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現役お笑い芸人が実践している面白いネタを作るための勉強方法

連載
公開日:2020年12月8日 更新日:2021年1月5日

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。

みなさんこんにちは。
芸歴10年目。Twitterで住所を公開してる、吉松ゴリラです。

今回はお笑いの勉強方法〜ネタ編〜についてお話しします。
ぶっちゃけ「お笑いの基本は空気!空気を読もう!」といって空気が読めるようになれば苦労はないわけで、もう少し実践的な努力の仕方、財産になるようなお話しをできればと思います。

ちなみに一般の方が「トーク力を上げたい!」と思うのであれば、次回お話しする平場編の方が役にたつと思います。
今回は、芸人ってどんな風にネタ作る努力してるの?ってのが中心になってます。

【今回のコラムポイント】
・ネタと平場では笑いの取り方が違う
・ネタがおもしろくなる勉強法



お笑いの勉強に正解はない

またお笑いの勉強で、「これが正解!」というのはありません。というよりも、おもしろくなるためにする努力、そのどれもが正解です。

何も机に向かってガリガリと紙にネタを書くばかりが勉強ではなく、一般社会では理解されない努力、

例えば
・合コンめっちゃ行ってるよ、女の子相手に笑いとる力あげたいから!
・バカほど風俗行ってるよ、エピソードトーク作るために!

も、正解です。
まあこれを言い訳にしている芸人も多いですけど(笑)。

ネタと平場の笑いの違い

舞台で自分が出る場面は、主にこの3つです。
・漫才やコントのネタ部分
・コーナー
・エンディング(フリートーク)

コーナー、エンディングは平場と呼ばれ、その笑いの取り方はネタと少し違います。

ネタは既に決まっているセリフや動きでどれだけ笑いをとるか、平場は決まっていない流れの中でどれだけ笑いをとるかです。

ネタがカッチリとしたクラシックなら、平場はアドリブのあるJAZZといえるでしょう。

ネタの笑いの取り方

ネタで笑いを取るにあたって、必要なものは下記の通りです。
・台本力
・完成度

台本力

ネタには台本があり、基本的にそこからそれる事はありません。ですので台本力は重要です。

単独ライブなどで自由度が高いときはまた別ですが、若手が出る普段のライブは2分、3分と持ち時間が決まっていて、そこを15秒過ぎると強制終了となるのが一般的です。

その決まった時間の間にできる限りボケを詰め込むので、アドリブが入る余地が少ないのです。

ちなみにごく稀に、若手芸人がM-1ファイナリストの台本とほとんど同じネタをする事があります(ほんっっとに稀ですが)。
表現力や漫才の下手さは変わらないのに、普段ウケてない芸人が、結構ウケます。

未熟な技術を補えるくらい、台本力は重要です。

完成度

舞台ではネタは大体10〜20組が立て続けに行い、それぞれがちゃんと仕上げてやってくるため、練習不足のコンビは目立ちます。

先ほどお話しした通り、普通ネタは台本からそれることはありません。

ですので全ての芸人が何百回、何千回と稽古し、相手の1言1言に返す間や、感情の入れ方、動きなども決め、万全の状態でお客さんの前に出してくるのです。
恐らくみなさんも舞台を何回か観に行ってもらえれば、芸人がウロ覚えの所や、アドリブで繋いだ所など見分けがつくと思います。

そんな所が見えてしまったら、もうネタに入っていけないですよね。結果、ウケなくなります。

完成度も非常に重要なポイントです。

平場の笑いの取り方

平場の笑いの取り方は下記の通りです。

・アドリブ力
・周りの巻き込み力

アドリブ力

平場では多くの芸人が同時に舞台に立ち、それぞれが好き勝手にしゃべります。
自分が用意していたトークの途中でツッこんできたり、何かのきっかけで予定外の方向に話が進んでしまったりと、ネタと違い、台本通りに進むことはありません。

ですので予定外の出来事に対応する、アドリブ力が必要になります。

周りの巻き込み力

ネタはコンビが協力しあって、舞台上を盛り上げるのですが、平場は舞台に出ている芸人全員が協力的とは限りません。

極端な話、芸人は最終的に自分さえウケればいいのです。
少なくともそう思ってる芸人が一定数います。

別に邪魔をしないまでも、他人のエピソードトークを全く聞いてなかったり、別の誰かと話してたりします。これ、結構います。

ってか、ぼくの体感、エンディングトークとかで20〜30人くらい前に出てきた時は、半分くらいは聞いてないです(笑)。

結果、そういう芸人が多いと、舞台上で自分のトークで笑ってる人が少なくなり、舞台が盛り下がってるように見えます。
結果、スベってる空気が客席に流れます。

舞台も客席も笑わせるのが一番良い状態のため、舞台上の芸人を、どれだけ巻き込めるかという力も重要になります。

ネタがおもしろくなる勉強法

ここでは結構、基本的な事をお話しします。というより、基本的なお話しかできないのです。
ですのでマニアック度はやや下がり「これからお笑い芸人を目指してる人向け」くらいになってます。

R-1ぐらんぷりの常連、誰もが認めるネタ職人ヒューマン中村さん(ネタ作成本数は年間50本くらいだそうです)が、「ネタってどうやって作ってるんですか??」という質問にこう答えてます。

「答えられない。全部バラバラ。」

この答えが一番一般的です。何か人間観察から思いつくこともあれば、ふとヒラめいたりもするのです。

アイディアの出方が全部バラバラなので、アイディアを捻り出す努力方法というのは基本存在しません。アンテナ張れとしか言えません。
※人によりますけど。以前TVで似たような質問をされた時、バカリズムさんは「いいアイディアが出るまで無限に粘る」という方法を答えられてました。

ちなみにいい案が浮かんだらすぐメモを取るクセをつけておくのが良いと思います。これは若手に時々いる、天才ぶりたい芸人を除いて、ほとんどの芸人がやっています。

ですので今回は、いいネタがヒラめいた時「こういう努力をしていたらより良いネタに仕上げる事ができるよ」という勉強・努力方法をお話しします。

・相方の事を知る
・先輩のネタを文字に起こす
・ツッコミの人は、ツッコミワードを集めておく

相方の事を知る

養成所などで新しくコンビを組んだら必ず相方の事を知る努力をしましょう。
これは芸歴何年目とか関係なく、新コンビを組んだら必ずどの芸人もやっています。

相方の事を知って、整理したい内容が下記の通りです。
・テンポ・関係性決め
・笑いのとりどころ
・相手のエピソードストック

必須ではないですが、ネタに普段のしゃべりをそのまま反映させた方がいいネタに仕上がる事が多いため、探っておいて損はないでしょう。

テンポ・関係性決め

2人で会話をしていき、自分たちの心地の良いテンポを決めます・・っていうか、話してたら勝手に決まっていきます(笑)。

そんな感じで、話しながら下記内容を探ってみましょう。

・話しているテンポ感(他芸人に比べ早いのか、遅いのか)
・話す割合はどちらが何対何くらいで話してるのか
・進行はどっちがしているのか

この関係性をネタに反映させると、お互いに無理がないネタが出来上がります。

笑いのとりどころ決め

これはボケ側、ツッコミ側のどちらで笑いをとっているかです。
以前までは笑いをとる主軸はボケでしたが、最近はボケをフリにして、ツッコミで笑いをとるスタイルも多くなってきました。

漫才だと霜降り明星さんやぺこぱさん、コントだとバイキングさんがツッコミを軸に笑いをとっていますね。

特に漫才はお互いの普段の関係性が出た方がいいので、この辺りを鑑みて、漫才やコントのスタイルを決めてもいいと思います。

相手のエピソードストック

多ければ多いだけいいです。
養成所時代「コンビだったら相手のいい所、悪い所はいつでも、何時間でも言えるようにしとけ」と教えられました。

確かに売れたらこのトークテーマは山ほどきます。TVでも若手コンビがでてきたら、まず間違いなく聞かれているテーマですね。

また相方のヘンなエピソードは、エンディングトーク、自分たちの事を知らない人向けの営業の自己紹介など、応用範囲が広く、差し込める場面も多いため、非常に使い勝手が良い財産になります。

なきゃないでもいいんですが「相方のおもしろエピソードは全部知っている」くらいでないと、損をします。

先輩のネタを文字に起こす

これは結構言われている勉強法です。自分がおもしろいと思ったネタ・こんなのがやりたいと思ったネタを文字に起こしましょう。
その後、分析するのですが、そこで見てほしいのが、ここの部分です。

・フリ
・ボケ
・ツッコミ
・ネタの構成

おそらくいいネタは、ほとんどのセリフがフリ・ボケ・ツッコミだけで構成されています。無駄な言葉がありません。

フリの重要性

上にあげたフリ・ボケ・ツッコミ、どの要素も非常に重要なのですが、この中で一般の方に軽視されがちなのがフリです。しかしフリはバカほど重要です。

ある程度芸歴を重ねたら、ネタで一番大事なのは「フリ」と答えるようになります。

なぜフリがそんなに重要なのか。以下、簡単にお話しします。

【フリの役割】
①フリは、『常識の基準を決め、ボケの落差をだす』
②ボケの方向性をまとめる

①常識の基準を決め、ボケの落差をだす
まず『ボケ=常識から離れた、非常識なこと』です。
常識からの落差が、笑いの量に繋がります。
当然落差は、(無理ない範囲で)大きければ大きいほどいいです。

その時、落差の基準となる常識を決めるセリフが、フリなのです。

どんなにいいボケでも、フリが甘ければ落差が減り、笑いの量は減ります。

②ボケの方向性をまとめる
フリは、自分がおもしろいと思う部分をクローズアップする役割もあります。

例えばボケが
「男が腕に息子の名前をタトゥーで入れてるが、ひらがなで入れてしまっている」
としましょう。

そうすると、フリ方によってボケ質が変わってきます。

【フリ方によるボケ質の変化】
・フリ「男がバカなヤツ」
→「ローマ字知らないくらいバカ」というボケ
・フリ「男が天才」
→「天才すぎて感覚ヘンなヤツ」というボケ

フリを変えることで、お客さんに見せたいボケのポイントが変わってきます。自分がおもしろいと思う事を存分に活かせるフリを考えましょう。

構成について

何十本も見ていると、ネタの構成にパターンがある事がわかります。そのパターンを自分のものにする事で、ネタをうまくまとめる事ができやすくなります。

当然知っているパターンは多ければ多い方がいいので、たくさん勉強してみましょう。

ちなみにこんな所に注目してみると勉強しやすいと思います。
①大枠の構成
②各ブロックの構成

①大枠の構成
ネタ全体の構成。主にそのネタのパッケージと、起承転結を見ます。

【パッケージ例】
・設定:家庭教師の先生と生徒
→パッケージ:先生の知識を生徒が上回る
・設定:誕生日のヤツとそれを祝ってくれる友だち
→パッケージ:ろうそく吹き消したいけど、ハッピーバースティの歌がぜんぜん終わらない

起承転結は、なんとなく分かると思うので割愛します。

②各ブロックの構成
ネタ中には、それぞれまとまった笑いをとっている、ブロックがあります。その構成方法を見ます。

【ブロック例】
・スカし:1個目ボケて、2個目ボケて、3個目スカす

ちょっと文章にすると長尺すぎるので、例文も割愛します。
まあ書き起こしてみれば分かります(笑)。

ツッコミの人は、ツッコミワードを集めておく

昔はツッコミといえばボケのアシスト役でしたが、現代のツッコミ名手は、一度聞いたら忘れられない例えツッコミや、抜群のワードセンスからなるツッコミなどで、とにかく笑いを取ります。

それらが瞬発的に出てくるような訓練ももちろん大事ですが、ツッコミの方は普段から、耳に残るワードを集めるのも良いと思います。

これは増えれば増えるだけ、センスに頼らずとも強いワードでツッコミができるので、財産になると思います。

まとめ

少し具体的にお笑いの勉強法、今回はネタ編をお話しさせていただきました。

上には紹介していませんが、ただただ同じコンビのネタを見続けるというのもおすすめです。
何となくのリズムや笑いの取り方など、そのコンビなりの呼吸が、知らず知らずのうちに、分かるようになります。

是非参考にしていただければ幸いです。

執筆:吉松ゴリラ

SHUプロモーション所属。宮崎大学大学院主席。もともとコンビで活動していたが、解散後ピンへ転身。「激レアさんを連れてきた。」「新春おもしろ荘」「ガキの使いやあらへんで!」「ウチのガヤがすみません!」など多数出演。