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芸人なら知らないとまずい?お笑い界の知られざる独自ルールを解説

連載
公開日:2022年7月6日 更新日:2022年7月7日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

芸人の世界には、一般の方が馴染みのないルールが数多く存在する。
芸人の社会は村社会と言われるように、やや閉鎖的な側面もある。
そのためこの世界ならではの、独自のルールが形成されているのだ。

今回のコラムを読んで頂ければ、
・世間一般に、知られている芸人のルール!
・世間一般には、知られていない芸人のルール!
を、ご理解頂ける。

是非、最後までご一読頂きたい。



これが!芸人の!基本ルール!

芸人ルールの中でも、世間一般にある程度知られているルールが存在する。
ここでは、その一部を紹介する。

楽屋に入ったら、先輩芸人に必ず挨拶をする!


超仲が良い先輩後輩関係であっても、基本楽屋入りしたら挨拶には必ず行く。
特に吉本興業はこの風習が強く、逆に人力舎はゆるいイメージ。
しかし、芸人の母数でいえば吉本興業所属芸人が圧倒的であり、必然芸人界一般のルールとなっている。

とはいえ吉本興業に関しても徐々にゆるくはなっており、芸歴10年クラスだと挨拶がないからといってキレる先輩はあまり存在しない。
逆に芸歴15年を超える先輩には、光の速さで挨拶に行った方が無難。

挨拶は、朝でも夜でも「おはようございます」!

これも世間一般に知られてるルール。
いつでもどこでも誰とでも、「おはようございます!」で事足りる。
ちなみにこの風習が体に染み付き、夜勤のバイト先で「おはようございます!」と挨拶してギョッとされるのが芸人あるある。

先輩が後輩にメシをオゴる!

これも吉本興業伝統のルール。
ある程度の先輩になれば同じ円卓を囲むどころか、「たまたま行った居酒屋に、ほぼ面識のない後輩芸人が飲んでいた」レベルでも全額オゴったりする。

ちなみに他事務所では、事務所毎にルールが違う。
個人個人の支払いになる所もあれば、先輩が多く出して後輩が少し出すというパターンもある。


先輩が見えなくなるまで、後輩は見送る!


こちらも、吉本興業伝統のルール。
ほんの1〜2年前、週刊誌に「明石家さんま師匠のタクシーが見えなくなるまで、今田耕司さんと岡村隆史さんが頭を下げて見送った」という記事が掲載され、改めて後輩芸人達が襟を正した超体育会系ルール。

しかし、このレベルのルールは吉本興業以外はほとんどおこなっていない。
また、吉本興業内でも芸歴差や仲の良さによって適用の有無が変化する。

新年の、あけおめLINEを送る!

社会人の基本ともなる、あけおめLINE。
ほんの10年位前までは「先輩には、日付けが変わった瞬間に電話で新年の挨拶をしなければならない」という、万一先輩が寝てたら逆にキレられる暗黒のルールが存在した。

それがLINEという文明の登場により徐々に軟化。
しかし、その過渡期となる現在、一括りにLINEを送れば良いというものではなく、先輩は「電話しないとキレられる先輩」と「電話したらキレられる先輩」に分かれており、頭を悩ます後輩が多発している。


これも!芸人の!ちょっとニッチなルール!

こちらでは芸人ルールの中でも、世間一般にはあまり知られていない、ちょっとニッチなルールを一部説明する。

おまえ芸人だろ!話をしたら、必ずオトせ!


ニッチといえばニッチ、メジャーといえばメジャーなルール。
舞台上だけでなく、芸人たるもの常住坐臥、いついかなる時も笑いを取らなければならないという思想が生んだ芸人界特有のルール。
これは芸人界の暗黙ルールではあるが、このルールを遵守するレベルは各芸人によってバラバラ。

このルールは全ての現場で強制的という訳ではなく、逆に「おれ、必ず、オチ作ったります!」と目がキマっている後輩を嫌う先輩も多数存在する。
こういう先輩は「プライベート位はお笑いを離れたい」という気質で、「上下関係しっかりやります!」という体育会系的な後輩よりも、割となぁなぁに接してくる後輩とつるみがち。
これは事務所や性格の陰陽、ボケツッコミ関係なく全てのジャンルに一定数存在している。個人的な感覚だと1/4位の先輩がそっち側。

逆に一部ではあるが、この「必ずオトせ!」の思想に強烈な洗脳を受けている芸人が存在する。
この洗脳を受けた先輩の前では、中途半端なトークは即刻命に関わる。

話をするなら必ずオチがなければならないし、オチがハマらなければ「おもしろくねぇ」と音速の切り返しが飛んでくる。
では話さなければ良いかというとそうでもなく、何も話さなければ「おまえ芸人だろ?黙ってないで何か話せよ」と無言を貫く事すら許されない。

「この先輩に出会う = 必ず話して必ずオトす」がワンセットとなるため、若手芸人は令和のコンプライアンスを無視するレベルで話を盛る。盛らざるを得ない。
ヤラせの温床ともなるこのような先輩芸人は最近少なくなったが、10年程前には結構いた。
そして今もなお、芸歴20年超えの先輩方の間に一定数存在する。

絶対に乗れ!ミニコント!

芸人の楽屋では、ミニコントが頻繁におこなわれる。
その時大体後輩芸人が巻き込まれ、このミニコントの餌食になる。

ちなみに一言で「ミニコント」といっても、その形態は多種多様。
即興コントからミニ漫才、ちょっとしたトーク企画的なものまで遊び感覚でおこなわれる。

ミニコントの始まりは、恋と同様いつもほんの些細なきっかけから。
例えば後輩コンビがネタでやるボケをA案とB案、どちらにするか二人で話し合っているとする。
そうするとその近場にいる先輩が「何?モメてんの?」と入ってくる。

別に話し合いをしているだけだが、そんな事は先輩も100も承知。
要は後輩と遊びたいだけなのだ。次に先輩が周りの芸人に「何かこいつらモメてるみたいだけど!」と芸人を集め出し、「何でモメてんの?」「相方への理解がないからモメるんじゃない?」「一回お互いの不満を、言いあってみたら?」と、実にスムーズにトーク企画にスライドされる。

ここで上述のルール、「ミニコントには絶対に乗らなければならない」がトラップカードの如く強制発動する。
このような「お笑いに乗らない事」を芸人用語で「降りる(多分「場を降りる」が語源だと思うけど、良く分かんない)」といい、これをやるとそこまで悪い事をしたかというくらい強烈に周囲に冷められる。

「降りる」とはスタートしたお笑いに対してボケる訳でもツッコミむ訳でもないので、芸人としての「逃げ」という認識が強い。
そのため、戦場から逃げ出した日本兵のように非国民扱いされる事が通例。

ちなみに、全員が納得するくらいおもしろいボケ・ツッコミで断ち切った場合は、「降りても不問にされる」という暗黙のセカンドルールと、なぜか「先輩はミニコントへの拒否権を保有する」という暗黙のサードルールも記載しておく。


お客様は神様だ!舞台で客席にお尻を向けない!


そもそも「お客さんにお尻を向けるのは失礼」という芸人間のマナーがあるのだが、それとは別で「ネタ中もお客さんにお尻を向けてはならない」というルールがある。

「ネタ中もお客さんにお尻を向けてはならない派」は、「客席にお尻を向ける事」が自然な演技だとしても、決してお尻を向けはしない。
演技が不自然になるのなら、不自然にならない演技プランを考えネタに臨む。

これは結構意見が分かれるルールで、実際どちらが正解というものでもない。
恐らく個人個人の美学に基づくルール。
個人的なイメージだと、この美学の保有率はちょうど全体の半分程度。

「そこまでしなくても、お尻向けたら済むだけじゃない?演技として必要なら、お客さんも失礼とは思わないでしょ?」と思われるかもしれないが、そこにこだわる事こそ美学。
そしてその美学から生まれるコントは、やはり美しい。

お前は一体何様だ!舞台で他演者の前を通るな!

これはNSCレベルで教わる芸人のルール。
例えば、舞台で芸人が集まった時に他の演者の前を極力通らないよう、できる限り移動は後ろを通る。

理由は失礼に当たるから。
芸人はお客さんに見られてなんぼ。
自分が他演者の前を通ると、その人がお客さんから見えなくなってしまう。

それはその芸人にとって失礼だよねという考え方。
なので他演者の前を通って良いのは、「自分が話題の中心になっている」時のみ。
この場合は「お客さんからの見て現在主人公のお前が、一瞬でも隠れてどうすんだ!」という視点からこれまた再び叱られる。

ちなみにこの前を横切る行為、先輩芸人なんかにやると失礼極まりない行為となる。
別にそれでブチギレする先輩はいない訳だが、「あんまりひどいと怒られてもしかたないよね」程度には、芸人的にはマナー違反。

TV番組とかで、カメラから見て先輩が隠れるようなポジションに後輩が立っちゃって「おまえカブってるな!」とツッコまれるのはそういう裏事情から。
あのツッコミは「おれが映らねぇだろ!」というツッコミではなく「おまえマナー違反してんな!」というツッコミ。

おまえの価値はその涙!激辛わさびを食べたら顔を見せろ!


「ルールというより、テクニックじゃないか?」と問われたら、そうかもしれないと開き直らざるを得ない項目。
けど、ルールといえばルール。

激辛わさびに限らず、芸人は体をはる企画を世界で一番経験する。
その際、何が重要かというと「顔の表情をお客さんに見せる」事。

痛い・辛い・キツい・ツラい・・その全ては表情に出て、逆に顔が見えないとお客さんは今その芸人がどんな状況なのか分からない。
痛がってんのか何なのか分からないと、お客さんは全く笑えないのだ。

リアクションといえば出川哲朗さんだが、みなさんは一度でも出川さんの顔が映っていない瞬間を見た事があるだろうか。
例え強烈なゴムパッチンを顔面に喰らっても、うずくまった後頭部だけがずっとTV画面に映し出されていても笑えない。
やはり痛みに歪んだ出川さんの顔を見たいのだ。

芸人に求められるのは一にも二にも顔なのだ。
芸人が金玉をシバかれ流した涙は、百の言葉にも勝る笑いを生む。
それがリアクションであり、そのため必ず顔を見せなければならない。

舞台慣れしていない若手芸人は、ゴムパッチンを顔に喰らったら顔を手で覆ってしまうし、金玉をカラーバットでシバかれたら顔を地につけてうずくまってしまう。
反射的にそうなるのは百も承知だが、芸人はその本能の反射に逆らってお客さんに顔を見せなければならない種族なのである。


まとめ

今回は芸人のルールを紹介させて頂いた。
基軸が倫理道徳ではなく常にお笑いとなっている芸人の世界では、世間一般の皆様から見て異質に映るようなルールも存在している。

是非これを機会に、より芸人の世界に興味を持って頂きたい。

このコラムがみなさんのお役に立つと幸いだ。
ご一読、ありがとうございました。


執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。