お笑い芸人志望必見!芸人仲間から好かれないNGな笑いの取り方
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
笑いを取る方法は多種多様、恐らく現段階で発見されていない手法も存在すると思う。
しかし、中には様々な理由から、あまり乱発すると芸人仲間から嫌われてしまう笑いの取り方も存在する。
今回は、「芸人から好かれていない笑いの取り方」をご紹介させて頂く。
芸人志望の方は是非このコラムを読んで、養成所で先輩に叱られる確率を減らしてほしい。
目次
おれは王様!下げ(さげ)の笑い!
その現場を支配する王様にのみ許される笑い、「下げの笑い」。基本的にこの笑いは、自身より相手を下に置く事で成立する。
例えば「何かやれよ」という無茶振りに代表されるパワハラ的な笑いの取り方や、過度な容姿イジりに代表されるセクハラ的な笑いの取り方などが挙げられる。
ちなみにコレ、「下げの笑いが悪い」というよりは「王様でないのに下げの笑いをする事が悪い」という感じ。
実際TVの大御所MCクラスがやって爆笑をさらっているため、なぜ若手がやってはいけないのか分かりづらいので、簡単な解説の後、この「下げの笑い」で失敗する芸人のタイプをご紹介する。
「下げの笑い」はなぜダメなのか?
まず先述の通り、「下げの笑い」は前提条件として、王様にしか許されない笑いなのである。
一般の方で言うと、会社の社長と社員で考えて頂ければ分かりやすい。
飲み会で社長が部下のノリに「ちょっとおもしろくないな」と言っても周りは笑うが、逆に部下が社長に同じ事を言ったら場が凍りつくのと一緒。
つまり、まず第一に「下げの笑い」を行っている人が、「その場で圧倒的に立場が上の人である」事が必要。
これはTVだと、「大御所」と呼ばれる立ち位置の芸人・女優・俳優さんなどが挙げられる。
では若手芸人の場合、この「立場が上」は何に該当するのか?
それは舞台上の芸人・お客さん含めて納得するレベルの、「圧倒的におもしろい」である。
若手芸人の場合、舞台を観にくるお客さんはその芸人を初めて見る場合が多い。
つまり、下げの笑いをする場合、「その日のライブで爆ウケをして」「圧倒的なおもしろさを見せつけたその後」「下げの笑いをして良い」という事になる。でないと笑いにならない。
芸人はおもしろいやつが一番偉く、ここのリスペクトは関東関西を問わずに一緒。
要はおもしろくないやつが、「それ、おもしろくないな」と言っても舞台上の芸人・お客さん共に「誰が何言ってんだ、バカ」となり、笑いにならない。
そのライブ中に「こいつが『おもしろくない』と言ったら、間違いなくそれはおもしろくないんだ」と納得させるほど笑いを取りまくった芸人でないと、「下げの笑い」は成立しないのだ。
「下げの笑い」で失敗する人々!
「おれはイジる側、こいつはイジられる側」という勝手な自意識の元で「下げの笑い」を行い、自身の無茶振りでスベッて傷を負わせた芸人に対し「おもんな!」という一言で、更にとどめを刺しにくる人々。
これをやられた芸人は、その日の恨みをもれなく日記に書き記し、一生恨める相手ができた事をほくそ笑む。
基本的に無茶振りは、「相手がスベッた後に救う」までがワンセット。救うスキルがないのに無茶振りを行う事はタブーであり、それを行った芸人は即芸人失格の烙印を押される。
また、現在は「スベッた後『おもんな!』と切り捨てる事は、誰でもできる」という考えから、「切り捨てる系のフォローを行う芸人は腕がない」と主張する若手芸人も多い。
そんな彼らに「じゃあどんなフォローが正しいんだ?」と聞くと、高確率で「今田耕司さんのフォロー」と返ってくる。
実は芸人間でこういう話になった時に真っ先に上がるのは今田さんのフォローの上手さであり、スベッた芸人を助けながら爆笑をさらうコメント能力は若手芸人の憧れ。
もしかしたら若手芸人が「切り捨てる事は一般人でもできる。
プロならその上のフォローを」という考えをしだす、発端になったかもしれない人物。
原語で下ネタ、放送禁止用語を言う人々!
女性器の名前や、宗教・政治的にタブーな事を言語で言う人々。
「いやそんなやついるの?」と思われるかもしれないが、芸歴3年以内ではちょくちょくいる。
彼らは何のひねりもなく下ネタを原語で言い、「舞台でこんなイカれた事をしちゃってるぜ」という己に酔う。
その口から繰り出される話には特にオチもなく、ひねりもない。
ただタブーを犯すという事がおもしろいと勘違いした芸人界のロッケンローラー。
当然おもしろい事を言っていないので笑いはないが、反省会で再度彼らは「客がついてこなかった」とロックを奏でる。
彼らの話は「シモの話」であり「下 “ネタ”」ではないのだが、その事実に気が付かず、今日もどこかでロックを奏でる続ける。
「できないが故の”ツッコミスタンス”」を取る人々!
これは個人というよりは、コンビの話。
通常コンビであれば、どちらかがボケや笑いどころを作る作業を行う。
しかし、コンビ揃って笑いを生む事ができないため、お互いが「相手にツッコむ」というスタンスで自分の役割を保とうとする人々。
このような人々は「相手が噛んだ」「相手がスベッた」「おい、おまえのしゃべる番だろ」など、「相手ができない」部分をツッコむのだが、それが双方ともに「相手ができない」というツッコミを行うため、お客さん的には「二人ともできねーじゃねーか」となり、互いが互いに揚げ足を取っているだけの無音の舞台となる。
カリスマモデルやスーパーミュージシャンなど一芸が認められているわけでもない、何のバックボーンも持っていない若手芸人は、「何かができる」所を見せる事が必須なのである。
君のスベりに価値はない!スベり笑い!
今はそれほど見ないが、一時期少しだけ流行った、スベり笑いをする人々。
しかし今も、古代種さながら時々耳にする。
「スベり笑い」は、読んで字の如くスベる笑い。
正確には「スベッた後のフォローの一言で笑いを取る」という笑い。
どういうフォローかというと下記のようなものであり、下記一例は一般の方もいくつかご存知ではないだろうか。
【スベり笑いのフォロー例】
・何、この空気!
・今、笑う所ですよー!
・今笑わないと、もう笑うとこないですよー!
そもそも世間一般の感覚から言うと「売れてない芸人 = おもしろくない」訳で、おもしろくない芸人のスベりには何の価値もない。
売れたいのであれば、何かが「できる」笑いを求められる。
なのでスベり笑いを乱発している芸人には、裏で先輩が「それじゃ売れないよ」とそっと真実を教えてあげる。
「スベり笑い」は普段爆笑をとりまくり、売れて立場が上がった芸人が「たまにスベる所を見せる」から価値があり、これも「圧倒的におもしろいと周知されている事」が前提の笑いなのだ。
何もしていないのと一緒!スカし笑い!
相手のボケをスカす「スカし笑い」を多用する人々。
「スカし笑い」自体はピンポイントで使えば非常に有効な武器となる笑いの手法であるが、この頻度が異常に高い芸人が、やはり即芸人失格の烙印を押される。
一言に「スカし笑い」と言っても色々な手法があるが、一番分かりやすいスカし方は「相手のボケを無視する」という手法。相手がボケた後に「・・さ、続いてのコーナーは・・」などと、相手のボケをシカトする。
乱暴な言い方をすると「ボケを相手にしない」という手法で、「このスカし方が悪い」というよりは、「これを多用する事に問題がある」という感じ。
なぜなら「芸人でなくとも誰にでも出来る手法」だから。
芸人は「ボケに対してボケで返す」「ボケに対してツッコミで返す」が基本。
そこが一番の盛り上がり所であり、そこを作るために芸人は切磋琢磨する。
しかし「ボケに対して何もしない」は、プロレスのリングでレスラーが棒立ちしている状況にも近い。なのでスカしを多用する芸人は、やはり裏で先輩から「ちゃんとお笑いに向き合えよ」と楽屋の隅で叱られる。
まとめ
今回は、芸人が取る笑いの手法の中で、敬遠されがちな手法をご紹介させて頂いた。
基本的にどれも「他の芸人を傷つける」もしくは「誰にでもできる」手法が多い。
ただ、あくまでどれも多用した場合である。上述した手法のどれもが、「この場面では一番これが正解!」という場面がある。
逆に言えば「この場面でそれは違う」という場面があり、そういう状況を読まずに上記手法をとる芸人が、芸人失格の烙印を押される事となる。
このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。
ご一読、ありがとうございました。
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
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