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芸人志望でボケやりたい人に読んで欲しい!最初に知っておきたいボケのコツ

連載
公開日:2021年12月24日 更新日:2021年12月28日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

今回は、芸人志望の人向けにボケのコツについてお話させて頂く。

普通は芸歴5年目以降にうっすら考え出すようになる内容なので、この辺りを意識して芸人人生をスタートすると数年後周りの同期に一歩差をつけているかもしれない。

今回のコラムを読んで頂ければ、
・最終的に選択する事になる、芸人人生の2択!
・「ネタで笑いを取る」ボケの伸ばし方!
・「人で笑いを取る」ボケの伸ばし方!
・ツッコミと思ってるけど、実際ボケの人の見分け方!
を、ご理解頂ける。

是非、最後までご一読頂きたい。

ちなみに裏切りや誇張など、テクニック的なものはググればなんぼでも出てくるので割愛する。
その辺りはボクシングのジャブの打ち方と同様「打ち方を知っている」と「実際に打てる」は全く違うので、是非舞台経験を積みながら身につけて頂ければと思う。



最終的に選択する事になる!芸人人生の2択!

ボケを効率良く学ぼうと思ったら、まずはボケ方の軸を決める。軸は2種類あるので、以下、説明する。

ちなみに勘違いしちゃいけないのは、プロの芸人はどちらも一般の人より遥かにできる。ただ、プロサッカー選手が両足を自在に操れても軸足があるように、自分の軸足となるジャンルを決めることが大切。

天才!カリスマ!「ネタ」で笑いを取る人々

松本人志さんに代表される、ネタで笑いを取る人々。ネタの発想・おもしろさ次第では天才とよばれ、カリスマ性を持つ事ができる。

NSC入学時は10割がこっちを目指し、雰囲気だけの天才が各クラスに2割はいる。俯瞰で物事を見ている視線をよこし、世の中を斜めに切るセンスを見せようとして舞台で惨敗する。

基本的に大喜利的発想が求められ、大喜利の強さがそのままネタの強さになる事も多い。

ちなみにネタで笑いを取りたいのであれば、最初キャラはできる限り薄い方が良い。キャラが薄いからこそ、いろんなジャンルのボケをしても笑える。詳しくは下の「人で笑いを取る人々」で説明する。

これが出来たら一人前!「人」で笑いを取る人々

出川哲郎さん、狩野英孝さんに代表される、人で笑いを取る人々。天才と同じだけ笑いをとっても、なぜか世間一般から評される地位が低い事が特徴。

しかし、「人」で笑いを取れる人は、そのほとんどがオンリーワン的代えの効かない存在になれる。なので、漫才師は「人」が出る漫才ができれば一人前と言われ、若手はそういう漫才に憧れる。

このジャンルの人は、その人のキャラが武器。
キャラといっても、ヘンな格好をするという事ではなく、その人の「人柄・性格・思想・気品」など、内面に起因するもの。

分かりにくいと思うので例をあげると、「ワイルドだろぉ」のスギちゃんさんは、ゴテゴテにキャラ作ってるけどネタで笑いをとる人々。

内面というより「ワイルドなキャラのヤツが何をしたらおもしろいか大喜利」をして、大喜利のおもしろさで笑いを取る。いや実際は人柄の良さもめっちゃ出てるんだけど。分かりやすいからまあ許して。

この「人」を武器にする場合、大喜利が不得意となるケースが多数見受けられる。理由は、得手不得手が起因ではなく、そもそも大喜利の難易度自体が上がるから。「大喜利のおもしろさ」と「その人に合ってるか」が揃わないとウケない。どんなにおもしろい答えでも、博多華丸さんにエログロの回答出されても困るよねといった感じ。

さっきネタで笑いを取りたいのであれば、最初キャラは薄い方がいいっていった理由がこれ。自分が何言ったらウケるかの理解が高い人は別です。


「ネタ」と「人」!各々のボケの伸ばし方


それでは目指す方向が決まったところで、それぞれのボケの伸ばし方を説明する。

カリスマ芸人に、おれはなる!ネタで笑いを取る事を選んだあなた

実は、ほとんどの芸人がこっちのルート。芸歴1年目ではほぼ10割、10年目でも7割以上がこっち。
言い方を変えればそれだけ大勢のライバルを抑えて1番にならなければならないので、腹の括り方が甘いヤツは浮上できない。

このルートを進む人間は、最初のセンスがとても重要。センスの良し悪しに加えて、「どの部分をおもしろがっている人間か」という目の付け所が今後の芸人形成の根幹。しかし、ウケない時期が続くとこの軸がブレる人が多数でる。

そういう若手は手っ取り早く万人にウケるだけのボケに手を出しがちで、ある種スキルがあれば誰でもできるボケで舞台をやりくりし、有象無象の量産型芸人となり、無価値な自分を形成する。

あくまで「万人にウケるボケ」+「自分独自の笑い」と、両方できるようになるのが芸人の腕。偉そうでごめん。

じゃあどうボケを伸ばすのかというと、ウケてるウケてない関係なく、自分のセンスと近くて自分がおもしろいと思う芸人を選んで勉強する。

世に溢れるほとんどのお笑いがこの「ネタで笑いを取る」スタイルなので、恐らくいるはず。TVレベルの芸人だけではなく、劇場上位レベル、劇場でも下のレベルと、どんどん裾野を下ろしてより多く見つけていく。

基本このタイプは「0→1の笑い」が好きなはずなので、全くウケてないネタを見ても「ウケてないけど、その発想おもしろいよね」となるはず。ならない人は、ネタで笑いを取るには向いてないかもしれない。

そして、彼らの笑いを徹底的に観察しつつ「何がおもしろいのか」「自分が応用するとしたらどう応用したらいいのか」を日夜考え、範馬刃牙の如く毎晩想像上の客を相手に戦いを挑む。

オンリーワンに、おれはなる!人で笑いを取る事を選んだあなた

「ネタで笑いを取る」より、別の意味で難易度が高いルート。笑いへのアプローチの仕方がネタルートと全然違う。

「人で笑いを取る」は、「人間形成」と「形成された人間を使っての笑いの取り方」の2ステップを経て完成される。

「人間形成」では、笑いになる「人」を作る。
自分の本来の性格の一部を世間の常識から離れるほど過剰に膨らます。性格・人間性を作るわけなので、当然数年の時間がかかる。
もともとズレ切ってる人はこの作業が楽。ボケの場合、何かに過剰な思い入れがある人だったり、独特の思想があったりのパターンが多い。

当然ガチでそういう人間になるわけで、ここで選択をミスるとかなり修正がキツい。てかできないかもしれない。
なので、「売れようが売れまいがどう考えてもおもしろいだろ!」という自分の信じる笑いへの啓蒙と、「おれはこういう人間だ!」というビッグダディばりの開き直りが必要となる。

そうして人間が形成されると、次に「形成された人間を使っての笑いの取り方」のステップに入る。

変わった人間が形成されただけでは、ただの町の変わり者なので、これを舞台上でどう笑いに変えるかを考えていく。
芸人からのふりへの返しも「人柄がでている言葉で、かつおもしろい」という返しが必要となる。それを多くの舞台にかけつつ、「自分が形成した人間をどう使ったら笑いに変わるのか」という独自のスキルを身につけていく。

ちなみに、「ネタで笑いを取る芸人」は大喜利に代表されるように「発想の飛躍」を求められる事が多いが、「人で笑いを取る芸人」には「感情・思想の飛躍」が求められる事が多い。

普通の人はこう感じる・考えるけど、この奇人変人はどう感じる・考えるのかっていう感じ。だからその感想にウソが入ると「そこまで悪い事したか?」というレベルで冷められ、人で笑いを取る芸人になった事を後悔する。


自分は本当にツッコミか?隠れボケ診断

芸歴1年目レベルだと、自分がボケかツッコミか、本質を理解していない人が多数いる。自分ではツッコミと思ってたけど、隠れボケだったという事例も多く存在する。

ちなみに、ぼくはNSCにはツッコミ志望で入学した。NSCという全芸人が一番トガりちらし他人のネタで一切笑わないこの時期に、ネタ見せで大爆笑を取り、順風満帆の未来を予想していたが、実はあまりのツッコミの下手さに笑われていたという暗い過去を持つ。

みなさんがこのような一生の傷を負わないように解説すると、ボケ・ツッコミの他に、「返し」という技術がある。

返しとは、外見をイジられたりした時に発するコメント。
一見ツッコミと一緒に見えるのがデストラップ。引っ掛かると、あの日の吉松ゴリラになる。

「返し」は、自分の外見・考え方など「自分」に対する言葉へのコメント。
「ツッコミ」は、「べっぴんさん、べっぴんさん、一つ飛ばしてべっびんさん」なんかへの「自分以外」に対する言葉へのコメント。

これは完全に似て非なるもので、「返しはうまいけどツッコミは下手」という人間が相当数存在する。なので、自分がとってる普段の笑いが「ツッコミ」なのか「返し」なのかを一考する事をおすすめする。

まとめ

今回は、芸人志望の人向けにボケのコツについてお話させて頂いた。
上述のように軸足が「ネタ」か「人」かで、芸人としての努力の仕方が違ってくる。

ただ、最初にお話ししたようにこれはあくまで軸足で、プロの芸人は両方とも高いレベルで習得している。普段イジられてばっかりの芸人が、MCを担当したらめっちゃ回せるなんてのはザラにある。

是非、両方とも極めて、いつどこでどんな状況でも笑いを取れるハイレベルなボケを目指して頂きたい。

この記事が、みなさんのお役に立つと幸いです。
ご一読、有難うございました。


執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。