【実話】現役お笑い芸人が体験したちょっと変わったオモシロバイト話
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
芸人周りには、少し変わったバイト話がゴロゴロ転がっている。
若手芸人の収入の10割はバイトといっても過言ではない。全ての芸人が鬼神の如くバイトをし、その忍耐力の無さから音速でバイトを辞め、貧困に苦しみ再び鬼神の如くバイトをする事から、一般の方とはケタ違いのバイト話が転がっている。
ちなみに今回は守秘義務やトラブル回避から、やや場所や数字は実際と違うものを書いている事をご了承願いたい。
今回のコラムを読んで頂ければ、
・芸人が実際体験した少し変わったバイトの話
が、ご理解頂ける。
是非、最後までご一読頂きたい。
目次
2030年OPENの地下駐車場のバイト
これは車の展示会場の設営のバイト。
実は既に東京のとある場所で、2030年OPENの巨大地下駐車場が完成している。よく考えればかなり早い段階でもう出来てしまっているのだが、なぜOPENしないのかは不明。我々は何も考えない。
とにかく会場的にはドデカい上に現在何も設置されていないので、車の展示会場で使うにはうってつけ。
そんな中でステージや受付周りを作るバイトだったのだが、横を見たら直径2mはあるんじゃないかという位デカいホースが何十個も並んでゴーゴー言っている。
「あれなんですか?」と聞くと、
「地下駐車場はできているが、まだ人を入れるには酸素が足りない。」との事。
「だから今ホースで酸素を入れてる。この会場はかなり大きいが、明日の本番で入れるお客さんは70人。なぜなら駐車場の管理者側から、『酸素足りなくなるから100人以上絶対入れないでください』と言われてる。」との返答だったが、本番前日のより酸素濃度の薄いその日、どう少なく見積もってもスタッフ200人は働いている。
最下層の芸人には、不思議と最下層のバイトが降ってくるという事を示した、お手本のような芸人バイト。
笑バイト
吉本興業が開始した、吉本芸人にバイトを斡旋するシステム。現在あるのかは不明。
紹介された居酒屋に行くと30代で銀色の髪をした女が教育係になり、ハイボールの作り方を聞くと「ノリ」とだけ答え、一向に作り方を教えない。常時気だるげ。
ちなみにその答えを信じ、オーダーが入った時にノリでハイボールを作ったら「そのノリ、違う」と瞬殺でバイトをクビにされる。
RPGであればクリア不能な鬼畜バイト。
遠くで鉄を運ぶバイト
先輩芸人に紹介してもらったバイト。
朝イチ電車の始発前に新宿へ集合し、そのまま車に乗って名古屋へ向かう。片道3時間。10時ごろ現場について何をするかと言えば、ただひたすらに鉄を運ぶ。何を作っているかは知らされない。そしてぼくらも、聞きはしない。
このバイトを3年やってる先輩芸人すら、何を作っているかは分かっていない。何も考えずに命令された事だけを無言でやる、戦争で一番人を殺すタイプの人間だけが集まるバイト。
ちなみにこの先輩には同様に、終電で赤坂に集合し、始発までただひたすらにコンクリを運ぶ仕事を紹介してもらった。
実労働時間に対して、賃金は高い。それだけでぼくらはハッピーマックス。
自転車で全町内会を巡るバイト
1週間に1度、区内にある100箇所の町内会を回り、その掲示板に貼ってある「訃報」の紙を確認。その週に亡くなった方の住所・氏名を書き写し、雇い主へ報告するバイト。
一見すると恐ろしすぎる意味不明なバイトだが、これはその土地を地盤としている政治家さんが、日頃自分を支援してくれている地元の方にお香典を出すための調査バイト。
ちなみに1年通じて行っていると、その週の気象によって何となく亡くなられている人数が分かるという無価値な能力が身に付く。
ティッシュ配りバイト
某コンタクトレンズのティッシュ配り。同期が行う。
このようなティッシュ配りのバイト生の中にはノルマ分のティッシュをゴミ箱に捨てて鬼サボりする輩がいるため、ティッシュ配りを見張る「カラス」と呼ばれる人種が存在する。
しかし、その「カラス」にも鬼サボりする輩がいる事から、その「カラス」を見張る「フクロウ」と呼ばれる人種も存在し、「じゃあカラスいらなくね?」という疑問をティッシュ配りに抱かせる。
ちなみに、このシステムを知らなかった同期はティッシュを捨てたところをカラスに捕獲され、翌日の朝礼で顔面をシバかれたそう。
ゴミ清掃員のバイト
いまぼくの周りで密かに人気の、通称ゴミバイト。一時期ぼくもやってた。燃えるゴミやペットボトルゴミを走って回収する、みなさんが思い描いてるまんまあれをするバイト。
基本6〜7時くらいに事務所に集合と朝は早いものの、終わりも早い。平均して14〜15時の間に終わり、その足でライブに行く事も可能と若手芸人にとってはありがたい。
また、日雇い雇用のため日当がその日に支払われ、その日暮らしの芸人にとってはこれまたありがたい。
それで日当も11000円くらいもらえる。これもなにげにありがたし。
葬儀屋のバイト
水木しげるの世界観が好きで何となく始めたバイト。
ぼくと先輩の社員でお寺に行くわけだが、その日は先輩の社員が会社で備品の準備をしてお寺に行き、ぼくは現地集合という形で合流。
この際、先輩が準備段階で御遺体の頭をのせる枕の高さを間違い、お棺に対して、高い枕を持参した。
なぜそのミスが発覚したかというと、お棺にご遺体を入れて枕に頭をのせてお棺の窓を閉めようとした際、鼻だけ挟まって外に出た。
ぼくはぼくでこの状況が理解不能・・というより、そもそも枕が高いという発想がない。結果、窓をパカパカ開け閉めするんだけど、やっぱりパカパカ必ず鼻が出る状況が繰り返され、上司に叱られクビになる。
葬儀屋のバイト2
おまけみたいな話だけどついでに。
これは葬儀屋の先輩社員に聞いた、怖いかどうかよく分からない話。ただ芸人にはこういう変なエピソードを求めてバイト先を決めるヤツも多数存在する。
お葬式が無事終わり、葬儀会場でお坊さんが説法をしている時、一人の女性がうめき声をあげだしたそう。
周りの人が具合でも悪いのかと聞くと、その女性は「実は霊感が強く、霊の気配に当てられる事が多い」と答えたとの事。
今亡くなられた故人の方ではない、それとは違う霊が葬儀の雰囲気に引き寄せられ、後ろの出入り口の横にきているとの事。その霊のオーラが真っ黒でものすごく強く、その黒いオーラが部屋中に充満しているため気分が悪くなったらしい。
最後にはいよいようめき声をあげながらうずくまってしまったそう。
慌てた親戚の人がお坊さんに「どうにかしてください!」と頼んだところ、お坊さんが「あーわしそういうの信じてないんで」と言って帰っていったという謎話。
ちなみに先輩の話ではその女の人、横にしたら治ったらしい。
理解不能なバイト
同期が行っていた、深夜に車で東京中の豚骨らーめん屋を回って、その豚骨らーめん屋から豚骨を回収するバイト。
謎すぎるその全貌は、回収した豚骨をある機械に入れると植物の肥料として生まれ変わるため、その肥料を販売するというビジネスモデル。
しかし、よくよく聞いてみるとその「ある機械」がまだ完成していないというさらに強大な謎を残す。
その同期はその後、
「経費が返ってこない」
「くれると言っていたボーナスをくれない」
「バイトし始めたら、わりと早い段階で社長の口座が凍結される」
という音速の3手詰めにあい、バイト代未回収のままバイトを辞める事になる。
まとめ
今回は芸人周りに存在する、ちょっと変わったバイトをご紹介した。
これらのバイトの多くは、芸人の繋がりによって紹介されるものが多い。楽して稼ぎたいという願望を抱いた芸人の周りにはこのようなよく分からないバイトが多く、よく分からないバイトが故によく分からない失敗談が乱立する。
しかし、芸人はコリずに再びよく分からないバイトに行くという鳥並みの知能で活動する。
最底辺の人生が透けて見えるバイトから、普段なかなか聞くことのできないバイトまで多種多様な様相を呈しているが、まだまだ芸人周りには特異なバイト話がゴロゴロ転がっている。
このような話は日々刷新されており、残念ながら売れてバイトを卒業した先輩芸人たちからはもはや聞くことのできないジャンルである。
是非、若手芸人のライブやYouTubeなどでお楽しみ頂きたい。
今回のコラムが、みなさんのお役に立つと幸いだ。
ご一読、有難うございました。
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
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