現役お笑い芸人が教えるネタの探し方・作り方、やってはいけない方法
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
売れようが売れまいが、新ネタを作り続けなければならないお笑い芸人にとってネタ探しは切っても切れない物である。
ネタ探しとは0から1を生み出す作業なので、単純に「◯時間で◯本できる」という目安は存在しない。どんなに能力の高い人でも出ない時は出ないし、昨日あんなにがんばって出なかったのに、今日は何の苦労もなく出たという便秘のようなものでもある。
今回のコラムを読んで頂ければ、
・芸人のネタの作り方!
・色んなネタの探し方!
を、ご理解頂ける。
是非、最後までご一読頂きたい。
目次
よく聞かれる質問No.1!ネタってどう作ってるんですか?
「ネタってどう作るんですか?」という質問に対し、「こう作ります」と答えられる芸人はいない。
なぜなら、10ネタがあれば、10とも作り方が違うからだ。これはほぼ全芸人の共通認識とも言える。
ではなぜ作り方が違ったかというと、ネタを作る時のアイディアの出方が違うからだ。
設定から思いついた場合もあれば、ボケから思いつく場合もある。キャラから思いつく場合もあれば、構成から思いつく場合もある。
とにかくネタのアイディアの出方というものは、「各芸人によって違う」どころか、「各芸人でもネタごとに違う」のだ。
多種多様!ネタのアイディアの探し方!
ネタのアイディアの探し方は千差万別である。
一般的には、下記内容が伝えられている。
・常にアンテナを張っている
・おもしろい事が起きそうな場所に行ってみる
・机の前に座ってひたすら考える
この辺りの内容はみなさんどこかで聞かれた事はあると思うので、ここではそれ以外の、実際ライブに出ている芸人たちのネタの作り方を一部紹介する。
遊んで学ぶ!遊びのくだりを覚えておく人々!
芸人の飲み会でおこなわれるのは、基本的に「お笑いの話をする」もしくは「お笑いをする」のどちらか。
恐ろしくモチベーションの低い芸人同士が集まった時に限り、最近聞いたCDの話をする。
「お笑いをする」って何?と思われるかもしれないが、そのまんま、「お笑いをする」。
誰に見せる訳でもなく、自分達が楽しむ為にお笑いをする。ボケてツッコみ、時に大喜利にスライドしたり独自のゲームやくだりができあがったりする。
このような遊びの中でハネたものがコーナー企画となり舞台にかけられたりする事もあるのだが、ここで起きたくだりを覚えておいてネタに反映する人々がいる。
これは結構理に適ったやり方で、例えば他芸人に「イジられ」、自分が「返し」、それが「ウケる」という流れができると、芸人はゲーム感覚でどんどんそれを発展させていく。
イジり方の変化、返しの変化、テーマの変化などを各々が勝手に盛り込んでいき、いつの間にか何となくのネタの雛形が出来上がる。
これは実際その場で起きてウケた実績があり、セリフも自分の口から自然に出た言葉なのでキャラクターにも無理がなく、かつおもしろいという最高の状態。
これをネタに活かさない訳はないとばかりにネタに反映し、8割の確率でスベる謎を残すのがこのタイプ。
お待ちします、いつまでも!降ってくるの待ちの人々!
ただひたすらに、天からアイディアが降ってくるのを待つ人々。
彼らは「アイディアなんて思いつく時には思いつくけど、思いつかない時には思いつかない」と清々しい程の開き直りを見せる。
ただ芸人間の共通認識として「考えに考えたネタより、パッと思いついたネタの方がウケる」というものがある。
これは多くの芸人が経験している事で、「全然アイディア出ないから、ここ1週間徹夜して考えた」というネタの反応より、「パッと思いついて10分ほどで大体できた」というネタの方がウケる事が多い。
このタイプは、天からのアイディアの啓示を祈りながらひたすら待つ事に専念する修道士タイプと、積極的にアイディアが降ってきそうな場所に行くハンタータイプに分かれる。
修道士タイプはアイディアの啓示を待ちながら、大体パチンコに行く。
そしてアイディアを得られず2万を失い帰ってくる事が通例。
このタイプは基本的に「降ってくるの待ち」と言いながら「降ってくるまでサボりたい」という芸人が多く、天からも見放されている存在。
そんな彼らに天はアイディアよりも天罰を与える事が多く、彼らにアイディアが降ってくる事はほとんどない。
ハンタータイプの多くは、外出を好む。散歩や買い物、街ぶらをしながら常にネタのアンテナは張っておく。
そうするとたまたま街で見かけた「iPhoneセール!他社乗り換えからなら◯◯円引き!」なんかの看板から、設定やボケアイディアが降ってくる。
外で得られる情報というのは、自宅で白紙の前に座って出てくる情報よりもはるかに多い。
看板や移り変わる街の様相にそこを通る様々な人々と、視界に入る情報の多さがまず違う。
自身の琴線に触れるトリガーとなるものが多く転がっているのだ。
その為、「詳しくまとめるのは机の前だけど、0→1は散歩しながら」という芸人も多い。
まんまパクる人々!
「この芸人のネタめっちゃおもしろい!と思ったから、全く同じネタを作った!」という善悪の区別が全くつかないサイコな人々。
このタイプは基本的に芸人間でもハレもの扱いされ、激イタ芸人のレッテルを貼られる。
その後は猛省して何の特徴もない無個性な芸人へ変化していくタイプと、「おれはこういう人間だ!」とビッグダディ張りの開き直りを見せるタイプに分かれる。
ちなみに、これ系のネタの何が悪いかというと、中途半端にウケてしまうのがタチが悪い。
基本的にパクり元となる芸人の台本や切り口は秀逸で個性的なものが多く、それをベースにすると、自分にウデがなくても台本の良さでウケてしまう。
その為「そんなにいうなら自分オリジナルのネタ作るよ!」と作り直しても、現実の自分に力がない為全くウケず、興奮を得る為に再びパクりに手を染める。
パクリは一度ハマってしまったら抜け出せない芸人ドラッグ。
簡単にかつ手軽に手が出せてさらにウケもついてくる。
しかし現実のドラッグ同様、バレると信頼・実績全てを失う。
ダメ、絶対。
他の人のネタ見て、自分ならこうボケる!を踏襲する人々!
他の芸人のネタを山ほど見て、「そのフリだったら、自分ならこうボケるよな」という切り口から広げていく人々。
このタイプはとにかくネタが好きで、TVのネタ番組・劇場のネタを見る事は当然の事、闇ライブなどで完全無名かつ明日にも辞めそうな若手芸人のネタすらもかじり付くような目で見ているのが特徴。たぶん。
一瞬上記の「まんまパクる人々」と同じに見えるが、少し違う。
彼らが参考にするのは設定とフリであり、そこから派生するボケの切り口・展開はオリジナルの物になる。
また、参考にしたネタの設定やフリ自体が個性的なものの場合は、絶対にパクらない。
このタイプのネタへのリスペクトは芸人界でも群を抜く場合が多く、ネタを汚すようなマネは決してしない。
自身の美学に基づき、参考となる部分を盗む。
昭和初期の芸人時代から言われている「芸は見て盗め」を、令和になってもなお貫いている昔気質の職人芸人なのかもしれない。
しかし、自身の信じる笑いへの啓蒙が強い分、その美学が他芸人から見てズレている場合も多々あり、周囲の芸人と意見が激突する場合も多いのが特徴。
愚者か天才!ネタをネタ中に作る人々!
ライブのネタをライブ中に作る狂気の人々。
このタイプは本番中掛け合いなどが不要で自分の裁量でやれる事が多く、かつ、しこたまサボり癖のあるピン芸人に多い。
「何となくこういう感じのコント」とざっくりと大枠の発想だけで舞台に臨み、その日一番スベるかその日一番ウケる。
個人的感覚で言うと9:1でその日一番スベっている印象。
胆力が尋常ならざる様相に聞こえるが本番前の楽屋で震えている。
一体おまえは何がしたいんだと、問わざるを得ない芸人も多い。
「机の前ではなく舞台で出たセリフが、真の意味で自然なセリフ」という脆弱な論理と、「千鳥さんもなんかそうらしい」という極薄な情報を武器に舞台上で右往左往しながら今日も言葉を捻り出す。
しかし、本番前は震えているが舞台上では結構開き直るタイプが多く、結局「胆力すげー!」となる。
まとめ
今回は、漫才やコントに繋がるネタの探し方についてコラムを書かせて頂いた。実際は「ネタの探し方はこれ!」と固定している芸人は少なく、上述した内容含めて探し方が複数にまたがる事が多い。
また、今回はいわゆる漫才・コントなどのネタの探し方について絞って書かせて頂いたが、実際は一口にネタと言っても多岐にわたる。
【芸人のいう”ネタ”の一例】
・漫才・コントなどのネタ
・エピソードトークとなる、話のネタ
・特技などにつながるネタ ・・etc
いつか別の機会に、他の「ネタ」についてお話しできればと思う。
このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。
最後までご一読、ありがとうございました。
執筆:吉松ゴリラ
SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。
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