お笑い芸人を目指すのに年齢は関係ある?遅くから目指すメリットデメリット
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
みなさんこんにちは。
芸歴10年目。大飯ぐらいのでくのぼう、吉松ゴリラです。
ぼく自身、29才で吉本興業のNSCに入学し、芸人を目指しました。当時でいうとかなり後発組です。
その経験から考えると、芸人を目指す年齢は「関係ないけど関係ある」という印象です。
もう少し具体的にいうと、ぶち抜きでおもしろければ関係ないけど、そうでなければ後ほど挙げる数々のデメリットに潰される可能性が高いです。
このコラムを読んでもらうと
・芸人を目指す年齢が上がるメリット
・芸人を目指す年齢が上がるデメリット
が分かります。
是非、最後までご一読ください。
目次
お笑い芸人を目指す年齢が上がるメリット
芸人を目指す年齢が上がるメリットがこちらです。
【メリット】
・豊富な人生経験をネタに反映できる
社会人としての経験がある事は、「その人ならではのネタ・エピソードトークができる」という事につながります。
一般の方のイメージ通り、ほとんどの芸人志望は高校・大学を卒業してから芸人を目指すので、社会人経験というものがありません。
そのため、若手芸人のエピソードトークのほとんどは「バイト」や「合コン」などのジャンルで構成されており、トークジャンルが鬼カブりしてしまいます。
その他、大勢にできない分野のエピソードを持っているという事は大きな武器です。
これは後発組にとって、大きなメリットになるでしょう。
また、特殊な仕事についていると、なお良しです。
脱サラ芸人も結構いるので、その中でもみんなが「え!?そんな人が芸人やってるの!?」と思う職種だとかなり注目度が高まります。
さらに一歩、抜きん出る事ができるでしょう。
皆さん今日もピカピカ笑顔で🎵 pic.twitter.com/9FztkMr40b
— やす子 (@yasuko_sma) August 8, 2021
もちろん、特殊な仕事についてるからといって、「いきなり注目が集まりまくってTV出演できる」というほど甘くはありません。
現在、芸人界にはほとんどの職種がそろっています。
元医者・弁護士・税理士・Jリーガー・自衛隊・キックボクシング新人王など、芸人だけで一つの街を作っても足りない職種はないんじゃないかくらい、あらゆるジャンルの職種が揃っています。
当然変わった職種とは、「注目度・オリジナル性の高いおもしろさ」を作りやすい「素材」なので、ネタ・エピソードトーク・特技に応用し、研鑽して強力な武器に仕上げていく事が大切です。
お笑い芸人を目指す年齢が上がるデメリット
芸人を目指す年齢が上がるデメリットがこちらです。
やはりメリットより、デメリットの方が多くなります。
【デメリット】
・養成所で、やや肩身が狭い
・コンビを組みにくい
・事務所に所属する場合、年齢制限がある
・芸歴10年目で30才か40才かはデカイ(自分より年上だと、芸人以外の人の接し方が変わる)
養成所で、やや肩身が狭い
上述した通り、芸人を目指す人のほとんどは高校・大学を卒業してすぐその世界に入ります。
ちなみにこちらが、ぼくが入学した当時のNSCのクラスの年齢の内訳です。
【1クラス約50名での、年齢の内訳】
・38才の人:1人
・30才前後:3〜4人
・25才前後:5〜10人
・20才前後:30〜40人
他クラスもほとんどが上くらいの割合だったと思います。
クラスによっては、20才前後が8割近くにもなる場合があります。みなさんもお分かりかと思いますが、この頃の年齢差は1才でもかなり大きいですよね。
25才でも「あっ、結構トシいってるんすね・・」という扱いされるので、30才を超えた芸人は全員が一世代前のおじさん扱いされます。
人によっては、同期に敬語を使わます。
また、30才を超えだすと芸歴10年くらいの先輩でも年下の人がいたりします。当然芸歴が全てなのですが、なんとなく先輩が気を使ってくれたりしてるのを感じると、独特の居心地の悪さを感じたりします。
コンビを組みにくい
基本的には、みんな近い年齢でコンビを組みます。
笑いの価値観が近かったり、単純に話があったりと理由は様々ですが、あえて年齢が離れた人間とコンビを組みたいという人は稀でしょう。
もちろんお笑い能力が高かったり、何か一芸に秀でたりしていればその能力でコンビを組めますが、このデメリットは年齢が上がれば上がるほど顕著になります。
その理由は単純で、年齢が上がれば上がるほど、残っている芸人の数も少なくなっていくからです。
「芸人として優秀であり」「自分と芸風が合い」「一生コンビとしてやっていけそう」な人間というのは、少ない母数の中からは中々探す事ができません。
中には、戦略的に年齢差を狙った「20才と40才のコンビ」などの組み方をする芸人もいますが、基本的に自分の能力が頭一つ抜きん出ていないとコンビを組む事は難しくなります。
同期の鎌鼬の番組に出させてもらってめちゃくちゃ楽しかった、鎌鼬はやっぱ凄いコンビだわ。
それにしてもこの山内の写真はなんなん?ゆっくりとすしざんまいの社長に変化していってるアハ体験の写真みたい。#鎌いったーTV pic.twitter.com/yHW74V4Qbb— パンサー・菅 (@pan_ryotaro) January 9, 2020
事務所に所属する場合、年齢制限がある
多くの事務所には、入所する年齢制限があります。
以前、ソニーは年齢無制限の事務所でしたが、それでも最近「40才まで」という年齢制限ができました。
基本的にこの年齢制限は「30〜35才」が一般的で、その年齢を過ぎると、「入りたい事務所に入れない」という事になります。
このデメリットは、フリーになった芸人にとって厳しい制限です。
吉本興業の場合、養成所の卒業生は全員所属できますが、ほとんどの事務所は、養成所卒業のタイミングで所属できる人数が絞られます。
所属できなかった芸人はフリーとなり、地下ライブに出続けて力をつけ、所属をかけて事務所のオーディションを受けます。
合格の基準は事務所によっては色々な方針があると思いますが、ぼくが聞いた中では「おもしろくて年齢が高い芸人より、おもしろくなくても年齢若い芸人の方がほしい」という事務所もありました。
そこまで極端ではないにしろ、即戦力となる芸人以外は、若い方が重用されるのは間違いないです。
事務所に聞く、若い芸人の方がほしい理由
同じだけおもしろければ当然若い芸人の方が何かと便利です。
まとめるほどでもありませんが、以下、何となくよく聞く理由をまとめました。
・若いお客さんをよべる
・SNSを活用したバズり方が期待できる
・事務所の手伝いなど、労働力として使いやすい …etc
ちなみに・・・、
現在、以前では考えられなかった「事務所に所属しない」という選択肢もできるようになりました。
理由として、「TVの仕事と営業が、収入のほとんど全て」という時代と比べ、SNS・YouTubeなど「事務所を通さなくても稼げる収入源」が確保された事が挙げられます。
この場合は、事務所に所属するうんぬんの年齢制限のデメリットは当てはまりません。
詳しくは、「現役お笑い芸人が教える無所属芸人のメリット・デメリット、成功するためのポイント」をご覧ください。
芸歴10年目で30才か40才かはデカイ
真面目に芸人をやり続けて芸歴10年も経つと、ある程度お笑いの基礎ができあがり、できる事も増えてきます。
鉄板のネタやエピソードトークなど武器も増え、ピンポイントでチャンスが回ってきても、ある程度結果を残せるようになります。
そのタイミングで、30才か40才かは、かなり大きな違いです。
例えば、能力の高い放送作家・演出家さんが「まだ発掘されてない芸人の中から、おれがバズらせる芸人を探そう!」となったとして、やはり自分よりはるかに年上の芸人は選びづらいでしょう。
芸人がおもしろいといってもそれは舞台上のことで、TV業界の事は第一線でやっている放送作家・演出家さんの方が上です。
ある程度同じ目線で話せ、時にはガシガシ言い合える、年の近い芸人から選ぶのが普通です。
まとめ
夢じゃないところで逢えました。 pic.twitter.com/SCI0eGYU5J
— 渡辺隆(錦鯉) (@takashi_watanab) March 11, 2021
今回は、芸人を目指すのに年齢は関係あるのかをお話しさせて頂きました。
最初に記載した通り、結局「芸人はおもしろいかどうか」なので、突き抜けておもしろければ年齢なんて関係ありません。
現在、芸人界では「オールドブレイク」という言葉がある通り、第7世代とは対局の高年齢の若手芸人が活躍しています。
2020年のM-1グランプリでは、史上最高齢の錦鯉(長谷川さん:49才、渡辺さん:42才)さんがファイナルステージまで突き進み、2021年のおもしろ荘ではやはり史上最高齢の野田ちゃん(45才)さんが出演して大きな話題となりました。
上記に挙げたデメリットは確かに存在しますが、芸人を目指すくらいなら「そんなデメリットこっちから潰してやるよ!」くらいの意気込みの方がいいと思います。
今回の記事が、みなさんのお役に立つと幸いです。
ご一読、ありがとうございました。
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
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