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お笑い芸人になりたい人へ。芸人になる前にしておくとよい4つの準備

連載
公開日:2021年6月11日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

みなさんこんにちは。
芸歴10年目。王様ゲームの命令で合コン途中で帰宅させられた、吉松ゴリラです。

今回のコラムでは、お笑い芸人になるためにしておいた方がいい事をお話しします。

結構大御所の先輩方が10年近く前から言っている事は、「直接芸人を目指すのではなく、一度他ジャンルで成功し、注目を集めて、そこでTVに出て、芸人ぽい事をする」です。

例えばボクシングで世界チャンピオンなってTVに出て、いざ話してみたらめっちゃおもしろい・・という入口から入るという事です。

「いや世界チャンピオンなるくらい努力するなら、芸人としてネタ磨くのに努力するわ!」という声が聞こえてきそうですが、コレは結構まじめに先輩方のお話通りで、それほど「芸人という肩書きで売れる」という事は、現在難しいという事です。

とはいえ、他ジャンルから芸人になるルートではなく「直接お笑い芸人になりたい!」という人の方が多いと思うので、芸人になるまでにしておいた方がいい事をお話しします。

お笑い芸人が飽和状態になっている原因

現在、お笑い芸人界はパンパンの飽和状態に達しており、若手の入るスキマというのがほとんど存在しません。
原因は色々あります。そしてその原因のほとんどが、若手芸人個人の努力で何とかできる範囲を超える問題から起因しています。

大御所が今なお現役でやっている

20年前のTV欄と現在のTV欄を比較したら、ほとんど演者が同じだったと以前話題になりました。TVの視聴者層がやや高齢化してきており、その年代が求めている人たちは、彼らが若いころから見てた方々になるので、当然大御所が求められます。

芸人になりやすくなった

昔は芸人になるには弟子入りするしかなかったが、最近ではお笑い養成所から芸人なる事ができるようになり、芸人がめっちゃ増えています。
吉本興行の養成所だけで、毎年2000近く増えていた時もありました。1人の師匠に数人の弟子・・という時代に比べると、鬼の増え方をしていて、それが全員ライバルです。

深夜帯の枠が「若手中心」から「売れてる芸人」になった

昔は深夜帯の枠が「若手お試し枠」で、若手芸人を中心に作っていましたが、現在はTV局のスポンサー減少によりここも「確実に視聴率を取れる売れてる芸人」がやっており、いよいよ若手芸人の出る場所がなくなってきています。

芸人に必要な要素

直接お笑い芸人になりたい際は、お笑い界が飽和状態であることを踏まえて準備をしましょう。
芸人に必要な要素はざっくりと3つです。
これらを事前に磨いていると、スタート時少し有利です。

【芸人に必要な要素】
・ネタのおもしろさ
・平場のおもしろさ
・キャラクターの魅力

ネタのおもしろさを磨くための準備

TVで漫才やコントを見ながら、「こういうパターンがあるんだ」とか「こうしたらウケるんだ」というのをなんとなく自分なりに分析しましょう。

ただ、ボクシングと同じで「ジャブの打ち方を知っている」と「実際にプロでも通用するジャブを打てる」までには大きな開きがあります。
ネタは実際に作ってライブでかけて、ウケるウケないのフィードバックがないと、良し悪しが分かりません。

ライブにかける環境がないのであれば、100本ネタを書いたとしても、下手したらずっと同じパターンのウケないミスを繰り返し使い続けたネタを書いている事になるかもしれません。
なので、個人的には、これは芸人になってからで良いと思います。

ただし、賞レースチャンピオンを目指すのであれば、スタートは早いに越したことがありません。
今は学生漫才や一般の人も出られるライブなんかもあるので、興味がある人はガンガンネタを書いて、ライブにかけていきましょう。

学生時代に3年やれば、芸歴3年分は自身にネタ知識・経験のストックができます。
お笑い養成所に入ったとき「今日初めて漫才します・・」という人たちより一歩抜きん出て、良いスタートダッシュを切る事ができます。

抜群に抜きん出たら、その期のエースとして、事務所に推してもらえる可能性もあります。

平場のおもしろさを磨くための準備

漫才・コント・ものまね・ギャグ・エピソードトーク・・全てのお笑いに使える万能ツール、「あるあるネタ」をストックしていきましょう。

【あるあるネタテーマ】
・学生時代
・恋愛
・バイト
・家族間のモメ事 …etc

TVを見ていると、40才を超えている芸人が、未だに学生時代のエピソードを話していたり、恋愛話をしていたりします。
そして注意深く見ていると、結構な割合を占めています。

なぜかというと、それは相手が誰であろうと理解ができる「老若男女問わず経験をしている共通点」だからです。
誰が相手でも共感を得られるテーマなんですね。

誰が相手でも共感を得られるテーマというのはそれほど多くありません。
社会人になってからは、みんな別々の職業について、別々の人生を歩みます。

結果、初対面で共感を得られる共通の話題というのが少なくなるのです。

なので、先ほど挙げたテーマのあるあるネタや、失敗談、体験談をストックしていきましょう。
社会人になっている人は、無理矢理にでも記憶から掘り起こしていきましょう。
また、今の環境でもどんどんあるあるネタをストックしていきましょう。

「無いと笑いを取れない」というものではないのですが、「あるとバカほど便利」な万能ツールです。

ちなみにそんなわけで、いま中学・高校生で「芸人になりたい」と思ってる人は、絶対に高校までは出ておいた方がいいと思います。

中学・高校時代の経験は死ぬほど貴重です。たくさんの笑いに変わる財産です。そして今の時期を逃したら、後から得る事はできない換えの効かない時期ですね。

毎日楽しみながら、山のようなあるあるネタのストックを作ってください。

キャラクターを磨く

お笑い養成所生になった時から何度も聞く言葉で、「君たちは【商品】だ」という言葉があります。

芸人は形がないだけで、電子レンジやスマホのように、【商品】なのです。

では何を売っているか?
それが「ネタ」であり、「キャラクター」です。

では、どういうネタやキャラクターを作ればいいか。
これも同じく何度も聞く言葉で、
「『この芸人ってどういうヤツ?』に【一言で特徴を答えられる】ネタ」
「『この芸人ってどういうヤツ?』に【一言で特徴を答えられる】キャラクター」です。
簡単にいうと「シンプルで分かりやすく、かつ他と差別化できているネタ・キャラクター」ですね。

ここまで出来て、初めて商品棚に並べてもらえます。
おもしろいのは前提で、他の芸人にない独自の特徴が必要なのです。

ネタは上述した通りなので、ここではキャラクターの深め方をお話しします。

自分の大好きな事を深める

まずは、自分が好きな事をどんどん深めていきましょう。テーマはなんでもいいです。
もし戦略的にいくのであれば、「みんなが興味あるけど、ライバルがいないジャンル」がベストです。

【大好きな事はこんなのでもいい】
・まんが
・プロレス
・ダンス
・歌 …etc

ちなみに芸人として売れるための準備という事で考えると、「この道ならプロ以外には負けない」くらいまで知識・技能を深め、特技としての売り出し方を考えましょう。
そうするとその特技を使った笑いができるようになり、他の芸人に無い特徴を出す事ができます。

ちなみに「歌やダンスは分かるけど、まんがとか特技になるの?」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、十分に特技になり、例えば、インポッシブルさんは
『こち亀のまんがの表紙を全部覚えているので、その巻数を言ってもらえればその表紙の両津勘吉のものまねができる』
といった特技で爆笑をとっています。

「自分という人間」を深める

お笑い芸人は、人に笑ってもらう仕事です。基本的に、(一部の人にでもいいので)人に好かれる、魅力的な人間でなければなりません。

芸人としての魅力をキャラクター化という事で考えた場合、一般の人にない、自分独自の考え方や主張という事になります。

【自分独自の主張・考え方】
・めちゃめちゃトガってる
・借金する事を何とも思っていない
・趙S級の健康志向
・筋肉至高主義者
・病的なほどの潔癖症 …etc

キャラクターにウソがあると簡単にバレるので、できる限り本来の自分通りのキャラクターの方がいいでしょう。
※クズキャラブームの時に有象無象のクズキャラが地下ライブに出てきましたが、付け焼き刃なのでエピソードが薄すぎて、劇場各地で大惨事が起こりましたw気をつけましょうw

なので、「他の人と違う」と感じた考え方・主張は大事にしましょう。

ちなみにツッコミは、基本的に「お客さんの代弁者」という良識を求められる立場なので、舞台で自分独自の主張をするときはタイミングを見なければなりませんが、持っていて損はないです。

とにかく笑いをとっておこう

芸人になる前に、とにかく笑いをとっておきましょう。
毎日毎日笑いをとり、笑いをとることに慣れておきましょう。
それにより、自分がボケ向きなのか、ツッコミ向きなのか、マワしは上手いのかなど、得手不得手の特徴をつかむ事ができます。

これは別にクラスの人気者になれと言っているわけではなく、クラスの三軍の仲間内でもいいですし、友達がいないならラジオ職人的なものでも何でもいいです。
とにかく笑いをとって、自分の笑いをとるスタイルを確認し、深めておきましょう。

ちなみにお笑い養成所レベルだと結構いるのが、「おもしろくなりたいから芸人になった」という人です。
個人的には芸人というものは誰でもなっていいと思っていますし、「おもしろくなりたい」という思いで入ってくる人も全然いて良いと思います。

しかし、残念ながら、おもしろくない人が芸人になって、劇的に伸び、芸人として大成した例というのは未だに0です。
(※吉松調べ。いたらごめんなさいw)

「芸人になっておもしろくなる」ではなく、「おもしろいヤツが芸人になる」という前提で行動した方が良いかと思います。

まとめ

今回は、お笑い芸人になるためにしておいた方がいい事をお話しさせて頂きました。

あまりにざっくりとした話になってしまうので、本文には書きませんでしたが、個人的には「全力で今の自分を楽しむこと」もとても大事だと思っています。
家族といる自分を楽しむ、趣味に時間を費やしている自分を楽しむ、友達といる自分を楽しむ、友達と上手くいっていない自分を楽しむ、恋人といる自分を楽しむ、恋人にフラれた自分を楽しむ・・

楽しんでいる時間には必ず笑いがあり、その笑いを人と共有し、また笑いあう事でたくさんのエピソードが生まれます。
大好きな人とたくさん笑って、たくさん遊び、たくさんおもしろい事をしてください。

きっとそれが、芸人になったとき財産になると思います。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。