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お笑いライブの”企画”コーナーとは?企画の種類や各特徴、立て方

連載
公開日:2022年8月9日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

お笑いライブには、「ネタ」の他に、「企画」のコーナーがある。
この企画は、芸人がネタ同様頭を捻り考えるものである。

今回のコラムを読んで頂ければ、
・企画のコーナーとは一体何か?
・ネタ系企画の種類!
・各ジャンルの企画の特徴!
を、ご理解頂ける。

是非、最後までご一読頂きたい。



一体何なんだ!?「企画」のコーナー!

お笑いライブに来た事がない人には耳馴染みがないかもしれないが、お笑いライブには「企画コーナー」というものがある。
このコーナーは芸人のネタブロック前半と後半の間に、大体15〜20分前後おこなわれる。

ネタというものは結構凝縮されたお笑いで、基本的に一行も無駄なセリフはない。
そうすると、ネタを見るお客さんにも相応の集中力が要求され、長時間続くとお客さんが疲れてしまう。
例えば1組4分のネタを20組前後見るとなると、約1時間半ほど無名芸人に全集中する事になり、これは慣れてないと結構キツい。

なのでネタとネタの間に、そこまで凝縮されていないライトなお笑いの時間を作る。
それが「企画コーナー」。ここでお客さんに息抜きをしてもらい、再びネタ後半ブロックを集中して見てもらうのだ。

そしてその企画の立案は大体芸人が担当するが、何となく各々好きなジャンルがあり、それに則した企画を立案する。
それでは以下、4ジャンルを愛する人々を紹介する。


芸人と言ったらネタだろが!ネタ系企画を好む人々!


「芸人は兎にも角にもネタじゃろがい!」と、漫才・コントに飽き足らず、コーナー企画でもネタを披露したいと息巻く芸人の鏡ともいえる人々。
ネタのゼロイチを作るボケ側に多そうだが、ツッコミ側にも多く存在する。
恐らく性格。「ネタで全員ぶっ潰す!」と目がキマっているネタ職人と、お祭り参加型のツッコミに多いイメージ。

ネタ系企画はギャグ・漫才・コント・特技など、要は事前に準備・稽古したものを発表するタイプの企画が多い。
基本的に一ジャンルに絞り込んで企画とする。実際に今まであった、一例がこれ。

ギャグを中心とする企画「瞬斬(しゅんぎり)」!

MCの呼び出しと共に芸人が舞台袖から飛び出し、ギャグをし、即ハケるというもの。
その間たったの10秒で、「10秒以内に笑いを取る」という超ストイックなギャグバトル。

このハードボイルドなコンセプトに胸を熱くしたぼくの同期も多数参加し、全員が持ち時間10秒を使い切りスベるという偉業を成し遂げた。

シャッフル&即漫才!即興漫才ネタバトル!

くじ引きによりコンビをバラバラにシャッフルし、その即席コンビで即興漫才をおこなうという企画。
時々本ネタすらウケていない地下ライブの底辺芸人の集団内でもおこなわれ、一体誰がそれ見たいんだという暗い影をライブに落とす。

基本的にネタのクオリティは低いものの、即興漫才なのでハードルが下がるためお客さん次第では意外とウケる。
ウケポイントはあわてふためく芸人の姿や全然かみ合わない言葉の応酬などのハプニング的要素も多いため、浅草キッドの「笑われるんじゃねぇ、笑わせるんだ!」の見事逆をいく。

極稀にくじ引きの結果本来のコンビ同士が組む事があり、割とカッチリとできた漫才が、ハプニングを求め出したお客さんの「そういう事じゃねぇ」という空気でスベってしまうのがこの企画のあるある。

引いたカードで即興コント

事前にお客さんに紙を配り、各々好きな単語を書いてもらう。
そこからその紙を回収、床に散りばめる。

後はお客さんからお題となる「名探偵」等のコント設定をもらい、事前打ち合わせなくその場で即興コントをするというもの。
その際ルールとして、コント中は床に落ちている紙を拾い、拾ったら必ずそこに書いてある単語を言わなければならないという縛りがある。

結果、「名探偵」の設定で「この事件の犯人は・・『バナナ』だ!」というちぐはぐな部分を、つじつま合わせをしながらどうにかこうにかコントを進めるという企画。
単語次第だが、ちぐはぐさで結構ウケる見やすい企画。

これが令和の大道芸!特技披露!

芸人は年末年始、ネタと同じく特技の需要が高まる。
そのため、芸人は誰もが何某かの特技を習得しており、その特技No.1を決めようというコンセプトの企画。

基本はMCをたてゴングショー形式でおこなわれる。
披露される特技は、「ジャイアントスイングをされた状態で、テーブルクロス引きをする」などの常軌を逸したものから、「寝転がってお腹でマシュマロを飛ばして、口でキャッチする」というだから何だという特技まで様々。

基本的には全員ウケるイメージだが、時々知識披露系は「おぉー・・」と納得の声が上がり、一瞬盛り下がるのが通例。


令和のさんまさんにおれはなる!トーク企画を好む人々!


トーク企画は、ほぼ全芸人が好んで参加する。しゃべりたい事がたくさんあるし、ウケた話は今後使える財産になる。
兎にも角にもしゃべる仕事なので、ネタのストックは大いに越したことはない。
仄暗い闇に沈む暗黒芸人たち以外は、基本的に好意的。

トーク企画はそのテーマの広さから、あらゆる切り口で加工が可能な企画。

・「バイト」「恋愛」など、ジャンルを絞ったトーク企画
・「下ネタエピソード -1グランプリ」など、アングラ感が出るトーク企画
・前の人がしゃべった内容に類似する話を、次の人も話さなければならない数珠繋ぎトーク企画
・お客さんが言ったお題に対し、芸人が手持ちのトークをするアドリブトーク企画 ・・etc

ちなみに余談だが、トーク企画は地下芸人のライブ担当をしている売れていない作家が、手を抜いた時に乱発するイメージ。
テーマだけ出せば「後は芸人が各々話を持ってきて!」とできるこの企画は、ゼロイチの頭をほとんど使わなくては良いため非常に楽。
そしてそのイメージをぼくに植え付けたのは、ぼくが出ていたライブの作家(先輩)。

毎月毎月固定メンバーでおこなわれるそのライブには必ずコーナー企画があり、そのコーナー企画で活躍する事により、ネタでは分かりにくい芸人のパーソナルな部分をお客さんに知ってもらえる。
そのため、芸人の力試しの場であると同時に、「コーナー企画が一番好き!」というお客さんもいるほどみんなが楽しみにする時間でもあった。

しかし、その作家は12月に「年末の想い出」、1月に「正月の想い出」、2月に「バレンタインの想い出」、3月に「卒業式の想い出」と、4ヶ月連続でトーク企画を断行。
恐らく2秒で考えられるこの想い出シリーズは、流石に4ヶ月目で全芸人にシカトされ、リハーサル時にみんなで別企画を緊急で作った。

この時点でぼくの芸人人生で手を抜いてる人間No.1なのだが、後程なぜこのような事をしたかと問うと「このライブでは三千円しかもらってないが、おれは他のライブでは一万円もらえる男だ!それならおれは、手を抜くだろ!」とビッグダディ張りの開き直りを見せ、彼はぼくの中でNo.1からOnly.1の存在となった。


次世代カリスマ爆誕の場!大喜利系企画を好む人々!


大喜利系企画は、芸人の中でもハッキリと好みが分かれる。
参加する芸人は常に参加するし、不参加の芸人は常に不参加。

ちなみに大喜利に参加する芸人は大喜利が得意な芸人ばかりではなく、「大喜利は苦手だけどすごく好き!」というキラキラした若手芸人達も多く参加する。

なお、大喜利企画でハネた芸人は、一気に芸人間で一目置かれる存在となる。
芸人が無条件に尊敬する二大要素は「ネタが強い」と「大喜利が強い」。

その他、トーク力やアドリブ力なども当然尊敬の対象にはなるのだが、この2つは別格。
そして大喜利企画でハネ続けた芸人は、カリスマ性を帯び出す事もしばしばだ。

なぜなら大喜利は、「才能の差が分かりやすい」から。大喜利が苦手な人が才能がないと言っている訳ではなく、この「大喜利」というジャンル内での、自分と他人の実力差が明確に分かりやすいのだ。
そのため「今の時点でおれ、こいつに負けている!」とハッキリ分かるため、勝ちに勝つ芸人に尊敬が集まる仕組み。

一般の方で「おれおもしろいから、芸人にもトーク負けないよ!」という人はいるが、「おれおもしろいから、芸人にも大喜利負けないよ!」という人はいない。
ぶっちゃけこう芸人にカマしてくる人の9割9部9厘はトーク力でも惨敗を喫している訳だが、なぜこのような誤解を生むかというと、その力量差が明確に分かりづらいからである。

その他のコーナー企画を愛する人々!

上述した内容に当てはまらない、その他のコーナー企画。
これらは結構突発的思いつきや、普段の人間関係の延長線上で生まれる事が多い。なので「ネタ感満載!」という企画を嫌う人が好むイメージ。

例えば事務所の先輩の「◯◯さん被害者の会!◯◯さん緊急裁判!」という断罪企画や、「みんなで大縄跳びを20回跳ぼう!」という、誰が見たいんだという企画まで様々な催し物が開催される。
ちなみに大縄跳びは、参加したのが無名芸人10名だったのにも関わらず、意外と盛り上がったという謎を芸人界に残している。


まとめ

今回はお笑いライブと切っても切り離せない関係、「企画」についてお話しさせて頂いた。

文中少しお話しさせて頂いたが、地下ライブの場合、企画は基本的に芸人が考える。
地下ライブレベルでは作家さんを雇うお金は無いし、そんなお金を使うくらいなら打ち上げでもう一軒回りたい。
そのような思いから、若手芸人は頭をフル回転させ、企画を立案する。

この企画を立案する能力はボケ・ツッコミなどのお笑い的発想とはまた違うジャンルの能力で、芸人間でもこの能力の有る無しはかなりハッキリと分かれる。
そのため各事務所に数名「企画といえばこの人!」という芸人がおり、先輩から自分に全く関係ない企画を丸投げされることもしばしばである。

このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。
ご一読、ありがとうございました。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。