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芸人のラジオ

連載
公開日:2023年11月17日 更新日:2023年11月24日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

芸人の目標の一つとして、「自身のラジオ番組を持つ」というものがある。

映像に頼らず「しゃべりの技術一つで笑いを取る」というのはシンプルにカッコいいし、コンビ二人で話すため、何にも縛られず自分達のカラーを打ち出す事が出来る。

今回は、そんな芸人のラジオの一部をご紹介させて頂く。

是非、最後までご一読頂きたい。



トークの極み!「川島明のねごと」!

天才、麒麟・川島明氏と、天津・向清太朗氏がパーソナリティを務める「川島明のねごと」。基本的に毎週1組のお笑い芸人をゲストに迎え、彼らと至極の笑いを作り出す。

この番組の凄いところは、川島明氏の天才性。ラジオを文字に書き起こしたとすると、彼のセリフは全てお笑い。ほぼ全ての言葉が「フリ・ボケ・ツッコミ」で構成されている。しかも余分な言葉が入らず、全てが超コンパクト。その大喜利力と頭の回転の速さは、ラジオにあるまじきスピードと言っても良い。

毎週、ある程度親交のあるゲストを招いているとはいえ、放送時間は1時間。その1時間中、自身が中心になって笑いを作る。全く「今日の番組の出来」を、人に委ねていない。「今日の番組の出来は、川島明氏の出来である」というレベルで、「ボケ数、ツッコミ数、フリ数」が多く、笑いを構成する大部分を担っているのだ。そしてそれら全てが、誰に助けてもらう訳でも無い、完全に「ピンで完結している笑い」。

「ツッコミが無くても成立する」・「リアクターがいなくても成立する」というトークの打ちまわしは、全ピン芸人の憧れの一つ。そのピン芸人の理想が、ここにある。

そして向氏も、その実力を見せつけている。番組内での立ち位置は、川島氏がメインなら向氏はそのサイドキック。川島氏の発言に対する補足や、フリに対する返しがメイン。一つのお題をゲストに振る前の解答例として、ある意味無茶振りに近いパスが飛んでくる場面もあるが、その返答がしっかりとおもしろい。その返しの精度と速度は至極の極み。

また、フットワークが軽いのもこの番組の魅力。川島氏がMCを務める情報番組「ラヴィット」で、立ち振る舞いが上手くいかなかった相席スタート・山添氏や真空ジェシカ氏を即ゲストに採用し、当日の内容を深掘りしたりする。この芸人を呼んだら「おもしろそう」と感じた後のゲスト採用までが、とにかく早い。

また、パーソナリティのお二人は、これらの仕事をこなしつつ、ゲストの魅力をガンガン引き出している。その手法も1つではない。まるで「このゲスト、どうしたらおもしろくなる?」の大喜利に対して回答を出し続けるかのように、常にゲストの味を様々な手法で引き出し、調理し、提供してくれるのだ。
その理由は、恐らく放送時間帯。この「川島明のねごと」の放送時間は、19〜20時とゴールデンタイムのど真ん中。なので裏のTV番組とバチバチに闘う、超武闘派のお笑いラジオ。

御長寿番組!「三四郎のオールナイトニッポン0」!

ラジオ好きなら知らない人はいないであろう、「三四郎のオールナイトニッポン0」。今やお茶の間の人気者になった三四郎の二人が、自身の近況を話しながらラジオを盛り上げる。

ラジオ中、小宮氏が1本、相田氏が1本、エピソードトークを披露するのが通例。そしてこのトークがケタ外れにおもしろい。このエピソードトーク、言ってしまえば近況報告に近い場合も多い。「BLTサンドを初めて食べた」や「痛風がヒドくなって病院に行った」など、テーマだけ聞くと一般社会でも話されているトークテーマ。しかし三四郎のお二人にかかると、そのトークテーマに笑いが宿る。

三四郎氏は同級生コンビという事もあり、ある意味友人関係の延長線上にあるコンビ。そのためこのような、相方の身近なテーマを広げる力がケタ外れに強い。時にコンビとして、時に友人としてテーマを広げる。

お互いエピソードトークの内容も決めてきているはずだが、どこまでトークとして決めてきているのかは不明。そう思うほど、相方のリアクションや相槌に対してトークの構成を柔軟に変更し、その場に即した笑いを作り、笑い合う。そして、そこが三四郎氏のトークの醍醐味。

お互いがお互いを広く深く知っているからこそ、日常のトークに、話し手の人格が宿る。受け手である相方がその人格を感じているからこそ、相方を通じてリスナーが語り手の人格を感じる。恐らく同様の話を「本日初めて会った芸人」に話したとしても、こうはならない。三四郎氏のラジオでのトークは、三四郎お二人でしか作り得ないもの。

このようなラジオは聞いた後、笑いの他に、心に少しだけ二人のあたたかさが残る。そして人は、ラジオで聞いたボケは忘れるが、このあたたかさというものは忘れないものなのだ。

それが、この三四郎氏のラジオが長く愛される所以でもある。

これは聞いとけ!伝家の宝刀抜かせんなラジオ!

ラジオアプリ「GERA」で毎週放送中の「伝家の宝刀抜かせんなラジオ」。今回ご紹介する中でこれだけラジオアプリであるため、先に「GERA」の説明をしてから、ご紹介する。

ちなみに、「GERA」とは?

「伝家の宝刀抜かせんなラジオ」を毎週放送中の、ラジオアプリ「GERA」。ちなみにこの「GERA」、ラジオ好きの若手芸人のスマホの片隅には、必ずひっそりと入っている。

「GERA」内では、相当数の番組が放送されているが、全般的に「超大御所」という芸人はいない。どちからというと「NEXTブレイク枠」に存在する若手芸人達が主役であり、彼らがパーソナリティを務めるラジオ番組は、とにかく新鮮でおもしろい。

もちろん多くのラジオを経験した大御所芸人のトークは聞きやすく、おもしろい。まるで鋭く研がれた包丁で、様々な題材をスパンと切っていくかのような切り口は、それはそれは見事で美しい。

しかし「GERA」の主役は若手芸人。ラジオ自体が初めてという若手も少なく無い。だからこそ、自分がおもしろいと思うトークを全力でブツける。全く研がれていない包丁を題材に叩きつけるが如く、全力で切りつけた荒々しい切り口もまた、ラジオ好きから見ると美しいのだ。

ちなみに「GERA」では、今のところ過去のアーカイブが全て無料で聞く事が出来る。そのためハマる番組があれば、最初から一気に聞く事も可能で、それも「GERA」の魅力の一つ。

アーカイブを辿るとよりおもしろい!「伝家の宝刀抜かせんなラジオ」!

「GERA」内で毎週放送されているこの番組は、みなみかわ氏と、にゃんこスター・スーパー3助氏がパーソナリティを務めているラジオ番組。スーパー3助氏の売れている芸人への恨み節や、みなみかわ氏の底意地の悪い視点から繰り出される攻撃的なトークが魅力。

ちなみにこの番組のように、事務所を超えた芸人二組の化学反応が見られる所も「GERA」の魅力。

ここでのトークは、ややアングラなものが多い。紹介される芸人も、「お笑いファンなら知っている」という露出度の芸人が多く、ほとんど全国区の芸人達の話はしない。

また、トークテーマも「G-1グランプリ(出場資格が「芸歴15年以上」の賞レース)」など、かなり狭いところが中心。しかし彼らのトークスキルによって、その「アングラな話」が、「 “アングラだからこそ” おもしろい話」に変わる。決して華々しくないトークの泥臭さは、お笑い好きなら必ず好きな味をはらんでいる。

そして、この2022年にスタートした「伝家の宝刀抜かせんなラジオ」の良いところは、その2022年内で、お互いに大きな動きがあったところ。スーパー3助氏は盟友である、パーパー・ほしのディスコ氏が歌で爆ハネをし、みなみかわ氏は自身のトークスキルによって多くのメディア出演を果たしていった。

環境が変わっていく過程と、その渦中の彼らの心情が唯一無二のトークとなって笑いに変わる。是非、アーカイブを最初から辿ってお聞き頂きたい。


まとめ

今回は、芸人のラジオをご紹介させて頂いた。しかし今回ご紹介させて頂けなかっただけで、おもしろいラジオは山ほどある。

以前はまず売れないとラジオ番組を持つ事ができず、自分達のトークを発信する事は出来なかった。しかし今は「まだ売れていないが超おもしろい芸人」も、自分達でラジオをスタートし、人気を博し出している。もしかすると未来の大スターの最初のリスナーは、あなたかもしれない。

是非みなさんが、充実したラジオライフを送って頂けると幸いだ。

このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。
ご一読、ありがとうございました。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。