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凡才・天才どっち?天才と呼ばれるお笑い芸人の特徴・生態を解説

連載
公開日:2023年6月20日 更新日:2023年7月28日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

お笑いの世界は、様々な天才で成り立っている。

「日本の笑いは世界最高峰」との先輩の言葉を信じるのであれば、この日本のメディアに出ている芸人はその全てが世界ランキングTOPクラス。

凡夫には届かない圧倒的な才能を保持している事は言うまでもない。

今回のコラムでは、天才についてご紹介させて頂く。
是非、ご一読頂きたい。



前置き!芸人の世界に「天才」は数多く存在する!

まず初めに「お笑いの天才」というと、それはあちこちに存在すると言わせて頂きたい。

「売れてる」「売れてない」関係なく、世間一般には認知されていない若手芸人の劇場でも、天才は数多く存在する。

「いや、そのレベルは『天才』と認めないよ」という方は、是非一度劇場に足をお運び頂きたい。初めて劇場に来た方の感想が「こんなに面白い芸人が、なんで売れてないの?」というのは最早あるある。

売れている天才を覆す可能性のある天才は、実際劇場にも多く存在するのだ。

更に言えば「売れてる」と言われる芸人全員が、何らかの天才である。

芸人は一言で言ってしまえば笑いをとる仕事だが、その笑いのとり方には色んな方法がある。

簡単にいえば世界最強を目指すにしても色んな格闘技がある訳で、バラエティ番組の現場は、ボクシング・柔道・サンボ・シラットなど、それぞれのジャンルの世界トップランカーがウジャウジャと集まっているようなもの。

なので今回はざっくりと、天才をカテゴリ分けしてご紹介させて頂く。

ちなみにこれはあくまでぼくが思う、勝手なカテゴリ分けと超個人的な思想である。

色んな意見もあると思うが、是非、一意見としてご一読頂けると幸いだ。

己の才能を世間に問う!センスの天才!

他を圧倒する発想・センスによって、天才の名を欲しいままにするジャンルの人々。

世間一般の方々が認知する、謂わゆる「天才芸人」といえばこのジャンル。

このジャンルの芸人は圧倒的な大喜利力を誇り、その大喜利をもってネタ・トーク・企画と、ほぼ全ジャンルにおいてズバ抜けた笑いを作り出す。

彼らの笑いは「ウケる」に加えて「レベルの高さ」も誇示し、このジャンルの芸人のボケは、1ボケ聞いただけでその才能の高さが分かるほど。

鋭角な切り口から繰り出されるボケはオリジナリティが高く、既存のお笑いの学習からは辿り着く事のできない一つの境地。

しかも伝承によると彼らのほとんどが、養成所時代からほぼ同じレベルのボケをしていたと言う。正に異論の余地無き天才。

ほぼ全芸人にリスペクトされ、多くの芸人志望が彼らに憧れて芸人を目指す。

彼らの同世代は、同じ時代に生まれた事を悔いる反面、どこか少し誇らしげ。敗北を認めたライバルに対してそんな感情を抱かせてしまうほど、彼らの才能は輝かしい。

その才能は玄人のみならず世間一般の方にも分かりやすく、だからこそ世間から彼らは「天才」と認知される。


彼ら以外は全員まがい物!?笑いの神様!

「笑いの神様に最も近い人間」が「センスの天才」であるなら、「笑いの神様そのもの」であるのがこのジャンルの人々。

彼らはおよそ計算では作り上げる事のできない笑いの奇跡を、数多くこの世に生み出していく。

芸人という職業の基本はピエロ。人を笑わせるため、歌って踊る道化師である。

だからより面白くなれるよう、芸歴という長い年月をかけて顔を白く塗り、目に線を入れ、鼻に大きな赤い鼻をつける。

そう、芸人は徐々に「芸人」になっていくのだ。しかし世界は広い。
少しでも面白くなれるよう努力している隣をふと見ると、ただのガチピエロが座っている。

彼らは最初から顔は白く、目に線が入り、生えてる赤鼻は我々が付けてる鼻よりデカい。

何もしなくても、既に「面白い」が体現されている本物の怪物なのだ。

彼ら本物に言わせれば、普通の芸人など、ピエロでないからピエロの真似事をしている一般人。

レプリカが本物に取って代わる事が無いように、その次元の差は永久に埋まらない。

「センスの天才」はまだ努力の延長線上に存在し、彼らはあくまで天才と評される「人間」。

だから多くのお笑い好きは「そのセンス、おれも分かる」「その感覚、おれと同じだ」と感じ、憧れ、共感し、カリスマの笑いを模倣する。

しかし、笑いの神たちは、再現性の低い、まさに彼らにしかできない笑いを量産する。

恐らく「彼らになれる」と思っている人間は、芸人の中にすら存在しないだろう。

この才能こそギフトで有り、このギフトを持つ彼らは「種」として全く別の存在。
そして、人は成れないものには憧れない。

そのため天才であるにも関わらず、世間的な評価が著しく低くなってしまうのがこのジャンルの天才。

個人的には改善を要求する。

ちなみにこのジャンルの天才は「ハプニングが起きるから面白い」と評される事も多いが、その本質は全く違う。

ハプニングや失敗はいわば前提で、「そこで起きた小さなハプニングを、この人が何十倍もの笑いに変えている、『その人個人の人間力』が凄い」のだ。

同じハプニングでも笑いになる芸人と、全く笑いにならない芸人がいる。

もし彼らと全く同じ事象が他の芸人に起きたとしても、そこで起きる笑いは彼らの何十分の一。

そう、「あの人だから、笑いになる」という現象は、舞台に立つ芸人なら何度も体験する。

そのためこのジャンルの人々の凄さは、同業者にはイカツイほど伝わっており、同業者からのリスペクトは非常に高いというのも特徴の一つ。

神か魔か!?天才的異常者芸人!

天才鬼才奇人変人が多く集まる芸人界においてなお、他と一線を画す超強烈な個性を持つ人々。

ともすれば病的とも取れる彼らの一挙手一投足は、全く見た事のない強烈なインパクトを舞台に残す。

芸人界に置いてすら、彼らの存在は異質中の異質。

芸人とはどこかピエロを「演じる」もの。
しかし、彼らの笑いはどこまでが計算でどこからがガチなのか全く判別がつかない。

「こういう素体として産まれ落ちた」と言わんばかりに、ほぼ素材のまま勝負をし爆笑を攫う。

その場の誰よりウケる姿は圧巻の一言で、以前「水曜日のダウンタウン」で紹介された「NSC時代に同期一の天才だった芸人、意外とくすぶってる説」の中でも、このタイプの天才が多く取り沙汰された。

舞台のみならずプライベートからハジけている芸人が多く、性格は破天荒にして豪放磊落。しかし超繊細な一面も持つタイプが多い。

いやどっちだよと言われるかもしれないが、この全く別の性格二つが見事に同居しているからこそ、天才の下地ができる。

他人から見てぶっ飛んだ行動も、本人的にはそれほど変わった事をしているという感覚が無い場合も多く、本人はただ自分のやりたい事をやっているだけ。

しかし、彼らの行動は、見ている芸人の心を掴んで離さない。

本来自分が「無茶をしよう」と決意して取る行動を、彼らは「やりたいから」という本能に従って、想定を遥かに超えた行動を取る。

それを極々自然に、サラリと行う。
そう、彼らに取ってそれは日常。別に誰が見ていなくても、同じ行動を取るのだ。

ある意味社会人としては通用しないほど壊れているその人間性は、「こいつ芸人で無ければ死んでいる」と周囲に思わせる。

そしてそんな人間が、芸人は大好きだ。

恐らく一般の方より、芸人の方がこの天才を愛す。
芸人評価はダントツ高いが、世間に刺さるかは運次第なのがこのタイプ。

圧倒的なスーパースター!華の天才!

人気者になるべくして生まれてきた、スーパースターの素質を持つ天才。
彼らの言動にはいちいち華があり、見る者全てを釘付けにする。

どの現場に行っても彼らを中心に人が集まり、彼らを嫌う人間は、妬む芸人仲間以外には現れない。

「華」というものは本当に大事で、努力では得られない才能の代表格。

この「華」は、「売れたら華が出た」という言葉を聞くように、世間の認知度・注目度に連動する側面もある。

他の芸人がそれを得るためには「面白いネタ」「賞レースでの結果」「メディアでの躍進」など、努力し作品を作り、評価を得て、認知・注目を得てから初めてつかむもの。

もちろんここに至っても「全員に華が出る」という訳ではない。

時々王者になっても地味と言われてしまう芸人もいるように、自分達のできる事全てをやったとしても、得られない者は、得られない。

しかし、最初から華のある芸人は化け物で、芸歴1年目だとしても、舞台に登場した一瞬で「こいつスターだ」という事が分かる。

その華は実にTV的で、彼らを世間とメディアは放っておかない。
結果、お茶の間の人気者として末永く世間に愛される。


まとめ

今回は、「天才」についてご紹介させて頂いた。
上述の通り、これはぼく個人の勝手なカテゴリ分けと勝手な解釈である。

基本的に、「ズバ抜けた才能」もしくは「努力で得る事ができないギフト」を持っている人が天才と呼ばれる印象だ。

みなさんも自分独自の尺度をもって、天才を探してみるのもおもしろいかもしれない。

このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。
ご一読、ありがとうございました。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。