いを頼まれる。バイトなどの事情を考慮してくれる事務所もあれば、事務所の仕事を優先しなければならない事務所もある。

オーディション

売れてない若手芸人にとってオーディションは最優先事項。これをバイトで休む輩に、事務所は二度とオーディションをふらない。当たり前だけど、財政を圧迫する原因でもある。

急なものだと「3日後オーディションなんで来てください」なんてのもある。基本、オーディション日程は数日候補を設けてあるが、それは他のライブなど、「芸人としての仕事」を優先してもらうため。

本当はバイトだけど、ライブでこの日出れないとか嘘をついても、不思議とすぐバレたりする。

エキストラ・カメリハ要員

これも不定期かつ急遽に依頼がくる。大手事務所だと、基本芸歴1〜3年目の若手が行かされる。

エキストラは誰でも良い場合もあるが、TV局から「見た目イカついやつ」とか指定があると、名指しで行かされる場合もある。

まとめ

今回は、芸人のお金事情についてお話をさせて頂いた。

その実態は事務所や個人の芸人としての売れ具合によって様々だが、一般的なイメージと違う部分もあったのではないだろうか。

このコラムが、みなさまのお役に立つと幸いだ。
ご一読、有難うございました。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。