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最近のお笑い界のピン芸人の事情・立ち位置、コンビとの売れ方の違い

連載
公開日:2021年5月25日 更新日:2021年5月27日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

みなさんこんにちは。
芸歴10年目。ピン歴3年目の吉松ゴリラです。

今回はピン芸人についてお話しします。
このコラムを読むと、現在のお笑い界におけるピン芸人の立ち位置と、ピン芸人とコンビ芸人の売れ方の違いが分かります。

ぜひ、最後までご一読ください。



以前のお笑い界のピン芸人

ちなみに、少し前までは、TV番組ではコンビ枠とピン枠がある程度別れていました。

例えばネタ番組では、若手芸人を10組出すのであれば「コンビ:8組、ピン:2組」など、何となく枠が別れていたんですね。

この頃はそれぞれの枠を競う「コンビ芸人VSコンビ芸人」「ピン芸人VSピン芸人」の闘いでした。

ただここ5年ほどのお笑い氷河期の間に、なんとなくあったピン芸人枠という概念が無くなり(ネタ番組自体がなく、少ない出演芸人の中で視聴率とりたいから、ピンもコンビも関係なく、一番おもしろいヤツを出せばいいので)、ピン芸人は、コンビ芸人やトリオ芸人も競合相手に見据えなければならなくなりました。

ちなみになんですが最近またお笑いブームきてるので、もしかしたらこれも今後変わっていくかもしれません。

最近のピン芸人を取り巻く環境

芸人として売れる為には、今自分がどのような環境に置かれているかを考える必要があります。

極端な話、めっちゃいいピンネタを作ったとしても、「そもそもピン芸人のネタなんて見たくない!」と社会的需要が全く無ければ売れない訳です。

ここでは、ピン芸人を取り巻く、現在の環境についてお話しします。

ピン芸人を取り巻く環境は厳しいと言わざるを得ない

残念ながら、最近ピン芸人を取り巻く環境は結構厳しいものがあります。後ほど詳しくお話ししますが、コンビ芸人と比較して、ピン芸人はなかなか世に出づらい環境にあります。

以下では、何となく現状をお伝えします。

TVに出ているピン芸人が、10年くらい前からほとんど変わってない

多少漏れもあると思いますが、現在ピン芸人で売れている方は下記の方々で、そのほとんどが10年以上前から変わっておりません。

【売れてるピン芸人】
ビートたけしさん
明石家さんまさん
陣内智則さん
バカリズムさん
宮川大輔さん
小籔千豊さん
ケンドーコバヤシさん …etc

もちろん上記以外にも、最近ではハリウッドザコシショウさんやアキラ100%さんなど、ピン芸人で活躍されている芸人も数多くいます。

しかし、そのほとんどがTV番組の1コーナーでスポットで呼ばれるレベルです。

TV番組のMCや、ゴールデン番組のレギュラークラスとなると、上記方々になるでしょう。

ちなみに上記挙げたハリウッドザコシショウさんやアキラ100%さんのお二人はR-1チャンピオンです。

ピン芸人日本一クラスでもスポットで呼ばれる仕事がほとんどというのは、かなり厳しい現状です。

ネクストブレイク芸人2019年・2020年・2021年にほとんどピン芸人がいない

ネクストブレイク芸人というのは、今後活躍が期待される若手芸人がランキングされるもので、その発表時の注目度が分かります。

そこにほとんどピン芸人の姿はありません。

この結果は、決して「ピン芸人におもしろいヤツがいない」という訳ではありません。

先程お伝えした通り、そもそもピン芸人はコンビ芸人に比べて不利な状況で戦っています。

しかしお笑い界は結果が全てです。
ピン芸人がネクストブレイク芸人になかなか出てこれないのが現実です。

コンビ芸人とピン芸人の売れ方の違い

ではなぜ、こんなにもピン芸人が世に出ていないのでしょうか。それは、コンビ芸人・トリオ芸人が競合相手になってきたからです。

ちなみに最近のバラエティでは「コンビのバラ売り」という言葉をよく聞く通り、コンビといえど、個人個人でTV番組に呼ばれる頻度が増えました。

このような状況であれば「結局コンビだろうと、個人の実力がないと意味が無い」「だったら最初コンビ芸人を選択するのも、ピン芸人を選択するのも同じだろ」と考える方も多いと思います。

しかし、実際は全く違います。

コンビ芸人の売れ方・ピン芸人の売れ方

芸人が売れるまでには、いくつか段階があります。

【売れるまでのステップ】
①事務所ライブのピラミッド登り
②TVオーディション
③TVでネタ披露
④TVの企画系・トーク系番組に呼ばれる

コンビ芸人の売れ方

後ほどお話ししますが、コンビは、それぞれのステップでピン芸人よりやや有利です。

やや有利な中で勝ち上がり、コンビで実績を上げ、お茶の間に浸透します。

そして、コンビ各々の価値が十分あがり、TVに出ても「ん?こいつ誰だ?何かおもしろい事できんだろうな?」なんて事は思われない状況が整うと、バラ売りで呼ばれます。

「コンビ」自体に、ある程度ブランドがついている状態ですね。

その頃には視聴者だけでなく共演者にも認知されている事が多く、MCや周りにも「こいつはこう扱えばおもしろい」という取り扱い説明書も理解されています。

この状況になれば相方がいなくても周りの芸人が相方の役割を果たしてくれるので、ピンで呼ばれても結果を出しやすくなります。

そしてピンで結果を出し、コンビでも結果を出し続けて、売れていくのがコンビ芸人の売れ方です。

ピン芸人の売れ方

一方ピン芸人はコンビ芸人より不利な環境で、このステップ全てにおいてコンビ・トリオ芸人に勝ち続けなければなりません。

各ステップで勝ち上がる事が困難なので、ゴールデン番組でレギュラーもったりMCになったりするピン芸人があまり出づらいんですね。

ピン芸人がコンビ芸人に比べて不利なところ

コンビ芸人と比べて、ピン芸人は不利だとお話ししましたが、実際にはどれくらい不利なのでしょうか。

分かりやすくいうと、ボクシングで2VS1で闘うくらい不利です。

別に、それでも勝てるくらいぶち抜きで強ければ関係ないのですが、相手も素人ではありません。

雑魚なコンビなら問題ないんですが、この芸人供給過多の時代、売れるために勝たなければならないのは真面目に真剣に爪を研いできているコンビです。

コンビネーションはしっかりしてるし、お互いの情報は知り尽くしてるし、相手の不満は言えるし、相手のこと褒めれるし、とにかく今日に向けて何年も準備をしているコンビに勝たなければなりません。

ピン芸人はここが不利

先程、「売れるまでの全ステップでピン芸人が不利」とお伝えしましたが、ここでは具体的に不利となるポイントをお話しします。

基本的に、ネタと、平場(ネタ以外のトークとか企画とか)で不利です。

【コンビ芸人との比較】
・ネタ番組的には、コンビ芸人の方が使いやすい
・トーク企画系番組的には、コンビ芸人の方が結果を残しやすい

ネタ番組的には、コンビ芸人の方が使いやすい

単純に1人より2人の方が画面映えがします。

ちょっと一般の方には分かりづらいと思いますが、ピン芸人のネタは、カメラワークなどで補完しないと、どこか寂しい画面になってしまいます。

視聴維持のため派手さを好むTVにおいて、画面上に華やかな2人がいるか、ぽつんと1人しかいないかは結構大きいです。

また、ネタに関しても、「これはピン芸人しかできない」というネタはほとんどありません。

クオリティの高いピン芸人の一人コントなら、同じだけクオリティの高いコンビ芸人のコントの方が見やすいし、最低でも同じ位はおもしろいです。

TVはお笑い偏差値が高い人だけに見てもらうものではなく、お子様やご年配の方々も対象となる為、できる限り「分かりやすさ」が必要になります。

時間帯によっては、ダイレクトに視聴率に関わってくるでしょう。

「片方がボケて、片方がツッコむ」・・これは非常にシンプルながら、非常に分かりやすいですね。しかしこれはピン芸人ではできません。

芸人のレベルが同じなら、コンビの方が見やすく、分かりやすいので、ギャラがほとんど同じなら、同系統のコンビを呼んだ方が得です。

トーク・企画系番組的には、コンビ芸人の方が結果を残しやすい

MCにも得手不得手があり、「このMCにはこういう若手芸人がハマりやすい」というものがあります。

必ず自分がハマらなければならないピン芸人に対し、コンビ芸人はどちらか1人がハマればOKです。
単純に、チャンスは倍ですね。

またトーク番組だと、ピンが自分1人分のエピソードしか持っていないのに対し、コンビは2人分のエピソードを持っています。

それだけでもトークの引き出しが倍になるんですが、さらに、天然の失敗話など「自分で話すとおもしろくない系の話」も相方が話せるので、話せる量はピンの2倍ではききません。

その上、この二人の関係性での笑いの取り方もあります。

時々TV番組である「相方への不満爆発!」とか、「相方への感謝の手紙!」とかがそうで、これはピン芸人では無理ですね。

さらにコンビの場合、相方のエピソードトークは何度も隣で聞いている訳なので、真面目にやってるコンビは、当然鉄板のツッコみやコメントの用意も数々あります。

1エピソードで笑いを取り、相方が補足しそこでも笑いを取れる訳です。実力あるコンビはケンカに持っていったりと、もう1つくらいカブせるでしょう。

このメリットは「笑いが増える」のと同時に、「TVに映れる時間が増える」というものがあります。

TV番組によばれた時、自分たちに打席が回ってきた時、どれだけTVに映れる尺を稼げるかは結構な勝負です。
ここでも、上手くいけばピン芸人の倍の時間尺を稼げる事は、コンビ芸人の有利な点といえるでしょう。

結果、MCにも世間にも「おまえら誰?どんなヤツらなの?」から始まる若手芸人のトークでは、コンビの方が抜群に結果を残しやすくなります。

※蛇足ですが、これらの「コンビ間の関係性」というのは最近ライトなお笑いファンからは結構求められているような気がします。

コンビを推す理由に「コンビ仲がいい」というのが、結構な頻度で上がってくるようになりました。

そんな中でも、そもそも相方もいないピン芸人は置いてけぼりですw。

まとめ

少しピン芸人にとってマイナスなお話しばかりになってしまいましたが、あくまで現在の状況です。

冒頭でお話しした通り、「第七世代ブーム」あたりからネタ番組が増加し、新たなお笑いブームが来ています。

ネタ番組が増えればまた新しい出演芸人を探す動きがでる訳で、その時ピン芸人にとってチャンスが回ってくる可能性も十分にあると思います。

いざチャンスが回ってきた時に、ちゃんと結果を出せるよう、自分を磨く事が大切です。

次回は、そのあたりを重点的にお話しさせて頂きます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。